光オンデマンドケミカル株式会社|光でホスゲンを合成する光オン・デマンド有機合成を研究する神戸大学発の企業

光オンデマンドケミカル株式会社

光オンデマンドケミカル「光オン・デマンド有機合成」を研究|研究領域=光でホスゲンを一時的に生成/強み=常温・常圧で一発合成/将来性=医薬品から樹脂原料まで

企業紹介|光オンデマンドケミカルとは?

医薬品や樹脂の原料となる化学品を、常温・常圧で製造する合成技術として、注目を集める「光オン・デマンド有機合成」。光オンデマンドケミカル株式会社は、その社会実装を目指す、神戸大学発のディープテック企業です。光でホスゲンを一時的に生成し、目的の化学品へ連続的に変える技術を、化学品メーカーへ提供しています。

キーワード「光オン・デマンド有機合成」

「光オン・デマンド有機合成」は、光を当てた瞬間だけホスゲン(塩素と一酸化炭素からできる猛毒の気体)を生み出し、そのまま目的の化学品に変える合成の手法です。特徴は、毒性の高いホスゲンを貯蔵せず、必要な分だけ使い切れる点にあります。医薬品や塗料の原料を製造する現場で、大型プラントを持たずに化学品を合成できます。

市場課題|ホスゲン製造は大規模集中が前提

現状のホスゲン製造の課題|現状は、大規模集中生産で小回りが利かない/ホスゲンは毒性が高い/集中生産で小回りが利きにくい

ホスゲン製造は大規模集中が前提

医薬品や樹脂の原料となる化学品の多くは、毒性の高いホスゲンを使う従来法で作られています。ホスゲンは猛毒のため、大規模なプラントで集中的に製造し、厳重に管理する体制が前提です。多品種を少量ずつ作りたい現場では大型設備を新設できず、新しい化学品の開発が進みにくくなります。

小規模多品種生産は実現しにくい

化学品メーカーの多くは、需要の変化に応じて少量多品種の生産へ切り替えたいと考えています。従来のホスゲン法では原料の合成拠点を集約せざるを得ず、拠点を分けて小回りよく生産することが難しいからです。一方で、医薬・農薬・電子材料の分野では、開発スピードを上げるための小規模な試作生産も求められています。

他にも、ホスゲンの輸送に伴う安全上の制約、老朽化した既存プラントの更新コスト、原料調達の地政学リスク、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • ホスゲン塩素と一酸化炭素からできる猛毒の気体で、医薬品や樹脂原料など多様な化学品の合成に使われる中間物質を指す。

光オンデマンドケミカル株式会社の強み|「光オン・デマンド有機合成」を研究

光オンデマンドケミカルが「光オン・デマンド有機合成」を研究|今後は、光の力で小規模生産が可能に/光で必要な分だけ生成/常温・常圧で連続合成

光でホスゲンを必要な分だけ生成

従来のホスゲン法は、大規模プラントでまとめて製造し、毒性の高い状態で貯蔵・輸送する必要があるという課題がありました。

光オン・デマンド有機合成とは、光をエネルギーにしてホスゲンをその場で一時的に発生させ、即座に目的の化学品と反応させる手法です。従来の方式は、ホスゲンをあらかじめ大量に作り、タンクにためておくのが基本でした。このアプローチにより、ホスゲンを貯蔵せずに反応を完結できるほか、使用するエネルギーを大幅に削減できると報告されています。加熱や大規模な設備が要らなくなり、小さな工場でも必要な分だけ化学品を合成できるようになります。

常温・常圧の連続合成が可能

従来の合成法は触媒や高温・高圧の条件を必要とし、装置が大型化しやすいという弱点がありました。

光オン・デマンド有機合成では、光を照射する反応槽を使い、常温・常圧・触媒不要のまま化学品を連続的に合成します。この技術の産業利用に向けて、神戸大学の研究チームは約15年にわたりクロロカーボン類(塩素を含む炭素化合物の総称)やメタンを原料とする合成手法を確立してきました。原料には下水や家畜ふん尿に由来するバイオメタンや、海水電気分解で得られる塩素も使えます。大規模なホスゲンプラントを持たない事業者でも、必要な化学品を必要な分だけ生産できるようになります。

FrontJournalの解説
  • バイオメタン下水汚泥や家畜ふん尿などの有機物を発酵させて得るメタンガスを指す。化石燃料由来のメタンより環境負荷の少ない原料として注目されている。

光オン・デマンド有機合成の未来|化学産業への応用

小さな分散生産が変える未来|医薬品や樹脂原料の生産を後押しする/医薬品や塗料の原料に/電子情報材料やウレタンにも/化学品産業の省エネ化を推進

医薬品や塗料原料に応用可能

光オン・デマンド有機合成は、従来のホスゲン法と互いの弱点を補い合う技術であり、多様な化学品の連続生産を可能にします。神戸大学の研究チームは、これらの成果を学会や技術誌で報告してきました。たとえば、医薬品や農薬の原料をはじめ、界面活性剤や糖誘導体、セルロース誘導体などの製造への応用が見込まれています。いずれも、医薬・農薬・材料分野の付加価値の高い製品づくりに直結しています。

ウレタン材料や塗料にも展開

同社の技術基盤が対象とするのは、界面活性剤から電子情報材料まで、幅広い産業分野の中間原料です。同社がねらうのは、従来は毒性の高いホスゲンを扱う設備がなければ作れなかった化学品。ウレタン材料や塗料をはじめ、電子情報材料、さらには医薬品原料といった高付加価値領域が対象です。これらの化学品の市場規模は、年間1,000万トンに達するといわれています。

提携先との事業展開を目指す

化学品メーカーを中心に、製造工程の省エネルギー化と安全性の両立が求められる化学業界。その現場で、常温・常圧・触媒不要で反応が進む「光オン・デマンド有機合成」への期待が高まっています。神戸大学発の光オンデマンドケミカル株式会社は、化学品メーカーとの実証を重ねる立場です。こうした取り組みが広がれば、医薬品や塗料の製造現場でも、大型プラントを持たずに化学品を合成する仕組みが一般的になっていくと期待されています。

会社概要|光オンデマンドケミカル株式会社

神戸大学の研究から事業化

光オンデマンドケミカル株式会社は、2024年4月に神戸市で設立されました。創業の中心となったのは、神戸大学大学院理学研究科の津田明彦准教授です。2010年から神戸大学で進めてきた光オン・デマンドホスゲン化反応の研究成果を、産業に応用することを目的としています。約15年の研究を経て、クロロカーボン類やメタンを原料とする光オン・デマンド有機合成を確立しました。代表取締役CEOには津田明彦氏が就任しています。

第一工業製薬と業務提携

同社は、事業会社との連携を広げています。2024年8月には、界面活性剤メーカーの第一工業製薬と業務提携を発表しました。2024年秋には、滋賀工場へ試作実証設備の第一号を導入しています。この設備での検証を通じて、使用エネルギーを50%以上削減できることを確認しました。

資本金500万円で事業を開始

光オンデマンドケミカル株式会社は、資本金500万円で事業を運営しています。現時点では、大学発ベンチャーとして研究成果の実用化を進める初期の事業段階にあります。拠点は神戸大学統合研究拠点アネックス棟に置き、決算期は3月です。2026年以降には、本手法による中間原料の製品展開を開始する計画です。

会社情報

会社名光オンデマンドケミカル株式会社
所在地〒650-0047 兵庫県神戸市中央区港島南町7丁目1-49 神戸大学統合研究拠点アネックス棟
設立2024年4月1日
代表津田 明彦(代表取締役CEO)
資本金500万円
事業光オン・デマンド有機合成法による化学品中間原料の研究開発・製造
技術領域光オン・デマンド有機合成(クロロカーボン類・メタンを原料とする化学品合成)
連携第一工業製薬と業務提携(2024年8月)。滋賀工場へ試作実証設備の第一号を導入(2024年秋)
URLhttps://photo-od-chem.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

ホスゲンという猛毒の気体は、これまで大型プラントでしか安全に扱えないとされてきました。その常識を、光という身近なエネルギーで塗り替えようとする発想に、地道な研究の積み重ねを感じます。約15年という歳月をかけて基礎反応から産業応用まで育て上げた研究チームの粘り強さも印象的です。

光オンデマンドケミカル株式会社が目指すのは、単なる新しい合成法の開発ではなく、化学品づくりそのものを小さく分散させることです。常温・常圧・触媒不要という条件は、大規模な設備を持たない現場にも化学合成の可能性を開きます。第一工業製薬との実証で確認したエネルギー削減の数値は、その可能性を裏づける具体的な一歩です。

神戸大学で15年かけて積み上げた研究が、産業の省エネルギー化を後押しする日は近いのかもしれません。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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