Tsubame Lab「ラボオートメーション」を研究|東京科学大学発ベンチャーのサムネイル

Tsubame Lab株式会社(ツバメラボ)

Tsubame Lab「ラボオートメーション」を研究|研究領域=実験の手作業をロボットに任せる技術/強み=装置をまとめて動かす制御基盤/将来性=研究室全体を一つの自動化システムへ

企業紹介|Tsubame Lab株式会社とは?

研究者を繰り返しの手作業から解放する技術として、注目を集める「ラボオートメーション」。Tsubame Lab株式会社は、その社会実装を目指す、東京科学大学発のロボット系ディープテック企業です。実験を自動化するロボットシステムと、クラウドラボ(実験を外部へ頼める仕組み)「Tsubame Cloud Lab」を、大学や企業の研究現場へ提供しています。

キーワード「ラボオートメーション」

「ラボオートメーション」は、実験の作業をロボットや測定機器に任せ、人手を介さずに進める仕組みです。特徴は、手順が記録として残り、同じ条件の実験を何度でも繰り返せる点です。創薬や素材開発の現場では、夜間や休日も止めずに装置を動かし続けられます。

市場課題|研究時間を奪う実験の手作業

現状の実験現場の課題|繰り返しの手作業が研究時間を圧迫し、装置ごとに制御が分かれて自動化が広がりにくい

手作業に追われ考える時間が減る

研究者の一日の大半を占めているのは、試薬の計量や培地(細胞や菌を育てる栄養)の作成、ピペットによる分注(決めた量ずつ容器へ分け入れる作業)といった手作業の繰り返しです。問いの設定や判断に充てられる時間は、全体の10%以下ともいわれています。人手の工程が残る限り、研究の速度は頭打ちになりかねません。

装置ごとに違う制御が導入の壁

複数のメーカーの機器が混在する研究室では、自動化の導入が負担になります。装置ごとに制御の仕様が異なるため、複数メーカーの機器をまとめて動かすには個別の作り込みが必要だといわれています。自動化は一台の装置や一つの実験台にとどまり、研究室全体へは広がりにくいのが現状です。

他にも、装置を動かすプログラミングの知識、実験ごとの制御プログラムの書き換え、記憶に頼りやすい暗黙知(言葉にしにくい経験の勘)の手技、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 分注試薬や試料を、決められた量ずつ複数の容器へ分けて入れる操作を指す。結果の精度が分けた量のばらつきに左右されるため、生化学の実験で最も頻度が高く、熟練を要する工程の一つである。

Tsubame Labの強み|「ラボオートメーション」を開発

Tsubame Labが「ラボオートメーション」を開発|日本語の指示で手順を組む制御基盤と、ロボットが試薬棚まで運ぶ搬送の自動化

日本語の指示で手順を組む

従来の実験自動化では、装置ごとに命令の書き方が異なり、手順の変更や機器の入れ替えのたびに制御プログラムの組み直しになりやすいといわれています。

制御基盤(複数の装置を一つのソフトで動かす土台)「Tsubame Studio」は、メーカーの違うロボットアームや測定機器を動かします。研究者は日本語の文章で指示するか、動作を表すブロック(画面上で並べる命令の部品)を組みます。ピペッティング(液体を吸って移す操作)や撹拌、液体抽出、物質合成、DLS(散乱光のゆらぎで粒子の大きさを測る)は用意済みの部品です。装置が増えても操作画面とデータ形式は変わらず、手順を使い回せます。オープンソース(無償公開して誰でも改変できる方式)で公開されています。

ロボットが試薬棚まで運ぶ

これまでの自動化は一つの実験台の中で完結する例が多く、試薬棚や測定機器との間の運搬は人が担っていました。

同社が組むのは、運搬もロボットが担うシステムです。役割ごとに分けた装置(モジュール)が室内で連携します。プラスミド構築(目的の遺伝子を入れた環状DNA作り)では、搬送、秤量(重さを量る)、コロニーの採取(増えた菌の塊を取る)、分注、キャップ開閉、培養、遠心の7モジュールです。搬送役は、ロボットアームを載せたAMR(自分で走る運搬ロボット)が務めます。分注に特化した卓上型は、協働ロボット(人のそばで安全に動く)と電動ピペットで、50〜1000マイクロリットル(100万分の1リットル)を扱います。

FrontJournalの解説
  • Tsubame Studioロボットアームや測定機器を一つの画面から動かすための制御ソフトウェアを指す。装置ごとに異なる命令の書き方を内部で吸収するため、利用者は日本語の指示かブロックの並べ替えで手順を組める。

ラボオートメーションの未来|オンラインで実験を頼む

オンラインのラボオートメーションが変える未来|研究室ごとに自動化を設計する段階から、クラウドから実験を頼める仕組み、研究室全体の自動化へ

研究室ごとの自動化が実機で動く

すでに動いているのは、同社が研究室ごとに設計する自動化です。同社は実験の工程を聞き取り、モジュールの組み合わせと制御の中身を一件ずつ作り込みます。2026年9月の分析・科学機器の展示会「JASIS 2026」では、プラスミド構築の工程を一連でつないだ実機を動かしました。制御基盤「Tsubame Studio」も、誰でも使える形で公開されています。

2027年のクラウドラボ稼働へ

同社は、オンラインから実験を頼める「Tsubame Cloud Lab」を構築しています。研究者が自分の研究室から手順を送ると、施設のロボットが実行し、測定したデータが返る仕組みで、2027年の本格稼働が目標です。顧客の施設に置いた自動化システムを同社の基盤へつなぐ形も用意し、この構成を分散型クラウドラボネットワーク(複数の施設をつないで実験を請け負う仕組み)としています。実験装置はAPI(外部のソフトから機器を操作する接続口)で共通化し、AIエージェント(人の指示を受けて自ら作業するプログラム)からも実験を動かせるようにする計画です。

研究室全体の自動化を目指す

同社が目指すのは、「研究室という空間そのものを一つの自動化システムとして扱うこと」です。実験台ごとに閉じていた自動化を、部屋の単位へ広げる構想です。運搬や待ち時間まで計画に含めれば、実験は夜間や休日も止まりません。研究者が本質的な問いと判断に集中できる環境を、同社は基盤として整えていきます。

会社概要|Tsubame Labの事業と設立背景

博士課程の学生が創業

創業の中心となったのは、東京科学大学の総合研究科でロボット科学を専攻する博士課程の学生で、代表取締役CEOを務める楢崎鴻司朗氏です。設立は2025年4月です。同氏は生命科学とロボティクスを専門とし、7年前からラボオートメーションに取り組んできたといわれています。本社は東京都文京区湯島に置き、東京科学大学の湯島・駿河台キャンパス内にウェットラボ(試薬や細胞を実際に扱う実験室)、荒川区南千住に研究開発拠点を構えています。

認定ベンチャー第15号に選出

同社は2025年度に、東京科学大学の認定ベンチャー第15号(大学が公式に認める制度)に選ばれています。2026年2月に北海道で開かれた「Lean Launchpad Japan 全国大会2026」(起業家育成プログラムの全国大会)では、全国から集まったチームの中でグランプリを獲得しました。主催者の一社であるStartup Brain株式会社から、100万円の出資を受ける権利も得ています。2026年には、研究自動化の会議「LADEC2026」と、分析・科学機器の展示会「JASIS 2026」へ出展しました。

自動化の受託と基盤の提供

同社の事業は、顧客の環境に合わせた実験自動化システムの受託開発、クラウドラボ「Tsubame Cloud Lab」の構築、制御基盤「Tsubame Studio」の提供等です。分注に特化した卓上型のシステムは、台数を限った参考価格として税込160万円、納期は3か月程度です。設置から運用までを一つの基盤で扱うため、実験の手順や結果は記録として残ります。

会社情報

会社名Tsubame Lab株式会社(Tsubame Lab, Inc.)
所在地東京都文京区湯島3-4-6 ハイシティ湯島3F(湯島ウェットラボ:東京科学大学 湯島・駿河台キャンパス内/白鬚西R&Dセンター:東京都荒川区南千住8-5-7)
設立2025年4月
代表代表取締役CEO 楢崎 鴻司朗
事業カスタム・ラボオートメーション(受託開発)/クラウドラボ/制御基盤「Tsubame Studio」の提供等。実験自動化システムは搬送・秤量・コロニーの採取・分注・キャップ開閉・培養・遠心の各モジュールで構成。分注特化の卓上型システムは4軸(腕の関節が4つ)の協働ロボット(人のそばで安全に動かせるロボット)+電動ピペット、50〜1000マイクロリットル、台数を限った参考価格 税込160万円、納期3か月程度
技術領域ラボオートメーション、実験自動化システム、クラウドラボ、制御基盤ソフトウェア「Tsubame Studio」(オープンソースの利用条件 GNU AGPL-3.0)
連携東京科学大学(キャンパス内にウェットラボを設置)
採択東京科学大学 認定ベンチャー 第15号(2025年度称号授与)/Lean Launchpad Japan 全国大会2026(北海道・2026年2月)グランプリ
URLhttps://www.tsubamelab.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

実験の自動化と聞くと、大がかりな装置を並べた工場のような光景が浮かびます。しかしTsubame Labが取り組んでいるのは、研究者が日々向き合う計量や分注といった、地味で数の多い工程です。研究の速度を決めているのは、実はそうした工程の積み重ねです。現場を知る創業者ならではの視点だと感じます。

注目したいのは、制御基盤をオープンソースとして公開している点です。装置ごとに制御が分かれることが導入の壁になってきた分野で、共通の土台を外に開くという選択は、自社の製品を売ることだけを考えれば取りにくい判断です。機器のメーカーを問わずつながる基盤が育てば、恩恵は同社の顧客だけにとどまりません。

研究室が場所の制約から解き放たれたとき、日本の研究開発はどこまで速くなるのか。その答えを実地で確かめようとしている一社として、今後の展開を追いかけたいと思います。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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