ナイトライド・セミコンダクター株式会社は窒化物半導体で紫外線LEDを開発・製造する徳島大学発の企業

ナイトライド・セミコンダクター株式会社

ナイトライド・セミコンダクター「紫外線LED」を研究|研究領域=殺菌に使える・紫外線の発光素子/強み=水銀ランプに・代わる紫外線の光源/将来性=ARグラスの・表示装置を目指す

企業紹介|ナイトライド・セミコンダクター株式会社とは?

殺菌灯や樹脂の硬化に使われ、ディスプレイへの応用も研究されている小型の光源「紫外線LED」。ナイトライド・セミコンダクター株式会社は、その社会実装を目指す、徳島大学発の半導体系ディープテック企業です。紫外線LEDのチップや部品を製造し、医療現場や食品工場の殺菌灯、樹脂の硬化工程などで使う、水銀ランプに代わる光源として販売しています。

キーワード「紫外線LED」

「紫外線LED」は、電流を流すと紫外線を出す半導体の発光素子です。特徴は、材料の組み合わせを変えることで、殺菌や樹脂の硬化といった用途に合う波長の光を出せる点にあります。印刷インクの硬化工程や皮膚病の治療の現場で、装置に組み込む光源として使えます。

市場課題|殺菌灯に水銀ランプが残り、赤色の極小LEDは製造が難しい

現状の殺菌灯と表示装置の課題|現状は、規制の対象外で殺菌灯に水銀ランプが残る|殺菌灯に・水銀ランプが残る/赤色の極小LEDは・製造が難しい

殺菌灯に水銀ランプが残る

殺菌灯には、低圧水銀ランプが使われてきました。国内では水銀による環境汚染を防ぐため、同じく水銀を含む一般照明用の蛍光ランプの製造と輸出入が、2026年1月から種類ごとに段階的に禁止され、2028年1月には対象が全種類に広がります。殺菌用のランプは「特殊用途」として対象外のため、このままでは水銀を含む光源が殺菌灯に使われ続ける恐れがあります。

赤色の極小LEDは製造が難しい

マイクロLEDディスプレイ(極小のLEDを画素に使う表示装置)では、効率のよい赤色の極小LEDを製造することは難しいとされます。この装置は赤・緑・青の極小LEDを並べるため、赤色も欠かせません。このままでは、全色表示(フルカラー表示)の画面の製造が進みにくい恐れがあります。

他にも、結晶欠陥による発光効率の低下、短い波長で出力を高める難しさ、微細化に伴う光出力の減少、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 低圧水銀ランプ管の中に水銀を封じ込め、放電によって紫外線を出す光源を指す。殺菌灯として広く使われてきたが、水銀を含み、点灯には高い電圧の電源を必要とする。

ナイトライド・セミコンダクターの強み|「紫外線LED」を開発

ナイトライド・セミコンダクターが「紫外線LED」を開発|今後は、蛍光体で全色表示が可能に|窒化物半導体で・紫外線を発光/紫外線と蛍光体で・全色を表示

窒化物半導体で紫外線を発光

水銀ランプは点灯に高い電圧の電源が要るため、電池で動く小型機器には組み込みにくいという弱点があります。

同社の紫外線LEDは、窒化ガリウム(ガリウムと窒素の化合物からなる半導体)などの窒化物半導体に電流を流して発光する、水銀ランプに代わる紫外線の光源です。窒化ガリウムだけで出せる最も短い波長は、365nm(ナノメートル=1ミリの100万分の1)です。殺菌に使う、より短い波長の深紫外線(紫外線のうち特に波長の短い光)には、窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlInGaN)を使い、アルミニウムの割合を高めて波長を短くします。高い電圧の電源が要らず電池でも点灯できるため、小型機器にも搭載できます。

紫外線と蛍光体で全色を表示

全色を表示する従来の方式では、赤・緑・青の極小LEDを色ごとに作り分けて並べるため、3種類のチップを画面へ移す工程や駆動回路(画素を点灯させる電子回路)が複雑になります。

同社はマイクロUV-LED(紫外線を出す極小のLED)で赤・緑・青の蛍光体(光を受けて別の色に光る物質)を光らせる全色表示の方式を開発しています。2021年に縮めたチップは12×24µm(1ミリの1000分の1)で、4インチのウエハ(半導体材料の円板)1枚から約1,400万個取れる計算です。1チップのコストは従来の16×48µm品の4分の1です。チップが1種類のため、画面へ移す工程や駆動回路も簡素になるとされます。赤色の極小LEDも不要になるため、全色表示の画面を製造しやすくなると期待されます。

FrontJournalの解説
  • 窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlInGaN)窒化アルミニウム・窒化インジウム・窒化ガリウムの混晶(複数の化合物の原子が1つの結晶の中で入れ替わって並ぶ材料)の半導体を指す。アルミニウムの割合を高めると、365nmより短い紫外線を出せる。

紫外線LEDの未来|水銀ランプの置き換えから、ARグラスの表示装置へ広げる

小型の紫外線LEDが変える未来|水銀ランプの置き換えから表示装置へ|高出力品の・注文受付を開始/水銀ランプを・LEDへ置き換え/ARグラスの・表示装置を目指す

高出力品の注文受付を開始

2026年6月、同社は高出力の波長275nmの深紫外線LEDと、波長310nmのUV-B(波長280〜315nmの紫外線)のLEDの注文受付を始めました。どちらも表面実装型(基板の表面にはんだ付けする部品)です。275nmの製品は光出力が82mW(ミリワット=1ワットの1000分の1)で、同社従来品の約5倍です。310nmの製品は27mWで、従来品の約15倍にあたります。

水銀ランプをLEDへ置き換え

高出力品により、従来の深紫外線LEDでは光出力が足りなかった用途でも、水銀ランプからLEDへの置き換えが広がる可能性があるとされています。275nmの製品は医療現場や食品工場、クリーンルーム(ちりを管理した部屋)の殺菌灯向けです。310nmの製品は、樹脂やインクの硬化光線治療(光を患部に当てる治療法)に向けた製品です。治療の対象には、乾癬(皮膚が赤く盛り上がり、角質がはがれる病気)や白斑(皮膚の色が抜けて白くなる病気)などがあります。

ARグラスの表示装置を目指す

同社は、マイクロUV-LEDでARグラス(景色に映像を重ねる眼鏡型の機器)などの表示装置の実用化を目指しています。2023年に、波長385nmの紫外線LEDの上にフォトニック結晶(光の進み方を制御する微細な周期構造)を作り、光を閉じ込める効果を確かめました。この構造により、LEDの光の広がりを絞る光学レンズを不要にできるとされています。応用先は、蛍光体と組み合わせるマイクロLEDディスプレイの光源です。

会社概要|徳島大学との産学連携で生まれ、紫外線LEDを製造・販売する

徳島大学との産学連携で設立

ナイトライド・セミコンダクター株式会社は、2000年4月に徳島大学との産学連携で設立された企業です。社名は、窒化物半導体の英語名に由来します。英文社名は Nitride Semiconductors です。設立時の本社は徳島市に置かれ、2001年4月には鳴門市に本社工場が完成しました。現在はこの本社工場を拠点に、代表取締役の村本宜彦氏のもとで紫外線LEDの製造・販売を手がけています。

米欧で極小LEDの特許を取得

同社は2021年10月までに、マイクロUV-LEDの高効率化の技術で、米国・英国・ドイツ・フランスの特許を取得しました。この技術は、チップを小さくしても光出力を高められるもので、チップの内部に超格子(ごく薄い層を繰り返し重ねた構造)を組み込む点が特徴です。同社は当時、この技術を東北大学と共同で開発していました。交流で点灯させるLEDの技術を、海外のLEDメーカーにライセンスした実績もあります。

ウエハから照射機器まで展開

材料から完成品まで、同社は製品を幅広くそろえています。窒化ガリウムのウエハや紫外線LEDのチップ、ランプ、表面実装型の部品といった電子部品に加え、UV投光器や充電式のフラッシュライトなどの照射機器も製品群の一部です。部品の一部は、販売代理店の三幸セミコンダクターでも取り扱っています。

会社情報

会社名ナイトライド・セミコンダクター株式会社(Nitride Semiconductors Co.,Ltd.)
所在地徳島県鳴門市瀬戸町明神字板屋島115番地の7(本社工場)
設立2000年4月13日
代表代表取締役 村本 宜彦
資本金1億円
事業UV-LEDの製造・販売。深紫外線LED(275nm)・UV-B LED(310nm)、近紫外線LED(波長355〜405nm)、マイクロUV-LED、窒化ガリウム(GaN)ウエハ、UV投光器などの照射機器
技術領域窒化物半導体による紫外線LED。マイクロUV-LEDの高効率化技術(米国・英国・ドイツ・フランスで特許承認)
連携徳島大学(産学連携で設立)。東北大学(2021年時点でマイクロUV-LEDを共同開発)
URLhttps://www.nitride.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

紫外線は目に見えない光ですが、殺菌や樹脂の硬化、皮膚の治療まで、多くの現場で使われています。その光源を水銀ランプから半導体へ移す技術に、同社は徳島県で四半世紀にわたり取り組んできました。2026年に注文の受付を始めた深紫外線LEDの出力の伸びは、その積み重ねの成果の一つです。

注目したいのは、紫外線LEDを殺菌の光源にとどまらず、ディスプレイの土台として捉え直している点です。極小の紫外線LEDで蛍光体を光らせる発想は、1種類のチップで全色をそろえる道を開く可能性があります。眼鏡型の表示機器が身近になるほど、この技術が生きる場面も増えていくと考えます。

目に見えない光が、眼鏡の中の映像を支える日を期待しています。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら

この企業について、
もっと深く知りたい方へ

パートナーシップ・お問い合わせはこちらから。