Quanmatic「組合せ最適化」を研究|早稲田大学発ベンチャーのサムネイル

株式会社Quanmatic(クオンマティク)

Quanmatic「組合せ最適化」を研究|研究領域=膨大な候補から最良の計画を選ぶ/強み=大規模な問題を分割して解く/将来性=産業と行政の計画業務へ応用

企業紹介|株式会社Quanmaticとは?

膨大な候補の中から最も良い計画を選び出す技術として、注目を集める「組合せ最適化」。株式会社Quanmaticは、その社会実装を目指す、早稲田大学発の量子技術系ディープテック企業です。量子計算を用いた最適化ソフトウェアと、業務に合わせた計算の設計を、製造・物流・行政の現場へ提供しています。

キーワード「組合せ最適化」

組合せ最適化」は、多数の候補の中から、制約を満たしたうえで最も良い組み合わせを選び出す問題です。どの装置にどの製品を流すか、どの車両がどの店舗を回るかといった計画業務が代表例で、候補の数は対象が増えるほど爆発的に膨らみます。総当たりでは現実的な時間で解き切れないため、短時間で良い解へ近づく計算手法が求められます。

市場課題|最適な計画は選び出しにくい

現状の計画業務の課題|現状は、候補が多すぎて計画づくりが長引く/人手の計画で待ち時間が増える/立てている間に前提が古くなりやすい

人手の計画で待ち時間が増える

工場の生産順序や配送ルートの計画は、いまも担当者の手作業で組まれています。しかし装置や車両、納期の条件が絡み合うため、選びうる組み合わせの数は人手で見渡せる範囲を超える規模です。経験にもとづく計画は需要の変動へ組み替えにくく、装置の待ち時間や余分な車両が積み上がりやすくなります。

規模が増すと計算が長引く

扱う対象が増えるほど、計画を求める計算の時間は急速に伸びます。変数が増えると探索の範囲が指数的に広がるため、数理計画ソルバー(最適化問題を解く汎用の計算ソフト)でも答えが出るまで時間がかかりやすいからです。現場の状況は刻々と変わるので、計算が終わる頃には前提が古くなり、立てた計画をそのまま使いにくくなります。

他にも、業務の条件を数式へ書き換える定式化の難しさ、計算機ごとに異なる制約への対応の煩雑さ、現場のデータに残る欠けや誤り、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 組合せ最適化多数の候補の中から、制約条件を満たしつつ目的の値が最も良くなる組み合わせを選ぶ問題を指す。対象が1つ増えるごとに候補は掛け算で増えるため、すべてを試す方法では現実的な時間で解き切れない。

Quanmaticの強み|「組合せ最適化」を研究

Quanmaticが「組合せ最適化」を研究|今後は、分割と反復で大規模計算が可能に/計算しやすい形に問題を書き換える/分割と反復で大規模問題も解く

計算しやすい形に書き換える

人手で組む計画では、選びうる組み合わせを一つずつ比べられないため、より良い案を見落としがちです。

そこで同社が用いるのは、解きたい問題をイジングモデル(2つの状態しか取らない変数が互いに影響しあう物理の模型)へ書き換え、アニーリング式の量子計算機で解く方法です。この模型はQUBO(0と1の変数だけで書き表す最適化の形式)とも呼ばれ、両者は互いに変換できます。変数の結びつきを係数で与えれば、装置の割り当ても車両の割り当ても同じ形に揃います。解を効率よく探すのは、汎用ソフトウェア「QANML」(量子計算を効率化するアルゴリズム群)です。

分割と反復で規模を広げる

アニーリング式の量子計算機は一度に扱えるビット数に限りがあり、変数の多い問題をそのまま載せにくいという制約を抱えています。

同社が「QANML」に搭載した「リボアニーリング法」は、問題の分割と自動反復によって、部分の解を全体の解へ組み上げる手法です。これにより、100万ビット(変数の個数にあたる単位)規模まで扱えます。得られるのは最適解そのものではなく、実用に足る良い解です。50万ビット規模では解の精度が5〜10%高まる見込みです。「QANML」は、データの解析と自動修正を担う「QLEANSER」や計算基盤「QUPIT」(アニーリング計算を業務で動かす土台)と組み合わせて提供されています。

FrontJournalの解説
  • アニーリング金属を熱してゆっくり冷ますと結晶の乱れが整う現象になぞらえた計算手法を指す。多数の変数の状態を少しずつ変えながらエネルギーの低い状態を探し、組合せ最適化のより良い解へ近づける。

組合せ最適化の未来|計画業務が置き換わる

産業の組合せ最適化が変える未来|製造から物流、行政へ広がっていく/半導体工場の生産計画で稼働/配送に必要な車両台数を削減/行政の割当業務でも実証が進む

半導体の生産計画で稼働

同社の最適化技術は、半導体の製造ラインで稼働しています。同社とロームは2023年からEDS工程(チップの電気特性を調べる検査)の最適化に取り組み、段取り替えのロスを40%削減しました。この成果を土台に、ロームのグループ会社ラピスセミコンダクタの宮崎工場では、2026年1月からシステムが動いています。ロットと装置の処理順序を計算で決め直し、人待ちや物待ちの時間を削ることで、生産効率は3%向上しました。

物流と行政の業務へ広がる

物流と行政の業務でも、運用と実証がすでに始まっています。「CAINZお届け便」(カインズの自宅配送サービス)では、2025年7月から量子計算による配送計画が本格運用に入り、近隣店舗で車両を共有する形へ切り替えたことで、必要な車両は21台から15台へ減りました。川崎市では屋内スポーツ施設の予約調整に用いられ、約1カ月かかった割り当て業務が1週間に短縮されています。2026年7月にはオプティマインドと提携し、輸配送領域の高度化に取り組んでいます。

意思決定手法の普及を目指す

同社が掲げるのは、大規模計算と業務知識を組み合わせた新しい意思決定手法を確立し、普及させることです。適用先は製造や物流にとどまらず、研究開発の素材の探索や広告配信の設計にも広がっています。同社は三井住友銀行などと、アプリの広告分析に量子計算を用いる実証にも取り組みました。計算機の進歩に合わせて扱える問題の規模を広げ、経験に委ねられてきた計画業務を計算で支える姿を目指しています。

会社概要|Quanmaticの事業内容

早稲田大学の研究から創業

株式会社Quanmaticは、2022年10月に東京都で設立されました。創業の中心となったのは、量子計算のアルゴリズムを研究する早稲田大学戸川望教授です。研究室で培ったアルゴリズムの知見を産業の現場へ届けるために設立された会社です。同教授がCSO(最高科学責任者)、慶應義塾大学田中宗准教授がCTO、武笠陽介氏がCPOを務めています。初代の代表取締役CEOには古賀純隆氏が就き、2026年4月には田中大輔氏が就任しました。

NEDOと川崎市の事業に採択

同社は、国と自治体の事業に相次いで採択されています。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/人材育成」では早稲田大学との共同提案が採択されました。同社が運営するのは、高度量子人材育成プログラム「TAQUMI」です。2026年8月には「令和8年度 量子実証 川崎モデル創出事業」に採択され、新たに道路の維持補修を含む割り当て業務の実証へ広げます。2026年3月には「第11回 JEITAベンチャー賞」を受賞しました。

シリーズAで5.3億円を調達

同社は2024年10月、シリーズAラウンドで総額5.3億円の資金調達を実施しました。引受先は、東京大学エッジキャピタルパートナーズ、早稲田大学ベンチャーズ、JPインベストメント、SMBCベンチャーキャピタルの4社です。2023年2月には、早稲田大学ベンチャーズなどを引受先とするシード調達も完了しています。調達した資金は、量子計算とAI・数理最適化を用いたソリューション開発の加速に充てられています。

会社情報

会社名株式会社Quanmatic(Quanmatic Inc.)
所在地東京都新宿区早稲田町27 早稲田大学40号館605号室。大手町オフィス、つくばサテライト
設立2022年10月26日
代表代表取締役CEO:田中 大輔(2026年4月就任)。CSO:戸川 望(早稲田大学教授)。CTO:田中 宗(慶應義塾大学准教授)。CPO:武笠 陽介
調達2023年2月にシード調達。2024年10月にシリーズAラウンドで総額5.3億円。引受先は東京大学エッジキャピタルパートナーズ、早稲田大学ベンチャーズ、JPインベストメント、SMBCベンチャーキャピタル
事業量子計算・数理最適化を用いた最適化ソリューションの開発と提供。汎用ソフトウェア「QANML」「QLEANSER」「QUPIT」「QAZAGURUMA」
技術領域組合せ最適化、量子アニーリング、QUBO、イジングモデル、リボアニーリング法、量子機械学習
連携ローム(半導体の生産計画)。カインズ(配送計画)。オプティマインド(2026年7月に事業提携)。早稲田大学(高度量子人材育成プログラム「TAQUMI」)
採択NEDO ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/人材育成。令和8年度 量子実証 川崎モデル創出事業(2026年8月)。第11回 JEITAベンチャー賞(2026年3月)
URLhttps://quanmatic.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

量子コンピュータをめぐる話題は、しばしば計算機そのものの性能に集まります。しかしQuanmaticが向き合うのは、目の前の業務をどう数式へ置き換え、いまある計算機で解き切るかという現場側の問題です。半導体工場のロットの並べ方も、車両の割り当ても、書き換えれば同じ形の問題になる、という発想が面白いところです。

価値の核心は、単なる高速な計算ではなく、経験を土台にしてきた計画づくりを計算で支え直す点にあります。生産効率は3%、配送車両は21台から15台へ、調整期間は1カ月から1週間へ。いずれも毎日繰り返される業務で積み上がる差です。量子技術の実装が足元の工程から始まっていることを示す実例だといえます。

計算が担う範囲が広がったとき、現場の仕事はどこまで軽くなるのか。今後の展開を注視したいところです。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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