株式会社Real Touch|力加減を再現する力触覚ロボットを開発する北海道大学発のディープテックスタートアップ

株式会社Real Touch(リアルタッチ)

Real Touch「力触覚」を研究|研究領域=触れた力加減を数値でとらえる/強み=グローブで教示5分で自動化/将来性=水産の現場から手仕事の各所へ

企業紹介|株式会社Real Touchとは?

人の手の力加減までロボットで再現する技術として、「力触覚」が注目されています。株式会社Real Touchは、北海道大学発のロボティクス系ディープテック企業です。代表取締役の牧駿氏が2025年8月に設立し、水産加工の現場に向けたアーム型ロボット(腕の形をした産業用ロボット)を開発しています。たらこのような崩れやすい食材も潰さずに扱え、誰でも5分で作業を教えられる汎用ロボットの実用化を目指しています。

キーワード「力触覚」(リアルハプティクス)

力触覚は、ものに触れたときの力加減や柔らかさを数値としてとらえる技術です。特徴は、作業者がグローブ型のコントローラーで実演した動きと力を、ロボットがそのままなぞれる点にあります。水産加工では、魚をさばく、身をほぐすといった手先の感覚が要る工程を、機械に任せられます。

市場課題|担い手が減る水産加工の現場

現状の水産加工の課題|担い手が減り産地の生産に影響/食材の扱い方はロボット化しにくい

漁業の担い手が減り続ける

水産加工を支える漁業の担い手が、年々減っています。農林水産省の統計によると、漁業就業者数は2023年に約12.1万人で、前年から1.4%減りました。水揚げから加工までを同じ地域が担う産地では、魚を獲る人が減れば加工場も稼働を保ちにくくなるといわれています。

産業用ロボットは不定形物に弱い

従来の産業用ロボットは、決まった形のものを決まった力でつかむ作業を得意としてきました。一方、形の違う魚や崩れやすい食材など不定形のものは、同じ動きの繰り返しでは扱いにくい状態が続いています。力を強めれば身が潰れ、弱めれば取り落とすため、力加減の要る工程はいまも人の手に残されています。

加工量は繁忙期と閑散期で大きく変わります。産地ごとに魚種も工程も異なり、同じ機械を持ち込みにくい事情もあります。他にも、熟練者の手の動きをどう次の世代へ引き継ぐか、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 産業用ロボット工場で組み立てや運搬を担うロボット。決まった作業を正確にくり返すのは得意だが、形や硬さが一定でないものの扱いは難しいとされてきた。
  • 不定形大きさや形が一つひとつ異なり、決まった寸法として扱えない状態。魚や生鮮食品が代表例で、機械による自動化を難しくする要因になる。

Real Touchの強み|力加減を再現する

Real Touchが「力触覚」を開発|グローブで教え5分で切替/柔らかさに応じ力を加減する

誰でも5分で作業を教えられる

Real Touchの強みは、専門知識のない現場の作業者でも、5分ほどで新しい作業を教えられる点にあります。従来の産業用ロボットでは、作業を1つ変えるたびに、技術者がプログラムを組み直す教示が必要で、導入も入れ替えも重い負担でした。同社の方式では、作業者がグローブ型コントローラーに手を入れ、いつもの手順を実演すると、ロボットが同じ動きをそのままなぞります。このとき同時に記録されるのが、手先が受け取った力の強さや柔らかさのデータです。動作と感覚を一組で学んだAIが作業を再現するため、扱う品目や工程が頻繁に変わる現場でも、限られた人数で複数の作業を回しやすくなります。

柔らかい食材も潰さずに掴める

Real Touchのロボットは、触れた物の柔らかさに応じて、押し込む力をその場で加減できます。力が一定のロボットでは扱いにくく、身の柔らかい魚介の工程は人の手に残されてきました。押し込む力の目安になるのは、作業者が実演したときに記録された力のデータです。こうして力を加減できるため、たらこのような崩れやすい水産物も、形を保ったまま掴んで運べると説明されています。形が変わっても持ち方と力加減を調整できるため、品目や工程の切り替えが多い現場ほど、導入の効果は大きいとされています。

FrontJournalの解説
  • 力触覚(リアルハプティクス)ものに触れたときの力加減や柔らかさを数値としてとらえ、離れた場所へ伝えたり記録したりする技術。ロボットに人の手の感覚を持たせる基礎になる。
  • グローブ型コントローラー手を入れて動かすとロボットが同じ動きをなぞる操作装置。人が実際に作業する形で操作でき、その動きと力の感覚をそのまま記録できる。
  • 教示ロボットに作業手順を覚えさせること。ティーチングとも呼ばれ、従来は専門の知識とプログラムを必要とする工程だった。

未来|水産加工から手仕事の現場へ

力加減できる力触覚が変える未来|水産の現場で実証が進む/食品や農業へ用途が広がる/熟練者の技をデータで残す

水産加工の現場で実証が進む

Real Touchがまず取り組むのは、水産加工の現場です。扱う魚は形も種類も日ごとに変わるうえ、身を崩さない力加減も欠かせないため、自動化が難しい領域とされてきました。同社はこうした工程を対象に、現場への導入を見据えた開発と実地テストを進めています。力触覚ロボットが工程の一部を担えれば、人手が限られる産地でも加工を続けやすくなります。

食品加工や農業の現場へ広げる

力加減の要る手作業は、水産以外の産業にも数多くあります。同社は食品加工や農業のように、柔らかいものや不定形のものを扱う現場を次の応用先と見込んでいます。教え方次第で作業を変えられる汎用ロボットのため、現場ごとに専用機を一から作り直す必要がありません。設備に大きな投資をしにくい小規模な事業者にとっては、一台で複数の工程に対応できることが導入のしやすさにつながるとされています。

熟練者の技を残すことを目指す

同社が見据えるのは、危険を伴う作業や医療のように、人の手に委ねられてきた領域です。力触覚は離れた場所へ手の感覚を伝えられるため、作業者が現場に立ち入らずに操作する遠隔作業にも応用できる技術です。熟練者の手の動きと力加減データとして残せることは、経験を次の世代へ引き継ぐ手立てにもなるといわれています。Real Touchは、人の手の感覚をロボットに宿し、手作業の多い現場を支えることを目指しています。

FrontJournalの解説
  • 水産加工水揚げされた魚介を切り分けたり加工したりして製品にする仕事。繊細な力加減を要する手作業が多く、人手不足と自動化の難しさが課題とされる。
  • 汎用ロボット決まった一つの作業だけでなく、教え方しだいでさまざまな作業に対応できるロボット。現場ごとに専用機を用意する負担を減らせる。

会社概要|Real Touchの事業と設立背景

北海道大学の研究から設立

株式会社Real Touchは、2025年8月1日に札幌市で設立されました。代表取締役を務めるのは、北海道大学で力触覚の研究を続けてきた牧駿氏です。同社は、力触覚と、力の感覚データを学習した動作認識・再現AIを組み合わせ、アーム型ロボットの製品化を目的に掲げています。従業員は5名で、地元の水産業が抱える課題を出発点に開発を進めています。

NEDOのNEPに採択された

同社は2025年、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「NEP」に採択されました。NEPは、研究開発型スタートアップの起業と事業化を支援する制度です。採択テーマは同社の中核事業そのもので、開発は公的支援を受けて進んでいます。拠点は、中小企業基盤整備機構が運営するインキュベーション施設「北大ビジネス・スプリング」です。

5分で教えられる汎用機を提供

同社が事業の柱に据えているのは、力触覚を備え、誰でも5分で作業を自動化できる汎用ロボットの研究開発と提供です。工程ごとに専用機を作り込むのではなく、教え方次第で多くの作業に対応させる考え方です。この汎用性は、専用機を導入するほどの規模がない事業者の選択肢を増やすことにつながります。水産加工を足がかりに、手作業の多い現場へ順に広げていく計画です。

会社情報

会社名株式会社Real Touch(リアルタッチ)
所在地札幌市中央区南2条西5丁目31-1 RM Bld. 701(北大ビジネス・スプリング)
設立2025年8月1日
代表代表取締役:牧 駿
従業員5名
事業力覚を有する、誰でも5分で作業を自動化できる汎用ロボットの研究開発・提供
技術領域力触覚(リアルハプティクス)、動作認識・再現AI、汎用ロボット、遠隔操作。北海道大学
採択中小企業基盤整備機構「北大ビジネス・スプリング」入居/NEDO「NEP(NEDO Entrepreneurs Program)」採択(2025年)。力覚を有する誰でも作業を自動化できる汎用ロボットの研究開発
URLhttps://real-touch.studio.site/

編集後記|FrontJournal編集部より

ロボットによる自動化と聞くと、決まった形のものを決まった手順で扱う工場を思い浮かべがちです。Real Touchが挑んでいるのは、その対極にある仕事といえます。形も硬さも違うものを、力加減しながら扱う自動化です。

この会社が印象に残るのは、人の手の感覚そのものを技術として受け継ごうとしている点です。たらこを潰さずに掴む、という具体的な目標が掲げられています。見据えているのは、産地の手仕事を絶やさないことです。5分で教えられるという手軽さも、技術を研究室にとどめず現場に根づかせる姿勢のあらわれでしょう。

設立から1年ほどで、これから社会実装が本格化する会社です。北海道の水産業から始まった挑戦は、手仕事に支えられてきた多くの産業に通じます。人の手の感覚をロボットに宿すこの技術が、人手不足に揺れる現場をどこまで支えるのか。その歩みに注目したいところです。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら

この企業について、
もっと深く知りたい方へ

パートナーシップ・お問い合わせはこちらから。