サムテック「ミリ波の誘電率測定」を研究

サムテック有限会社

サムテック「ミリ波の誘電率測定」を研究|研究領域=ミリ波帯の測定ソフトを開発/強み=厚さ方向の値を周波数ごとに測定/将来性=規格に沿った測定提供を目指す

企業紹介|サムテック有限会社とは?

ミリ波帯で使う基板材料の電気的な性質を、数値で把握する技術である「ミリ波の誘電率測定」。サムテック有限会社は、その研究開発に取り組んできた、埼玉大学発の電子材料系ディープテック企業です。誘電率の測定ソフトウェア「SUM-DISK」などを開発し、その知的財産権は現在、NTTデバイスクロステクノロジに帰属しています。

キーワード「ミリ波の誘電率測定」

「ミリ波の誘電率測定」は、基板材料が電気をどれだけ蓄えるか(誘電率)と、電波をどれだけ熱として失うか(誘電正接)を、ミリ波帯で求める計測です。サムテックは、平衡形円板共振器法(厚さ方向の値を測る方法)を軸に、5〜110GHzの測定ソフトを開発してきました。基板の設計や評価で、周波数ごとの材料の性質を確かめられます。

市場課題|ミリ波の拡大で誘電率の測定が重要に

現状の誘電率測定の課題|現状は、方法ごとに周波数帯と方向が違い比べにくい/ミリ波の拡大で誘電特性が要る/測定法が分かれ比べにくい

ミリ波拡大で誘電特性が要る

一般に、5G(第5世代移動体通信)や衝突防止レーダーの広がりで、ミリ波(30〜300GHzの電波)の利用が拡大しています。この周波数領域で使う電子材料の条件は、一般に低誘電率と低誘電正接(電波が熱として失われる割合の小ささ)です。材料の誘電率と誘電正接をミリ波の周波数で正確に測れなければ、基板の設計に使う値を決めにくくなります。

測定法が分かれ比べにくい

誘電率の測定法は、対応する周波数帯と測れる方向が、方法ごとに異なります。IEC(国際電気標準会議)の規格も、空洞共振器法(金属の空洞内の共振を利用する方法)や平衡形円板共振器法など、方法ごとに別々です。周波数や方向を変えるたびに測定法を選び直す必要があり、値を比べにくい状況です。

他にも、試料と治具の間の空隙による誤差、薄い試料の測定の難しさ、作業条件によるばらつき、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 誘電率電界を加えたときに、材料がどれだけ電気を蓄えられるかを示す値である。真空に対する比を比誘電率と呼び、基板の中を電波が進む速さに関わる。

サムテックの強み|「ミリ波の誘電率測定」を研究

サムテックが「ミリ波の誘電率測定」を研究|これまでに、共振器でミリ波帯の計測を実現/ミリ波まで厚さ方向を測定/1つの治具で周波数依存性を測定

ミリ波まで厚さ方向を測定

空洞共振器法は、主に基板の面に沿った方向の誘電率を測る方法です。厚さ方向の値は、別の方法で測る必要があります。

平衡形円板共振器法は、誘電体基板の厚さ方向の複素比誘電率(比誘電率と誘電正接をまとめた値)を、マイクロ波からミリ波の帯域で測る方法です。この方法に基づくソフトウェア「SUM-DISK」は、5〜110GHzを対象に開発され、厚さ方向の値はマイクロストリップ構造(基板の片面に信号線、裏面に接地導体を置く配線構造)の設計に有効とされています。ミリ波帯まで厚さ方向の値を測れるため、マイクロストリップ構造の設計に使う値を、実際の基板に近づけることができます。

1つの治具で周波数依存性を測定

単一の共振モードを使う方法では、値が得られるのは、その共振が起きる周波数に限られます。周波数ごとの変化を調べるには、共振周波数の異なる複数の共振を用意する必要があります。

平衡形円板共振器法は、1つの治具(試料を固定して測る器具)で、共振周波数の異なる複数の共振モード(共振の振動の型)を使い、周波数依存性を測れる方法です。この方法は、低損失誘電体基板の複素誘電率の測定法として、2020年にIEC 63185の国際規格になりました。住友ベークライトの2022年の資料でも、10〜110GHzの測定法として挙げられています。1つの治具で周波数ごとの値がそろうため、治具の付け替えが要らなくなり、周波数による変化を比べやすくなります。

FrontJournalの解説
  • 共振モード共振器の中で電波が強く振動する、固有の電界分布の型である。型ごとに共振する周波数が異なるため、複数のモードを使うと複数の周波数で測定できる。

ミリ波の誘電率測定の未来|6G世代の高周波基板の評価へ

ミリ波の誘電率測定が変える未来|高周波基板の評価を支える方向へ/平衡形円板共振器法などのソフトを開発/温度と湿度の依存性も評価/規格に沿った測定提供を目指す

複数の測定法をソフトで開発

同社は、1〜110GHzの帯域で、誘電体や導体の電気的な性質を測るソフトを研究開発してきました。製品は、平衡形円板共振器法の「SUM-DISK」、空洞共振器法の「SUM-PLATE」などで、測る方向と周波数帯に応じた使い分けが可能でした。ソフトの中核は、IECとJIS(日本産業規格)に準拠した厳密解析計算でした。「SUM-DISK」は、携帯機器向けから車載ミリ波センサ向けまでの周波数帯に対応していました。

温度と湿度の依存性も評価

周波数依存性に加え、温度依存性と湿度依存性の評価も行うとされています。温度測定に対応したソフトは、温度による複素比誘電率の変化を自動で計算する機能を備えていました。測定サービスの項目は、誘電体平板の面方向と厚さ方向、導体板や銅箔の表面抵抗などです。使用環境に近い温度や湿度での値を確かめられるため、基板材料を選ぶ際の判断材料が増えます。

規格に沿った測定提供を目指す

サムテックは、6G・5G世代の通信機器や車載レーダーを支える高周波基板について、誘電体試料の測定依頼を受け付けています。窓口は、NTT(日本電信電話)グループのNTTデバイスクロステクノロジとサムテックの2社です。測定値は、IEC国際標準とJIS国内標準に準拠した厳密解析計算に基づきます。「SUM-DISK」などの知的財産権と関連技術は、NTTデバイスクロステクノロジへ承継されています。

会社概要|サムテックの事業内容・設立背景

埼玉大学の研究から事業化

サムテック有限会社は、埼玉大学工学部の小林禧夫教授による低損失誘電体の応用研究開発の成果を事業化するため、2004年7月7日に設立されました。営業の開始は同年8月1日です。社名は、Saitama University Microwave Technologyに由来します。平衡形円板共振器法は、小林の1970年代以降の基礎研究をもとに30年に及ぶ研究開発を経て、実用化されたとされています。

埼玉大学の研究者と共同で発表

サムテックの小林禧夫は、埼玉大学の研究者との共著で、誘電体の測定に関する研究を学会に報告してきました。2010年には、電子情報通信学会のマイクロ波研究会で、常光理志氏、馬哲旺氏と「銅張誘電体積層基板の界面導電率の周波数依存性測定」を報告しました。2014年には、第28回エレクトロニクス実装学術講演大会で、中堤純氏と「平衡形円板共振器法における測定の簡素化に関する検討」を報告しています。

測定ソフトの販売と周辺事業

事業は、マイクロ波・ミリ波帯の電子材料測定用ソフトウェアとシステムの研究開発・販売・レンタル・保守と、特性測定・試験評価、技術コンサルティングなどです。2009年7月には誘電体フィルタ設計支援ソフトの販売とレンタルを始め、クラウドサービス「SUMCLOUD-RFCALC」は2024年3月末で終了しました。CEATEC JAPANには2015年に初出展し、2016年、2018年、2019年にも出展したと告知されています。

会社情報

会社名サムテック有限会社
所在地埼玉県さいたま市中央区上落合3-10-1
設立2004年7月
代表代表取締役 小林 禧夫
資本金300万円
事業マイクロ波・ミリ波帯の電子材料測定用ソフトウェア・システムの研究開発、販売、レンタル、保守。特性測定と試験評価、技術コンサルティング。「SUM-DISK」などの知的財産権はNTTデバイスクロステクノロジ株式会社に帰属
技術領域平衡形円板共振器法。マイクロ波・ミリ波帯の複素比誘電率の測定
URLhttp://www.sumtec.biz/

編集後記|FrontJournal編集部より

ミリ波帯の基板材料は、誘電率と誘電正接を周波数ごと、方向ごとに把握できて、はじめて回路の設計に生かせます。サムテックは、その解析をソフトウェアにして、基板材料の評価を支えてきました。規格に準拠した計算を採り入れている点も、評価結果の信頼性を支える要素です。

平衡形円板共振器法は、国際規格のIEC 63185として標準化され、住友ベークライトの資料でも測定法として挙げられています。単なる計測の道具ではなく、手順を共通にする土台になっている点に意義があります。大学の基礎研究に始まるとされる方法が、国際規格になった流れは、ディープテックの一例です。

ミリ波の基板材料を同じ尺度で評価できる環境が広がれば、6G向けの通信機器や車載レーダーの開発が進みやすくなり、機器の品質向上につながると期待します。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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