ソニア・セラピューティクス株式会社|超音波で膵臓がんを焼灼するHIFU治療を研究する東北大学発企業

ソニア・セラピューティクス(SONIRE)

ソニア・セラピューティクス「HIFU治療」を研究|研究領域=超音波でがん組織を凝固壊死させる治療/強み=開腹・被ばくなしで繰り返し治療/将来性=国内外の治験から実用化へ

企業紹介|ソニア・セラピューティクスとは?

体外から超音波を集めてがんを焼灼する技術として、注目を集める「超音波ガイド下HIFU治療」。ソニア・セラピューティクス株式会社は、その「超音波ガイド下HIFU治療」の社会実装を目指す、東北大学発のヘルスケア系ディープテック企業です。超音波ガイド下HIFU治療装置「Suizenji(すいぜんじ)」の治験を、国内の医療機関と共に進めています。

キーワード「HIFU」(高密度焦点式超音波)

「HIFU」は、体外から発した超音波を一点に集め、その熱でがん組織を凝固壊死(熱によってタンパク質が変性し、組織が死ぬこと)させる治療法です。特徴は、開腹や放射線被ばくを伴わず、繰り返し治療できる点にあります。同社が開発する装置では、超音波エコーで患部を確認しながら、麻酔を使わずに治療を受けられるとされています。

市場課題|膵臓がんは早期発見も治療も難しい

現状の膵臓がん治療の課題|現状は、既存治療の限界で選択肢が乏しい/膵臓がんは早期発見が難しい/切除不能例は選択肢が乏しい

膵臓がんは早期発見が難しい

膵臓がんは、自覚症状に乏しく、早期発見が難しいがんとして知られています。国内の膵臓がんの罹患数は年間4万7,540例(2023年)、死亡数は4万1,235人(2024年)で、5年相対生存率は13.2%(2018年診断例)です。診断された時点で既に切除が難しい進行例も多く、治療の選択肢が限られたまま病状が進む患者が少なくないといわれています。

切除不能例は選択肢が乏しい

切除できない膵臓がんの患者には、長く既存治療の選択肢が限られてきました。主な選択肢である抗がん剤治療は効果の及ぶ範囲に限りがあり、放射線治療は周辺の正常な臓器への影響から照射量を抑える必要があります。そのため、体への負担を抑えながら繰り返し治療できる新たな手法が求められてきました。

他にも、抗がん剤による強い副作用、放射線治療での照射回数の制約、患者ごとに病状が大きく異なる膵臓がんの多様性、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 5年相対生存率がんと診断されてから5年後に生存している割合を、同じ性別・年齢の一般集団と比較して示す指標である。がん種ごとの治療の難しさを表す代表的な統計値として使われる。

強み|超音波でがんを焼灼する技術

ソニア・セラピューティクスが「HIFU治療」を開発|今後は、焦点の可視化で正確な焼灼が可能に/超音波でがん組織を的確に加熱(装置名Suizenji)/ロボット誘導で高精度に照射

超音波でがん組織を的確に加熱

体外から患部を狙う治療では、超音波の焦点が体内のどこにあるかを治療中に確認しにくいという課題がありました。

同社が開発する「Suizenji(すいぜんじ)」は、体外から照射した超音波を一点に集め、その熱でがん組織を凝固壊死させる治療装置です。特徴は、キャビテーション気泡(強い超音波が液体中を通るときに生じる微小な泡)の分布を画像化して焦点を可視化し、治療中に位置を確認できる点にあります。焦点を見ながら照射できるため、周辺の正常な組織への影響を抑えられるとされています。この気泡は加熱効率も高めるため、低いエネルギーでの短時間の治療につながる点も特徴です。

ロボット誘導で高精度に照射

膵臓は呼吸に伴って動くため、体外からの照射では焦点を一点に保ち続けることが難しい臓器です。

「Suizenji」は、治療用の超音波が診断画像に与えるノイズを抑え、照射中もエコー画像を保つ技術を備えています。これにより、呼吸に伴って動く膵臓の位置を確認しながら照射できるとされています。さらに、複数の点へ順番に照射するロボット誘導技術も特徴です。この技術によって、術者の手技に頼らず焦点を目標へ合わせ続けられます。ソニア・セラピューティクスは、これらの技術を生かし、放射線被ばくを伴わずに繰り返し治療できる装置の実用化を進めています。

FrontJournalの解説
  • キャビテーション気泡強い超音波が液体中を通るとき、圧力が下がる位相で生じる微小な泡である。一定以上の音圧で発生するため、その分布を画像化すると超音波の焦点を確認できる。

超音波治療の未来|膵臓がん治療への応用

低侵襲なHIFU治療が変える未来|国内外の治験で実用化を目指す/国内治験で患者登録が完了/米国でも治験の準備が進む/膵臓がん治療の負担軽減を目指す

国内治験で患者登録が完了

ソニア・セラピューティクスは、切除不能膵臓がん患者を対象にした国内治験「SUNRISE-I」を進めており、2026年6月に患者登録を完了しました。全国7つの医療機関が参加する多施設共同の無作為化比較試験(患者を無作為に振り分けて治療法の効果を比較する試験)で、生存期間を主要な評価項目としています。この結果を踏まえ、国内での承認・上市を目指す計画です。承認されれば、腫瘍の広がりから切除できない患者にも、新たな治療の選択肢が加わるといわれています。

米国でも治験の準備が進む

海外展開では、2024年10月に米食品医薬品局(FDA)から「Suizenji」がブレークスルーデバイス(重篤な疾患向けの医療機器を優先的に審査する米国の制度)に指定されました。この指定により、同社はFDAと早期に協議しながら審査を進められるとされています。2025年8月には、米国で治験を行うための許可(IDE)も取得しました。国内外で並行して治験を進めることで、実用化までの期間短縮を目指しています。

膵臓がん治療の負担軽減を目指す

高齢化が進むなか、体力の低下した患者にも実施できる低侵襲ながん治療が求められています。開腹や放射線被ばくを伴わない「超音波ガイド下HIFU治療」は、その選択肢の一つです。HIFUを使ったがん治療は、国内外の学会でも研究・臨床応用が進められている分野です。東北大学発のソニア・セラピューティクスは、この技術を膵臓がん治療の新たな選択肢として広げることを目指しています。

会社概要|ソニア・セラピューティクス株式会社

大学の研究成果で起業

ソニア・セラピューティクス株式会社は、2020年2月に設立されました。創業の中心となったのは、東北大学大学院工学研究科の吉澤晋准教授と、東京女子医科大学の岡本淳准教授です。両准教授が国のプロジェクトで進めてきた超音波治療の研究成果を、産業として実用化することを目的としています。代表取締役には、製薬企業での勤務経験を持つ佐藤亨氏が就任し、吉澤氏がCTO(最高技術責任者)、岡本氏がCOO(最高執行責任者)を務めています。

経産大臣賞の受賞とNEDO採択

同社は、公的機関からの支援や表彰を通じて事業の裏付けを重ねてきました。2024年8月には、大学発ベンチャー表彰の「経済産業大臣賞」を受賞しています。「NEDO」(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「ディープテック・スタートアップ支援事業」にも採択され、2023年度から2025年度にかけて研究開発を進めています。

累計約41億円を調達

資金調達では、複数回のラウンドを重ねて事業の基盤を強化してきました。2021年のシリーズAで約5億3,000万円、2022年のシリーズBで約23億5,000万円を調達し、2026年1月にはシリーズCの第一弾として約12億5,000万円を調達しています。調達した資金は、国内外での治験の推進と、実用化に向けた体制強化に充てられています。

会社情報

会社名ソニア・セラピューティクス株式会社(SONIRE Therapeutics Inc.)
所在地東京都中央区日本橋本町3-11-5 日本橋ライフサイエンスビルディング2 803
設立2020年2月
代表佐藤亨(代表取締役社長兼CEO)。吉澤晋(東北大学大学院工学研究科准教授・CTO)。岡本淳(東京女子医科大学准教授・COO)
調達累計約41億円(シリーズA〜シリーズC第一弾。2021年〜2026年)
事業超音波ガイド下集束超音波(HIFU)治療装置の研究開発(開発コード「Suizenji」)。切除不能膵臓がんを対象とした国内外での治験の実施
技術領域集束超音波治療、医療機器、腫瘍治療、ヘルスケア
連携東北大学・東京女子医科大学・東京医科大学・東京薬科大学・神戸大学等と技術協力
採択大学発ベンチャー表彰「経済産業大臣賞」(2024年8月)。NEDOディープテック・スタートアップ支援事業採択(2023〜2025年度)。ICC FUKUOKA 2025 リアルテック・カタパルト優勝(2025年2月)
URLhttps://www.sonire-therapeutics.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

膵臓がんは、発見の難しさと治療の選択肢の乏しさから、長く難治がんの代名詞とされてきました。手術で切除できない患者には、抗がん剤や放射線治療という限られた選択肢しか残されてきませんでした。ソニア・セラピューティクスが開発する「超音波ガイド下HIFU治療」は、開腹や放射線被ばくを伴わずにがん組織を焼灼できる点で、この状況を変えうる技術です。

同社の取り組みは、単なる新しい治療機器の開発にとどまらず、体への負担が少ないがん治療という選択肢を患者に届ける挑戦だといえます。国内では治験の患者登録が完了し、米国でも治験開始に向けた手続きが進んでいます。国内外で臨床データが積み上がるいま、その成果が問われる局面です。

東北大学発の技術が、膵臓がんと向き合う患者に新たな選択肢をもたらす日を期待しています。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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