株式会社TBA|判定に読取機器を使わず複数の遺伝子を目視で確認する検査技術「STH法」を開発する東北大学発ディープテック

株式会社TBA(Tohoku Bio Array)

企業紹介|株式会社TBAとは?

判定に読取機器を使わず、複数の遺伝子を同時に目視で確認できる検査法として、注目を集める「STH法」。その「STH法」の社会実装を目指す、東北大学発のディープテックスタートアップがTBAです。この技術を目視判定試験紙「PAS」シリーズとして製品化し、感染症診断や食中毒菌の判定、食品の真偽判定に応用しています。

株式会社TBA「STH法」を研究|研究領域=DNAに目印を付け遺伝子を検査する/強み=試験紙の発色で複数項目を同時検出/将来性=感染症診断から食品判別へ広がる

キーワード「STH法」

STH法(Single Stranded Tag Hybridization法)は、PCR増幅した標的DNAを専用のストリップ上で発色させ、目視で判定する検査技術です。陽性の場合はラインが青く発色し、専門知識がなくても判定結果を読み取れます。判定に蛍光リーダーなどの読取機器を使わない点が特徴です。

市場課題|判定に読取機器と手間が要る

現状の遺伝子検査の課題|現状は、判定に読取機器が要り導入しにくい/専用機器の費用が検査現場の負担に/複数項目の検査は手間がかかる

結果の読み取りに機器が要る

遺伝子を調べる検査では、結果を読み取る蛍光リーダーなどの読取機器検査現場の負担になります。機器の導入費用に加えて、操作に一定の技能が求められるためです。設備投資に踏み切れない医療機関や検査事業者では、読み取り工程の導入が難しくなります。

複数項目の同時検出に手間

感染症や食品の判別では、複数の遺伝子を同時に調べることに手間がかかります。検体ごとに複数回の検査を重ねるか、高価な多項目対応の機器が必要になるためです。検査の手間とコストが重なり、迅速な判定が難しくなります。

他にも、検査結果を読み取る技能者の育成、現場に機器を持ち込む際の電源や設置スペースの確保、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 蛍光リーダー検体に付けた蛍光物質の光を検出し、遺伝子の有無を判定する専用機器のこと。高い感度で結果を数値化できる一方、機器の導入と維持に費用と技能を要する。

TBAの強み|目視で読み取る検査技術

株式会社TBAが「STH法」を開発|今後は、読取機器を使わず目視判定が可能に/青い線の発色で結果を読み取る/最大12種の遺伝子を1枚で同時検出

読取機器なしで目視判定

従来の遺伝子検査では、増幅した産物を蛍光や発光で読み取る専用機器が広く使われてきました。導入コストと操作の技能が、そのまま現場の負担になります。結果を読み取る工程そのものが、導入の壁として残ってきました。

TBAの中核にあるのは、「STH法」(Single Stranded Tag Hybridization法)と呼ぶ独自の検査技術です。まず専用の試薬で標的DNAをPCR増幅し、増幅産物の両端に2種類の目印を付けます。一方の端がビオチン、もう一方の端がタグDNAです。このビオチンと結合するのが、アビジンコートラテックスと呼ぶ青い粒子です。

粒子ごとメンブレンストリップ上を展開させると、タグDNAが膜に固相化した相補的な配列とハイブリダイゼーション(塩基配列どうしが結合する反応)を起こし、その位置に青い粒子が集まります。陽性ならラインが青く発色するため、専門知識がなくても目視だけで結果を判定できます。読み取りの工程に、専用の機器は要りません。

1回の検査で複数項目判定

複数の遺伝子を同時に調べるには、検体ごとの繰り返し検査か、高価な多項目対応の機器が必要でした。検査の回数が増えるほど、試薬と人手の負担も積み上がります。調べる項目が多いほど、この負担は重くなります。

TBAはこの技術を、目視判定試験紙「PAS」(Printed-Array Strip)シリーズとして製品化しました。4種類の遺伝子を同時に検出できる「C-PAS4」、8種類の「C-PAS8」、最大12種類まで検出できる「C-PAS12」の3種類です。用途に応じたカスタムオーダーにも対応可能です。ストリップには相補タグDNAが位置ごとに固相化されており、どの位置に青いラインが出たかが、そのまま陽性の遺伝子を示します。1枚で複数の遺伝子を同時に検出できるため、繰り返し検査の手間も減らせます。

FrontJournalの解説
  • メンブレンストリップ検査液を毛細管現象で吸い上げて展開させる、細長い帯状の膜のこと。展開した液中のタグDNAが、膜に固相化した相補配列と結合し、青い発色ラインとなって現れる。

STH法の未来|検査の応用先を拡大

簡便なSTH法が変える未来|感染症から食品まで、検査の場が広がる/マラリアなどの検査が現場で可能/食品のDNAから偽装を見分ける/新興感染症へも応用を目指す

感染症の現場診断に活用

判定用の読取機器を持ち込みにくい現場でも、「STH法」による感染症診断が行われています。新型コロナウイルスやマラリア、デング熱といった感染症の検査に、この技術が用いられてきたとされています。目視で結果を判定できる点が、検査体制の限られる地域では利点です。今後も感染症の検査分野で、活用の場が広がると見込まれています。

食品の真偽判定に応用

食品の真偽を確かめる検査にも、「STH法」の応用が進んでいます。タイのチュラロンコン大学の調査では、豚肉を牛の血に浸した「ハラール偽装肉」(イスラム法で許可されない食材を用いながら、許可された食材と偽って流通する肉)の流通が明らかになりました。これを受けてタイのTalenome社とチュラロンコン大学、TBAが共同で判別検査キットを開発し、2022年3月にタイでの販売開始を発表しています。この技術は、食中毒菌や口腔感染症に関わる菌の判定にも用いられてきました。

新興感染症の検査薬開発へ

TBAは、「STH法」を新興感染症の検査にも広げることを目指しています。2025年12月には、GHIT Fund(グローバルヘルス技術振興基金)の支援のもと、ニプロ株式会社や国立健康危機管理研究機構(JIHS)、米国のPATH、コンゴ民主共和国のINRB(国立生物医学研究所)と共同で、新規エムポックス(mpox)検査薬の開発プロジェクトに参画しました。この開発では、「STH法」から発展した「Iso-PAS法」を用いて、エムポックスの型を見分ける検査薬の試作を目指します。GHIT Fundは、この検査薬の試作開発プロジェクトに対して約7,000万円を投資しています。

会社概要|株式会社TBA

現在の代表は企業技術者出身

TBAは2013年7月、東北大学発のスタートアップとして設立されました。現在の代表取締役社長を務める川瀬三雄氏は、日本ガイシ(大手セラミックメーカー)でDNAプリンティング技術の事業化に従事したのち、2012年に東北大学へ移り研究者となった人物です。2018年9月には代表取締役社長へ就任しました。拠点は宮城県仙台市青葉区です。

公的支援を通じ海外へ展開

TBAはJETRO(日本貿易振興機構)の事業採択を通じて、海外展開を進めてきました。2024年には「ジャパンテック・アフリカチャレンジ」に採択されてGITEX Africa 2024(モロッコ)へ出展し、2025年8月には横浜で開催されたTICAD9(第9回アフリカ開発会議)にも参加・登壇しています。設立初期から、公的支援制度の採択も重ねてきました。2015年の「ものづくり補助金」、2016年の東北経済産業局新興国市場開拓等事業、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成金などです。

地域VCなどから資金調達

複数の投資家から資金を調達しています。2018年12月には、東北大学ベンチャーパートナーズ(THVP)のTHVP-1号ファンドから5,000万円を調達しました。2024年11月には、FVC Tohokuが盛岡市や地域金融機関などとともに設立したTohokuライフサイエンス・インパクト投資事業有限責任組合からも資金を調達しています。

会社情報

会社名株式会社TBA(Tohoku Bio Array)
所在地宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-40 T-Biz 307号室
設立2013年7月
代表川瀬 三雄(代表取締役社長)
資本金6,500万円
調達東北大学ベンチャーパートナーズ(THVP)THVP-1号ファンドより5,000万円(2018年12月時点)。Tohokuライフサイエンス・インパクト投資事業有限責任組合より調達(2024年11月)
技術領域遺伝子検査技術「STH法」、検査キット「PASシリーズ」、感染症診断、食品判別
連携タイ・Talenome社、チュラロンコン大学(ハラール判別検査キット共同開発)。ニプロ株式会社、国立健康危機管理研究機構(JIHS)、PATH(米国)、INRB(コンゴ民主共和国)、GHIT Fund(mpox検査薬開発)
採択ものづくり補助金(2015年)/東北経済産業局 新興国市場開拓等事業(2016年)/SENDAI for Startups!ビジネスグランプリ優秀賞(2017年)/JETRO「ジャパンテック・アフリカチャレンジ」(2024年)
URLhttps://www.t-bioarray.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

検査というと、大きな機器が並ぶ検査室を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかしTBAが手がける「STH法」は、ストリップに浮かぶ青い線を目で見るだけで結果が分かる技術です。判定に専用機器を前提としない発想が、検査の現場に新しい選択肢をもたらしています。

興味深いのは、この技術が感染症診断と食品の真偽判定という、一見離れた分野をまたいで応用されている点です。ハラール偽装肉の判別からエムポックスの検査薬開発まで、同じ原理が形を変えて役立っています。仙台で培われた検査技術が、国内外の現場でどう広がっていくか、これからの展開が注目されます。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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