株式会社OPTMASS|赤外光を電気に変える透明太陽電池を開発する京都大学発ディープテック

株式会社OPTMASS(オプトマス)

OPTMASS「透明太陽電池」を開発|研究領域=赤外光を電気に、可視光は通す/強み=光を通すので窓に応用しやすい/将来性=窓ガラスでの発電を目指す

企業紹介|株式会社OPTMASSとは?

窓ガラスで発電できる技術として、注目を集める「透明太陽電池」。株式会社OPTMASSは、その社会実装を目指す、京都大学発のエネルギー系ディープテック企業です。赤外光(目に見えない熱を伴う光)を電気に変え、可視光(目に見える光)を通す太陽電池を、ビルなどの窓ガラス向けに開発しています。

キーワード「透明太陽電池」

透明太陽電池は、可視光を通しながら、赤外光だけを吸収して電気に変える太陽電池です。一般的な太陽電池と違って光を通すため、窓ガラスに使っても室内の明るさを保ちやすい点が特徴です。同社は、京都大学化学研究所の坂本雅典氏が赤外光エネルギー変換を研究した成果をもとに、窓ガラスへの展開を目指しています。

市場課題|窓は熱の入口で、発電にも使いにくい

現状の窓の課題|現状は、窓から熱が入り発電にも使いにくい/窓から入る熱が冷房負荷を増やす/従来の太陽電池は窓に使いにくい

窓から入る熱が冷房負荷を増やす

建物の窓から入る日射は、室内を温め、冷房負荷(冷房が処理すべき熱の量)を増やす要因です。日射に含まれる赤外光は、太陽光のエネルギーの約半分を占めるといわれ、窓を通ると熱として室内にこもります。この熱を窓の段階で抑えられなければ、室温が上がり、冷房の電力消費につながります。

従来の太陽電池は窓に使いにくい

窓ガラスは、一般的な太陽電池を使いにくい場所です。シリコンを使う太陽電池は、可視光を吸収して電気に変えるため、色が濃く光を通しません。その結果、ビルの発電は屋上などに集中し、面積の大きい窓ガラスは発電に生かされていません。

他にも、冷房に使う電力の需要、既存ビルの窓を後から改修する費用、後付けの手間、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 赤外光波長が可視光より長く、人の目には見えない光を指す。太陽光に含まれ、物に当たると熱として感じられるため、熱線とも呼ばれる。

OPTMASSの強み|「透明太陽電池」を開発

OPTMASSが「透明太陽電池」を開発|現在は、赤外光で発電する窓を研究/赤外光を選んで吸収し窓の熱を抑える/可視光を通すので窓に応用しやすい

赤外光を選んで吸収し熱を抑える

窓用の遮熱材の多くは、赤外光を反射または吸収して熱を抑えるだけで、光のエネルギーを電気として取り出していません。

同社のナノ粒子は、局在表面プラズモン共鳴(粒子内の電子が光に合わせて一斉に振動する現象)により、特定の波長の赤外光だけを選んで吸収します。可視光は吸収されにくく、吸収する波長の範囲も粒子の設計によって調整できるため、窓の明るさを保ったまま、室内に入る熱を抑えられます。この粒子は熱線遮蔽ナノ粒子で、出典では「熱線捕集ナノ粒子」とも呼ばれる。透明性と熱線カット効果を高い水準で両立するとされます。粒子を使った熱線遮蔽フィルム「OPT-block」は、窓に貼るだけで施工できる点も特徴です。

可視光を通し窓に応用しやすい

シリコンを使う一般的な太陽電池は、可視光も吸収して発電するため、窓に貼ると光をさえぎってしまいます。

同社が開発する透明太陽電池は、赤外光を吸収するナノ粒子を、光を電気に変える光吸収材に用います。粒子が赤外光を吸収すると電子が移動し、この電子の流れを電気として取り出す仕組みです。可視光は粒子を通り抜けるため、色や明るさを変えにくく、窓ガラスの内部に組み込むことを想定した設計です。実用化すれば、ビルの窓面そのものが発電の場所になり、屋上に限らず建物の側面でも発電できます。窓の景色や室内の明るさを保ったまま、広い面積が発電に生きる点が利点です。

FrontJournalの解説
  • 局在表面プラズモン共鳴金属や金属酸化物のナノ粒子に光が当たると、粒子内の電子が特定の波長の光に合わせて一斉に振動する現象を指す。粒子の材料や大きさによって、吸収する光の波長が決まる。

未来・展開|熱線遮蔽材から発電する窓ガラスへ

発電する窓が変える未来|熱を抑える窓から発電する窓へ/熱を抑える粒子が予約受付中/南海電鉄と協力に合意/発電窓の実用化をめざす

熱線遮蔽ナノ粒子は予約受付中

同社は、熱線遮蔽ナノ粒子の生産販売を手がけ、すでに予約を受け付けています。粒子は無色透明に近く、インクやコーティング、フィルムの形で使えます。用途に応じて、吸収する波長の範囲を調整することも可能です。窓から入る熱を抑えるこの粒子は、透明太陽電池と同じく、ナノ粒子が赤外光を吸収する性質を使います。

南海電鉄とナノテクで協力

同社は2024年7月11日、南海電気鉄道と協力することで合意しました。対象は、グリーンナノテクノロジー(環境問題やエネルギー問題の解決に役立つナノテクノロジー)による省エネ・創エネの技術開発です。南海電鉄は、実証実験の場所とデータを提供します。第一弾は、南海電鉄本社ビルの一部での熱線遮蔽フィルムの性能評価です。

発電窓の実用化を目指す

2023年7月の発表時点で、同社は2027年の発電窓ガラスの社会実装を目指していました。坂本雅典氏らの研究グループは、波長1.1µmの赤外光を使う光触媒で、見かけの量子収率4.4%(水素を作る反応での値で、発電効率や太陽光下の値とは別)を2022年に報告しました。見かけの量子収率とは、当たった光子のうち、反応に使われた割合の目安を指します。これまで熱の入口だった窓を、建物で使う電力の一部もまかなう面に変えることを目指します。

会社概要|株式会社OPTMASS

京都大学の研究成果で設立

株式会社OPTMASSは、2021年10月1日に設立された京都大学発のスタートアップです。京都大学化学研究所の坂本雅典准教授(当時)による、赤外光エネルギー変換の研究成果が事業の出発点です。本社は、京都府宇治市の宇治ベンチャー企業育成工場にあります。事業は、透明太陽電池と熱線制御技術の研究開発、熱線制御能を有するナノ粒子の生産販売で、掲げるスローガンは「街を森に!」です。

ファンドと金融機関から資金調達

同社は、ファンドと金融機関から資金を調達しています。2023年7月26日には、リアルテックファンドとサムライインキュベートの運営するファンドを引受先とする、1.6億円の資金調達を発表しています。同時に発表された累計の調達額は、2.05億円です。2024年5月には、日本政策金融公庫、京都信用金庫、京都中央信用金庫、京都信用保証協会による協調融資で、総額6,000万円を調達しました。

坂本氏は大阪大学の教授

坂本雅典氏は、2024年7月の南海電気鉄道の発表時点で大阪大学産業科学研究所の教授を務めます。同社ではCTO(最高技術責任者)を務める創業者です。技術の起点となった研究は、坂本氏らによるものです。

会社情報

会社名株式会社OPTMASS(オプトマス)
所在地京都府宇治市大久保町西ノ端 宇治ベンチャー企業育成工場
設立2021年10月1日
資本金1,000万円
調達1.6億円(2023年7月26日発表。累計2.05億円)/協調融資 総額6,000万円(2024年5月)
事業透明太陽電池の研究開発。熱線制御技術の研究開発。熱線制御能を有するナノ粒子の生産販売
技術領域局在表面プラズモン共鳴を使うナノ粒子による赤外光の制御、透明太陽電池、熱線遮蔽
連携南海電気鉄道とグリーンナノテクノロジー分野で協力合意(2024年7月)
URLhttps://optmass.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

窓は、光を取り込む一方で熱も呼び込み、これまで発電には使いにくかった面です。赤外光だけを選んで吸収し、可視光を通す発想は、窓の役割を変える点で新鮮に映ります。広い窓面が発電に加われば、建物の見え方も変わっていきそうです。

同社は、熱を抑える粒子と、発電する窓ガラスという二つの方向で技術を育てています。粒子は予約受付が始まっており、事業としての広がりがうかがえる状況です。南海電鉄との性能評価が進めば、実際の建物での手応えも見えてきます。

発電窓ガラスの社会実装に向け、研究から製品へ進む道のりが続きます。発電効率の向上や実証の成果が、今後の注目点です。窓が電力を生む日に向けた歩みに、今後も注目したいところです。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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