株式会社Urthは建築士が設計するブラウザ型メタバースを提供する早稲田大学発の企業

株式会社Urth(アース)

Urth「ブラウザ型メタバース」を研究|研究領域=建築の設計データを・仮想空間に変換/強み=アプリを入れずに・ブラウザから入室/将来性=仮想空間の設計を・現実の建築へ

企業紹介|株式会社Urthとは?

アプリを入れずに、Webブラウザから企業の3D空間へ入れる仕組みとして、注目を集める「ブラウザ型メタバース」。株式会社Urthは、その社会実装を目指す、早稲田大学発の情報通信系ディープテック企業です。企業向けメタバース「metatell(メタテル)」を、採用やマーケティングに取り組む企業へ提供しています。

キーワード「ブラウザ型メタバース」

「ブラウザ型メタバース」は、パソコンやスマートフォンのWebブラウザで開ける3Dの仮想空間です。特徴は、専用アプリの導入や会員登録をしなくても、URLから入室できる点にあります。企業の採用説明会やショールームで、来訪者がアバターで空間を歩きながら説明を聞けます。

市場課題|メタバースの企業活用は制作費と入室の手間が壁になる

現状の企業向けメタバースの課題|現状は、高い制作費と入室の手間で活用が進みにくい|独自の空間の制作に・多額の費用がかかる/アプリの導入が・来訪者の負担になる

空間制作が高額で導入が困難

企業が独自のメタバース空間を構築するには、数千万円規模の開発費がかかるといわれています。国内のメタバース市場が2028年度に約1兆8,700億円への拡大が見込まれる中でも、この制作費が企業の導入の壁です。このままでは、予算の限られた企業ほど活用を見送る恐れがあります。

アプリの導入が来訪者の負担に

メタバースの利用には、専用アプリのダウンロードや会員登録、VRゴーグル(頭にかぶって立体映像を見る装置)の用意が求められる場合があります。採用説明会の来訪者にとって、こうした準備は参加前の手間となり、入室までに離脱する人が出るおそれがある点が難点です。このままでは、企業が届けたい相手に空間を見てもらいにくい状態が続きかねません。

他にも、来訪者の行動を数値で把握する難しさ、機密を含む施設を仮想空間で公開する際の情報管理、サービス終了に伴う空間の移し替え、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • メタバースインターネット上に作られた3Dの仮想空間と、そこで人がアバターを通じて交流する仕組みを指す。離れた場所にいる人どうしが同じ空間に集まれるため、会議や展示、採用説明会の場として企業の活用が広がっている。

Urthの強み|「ブラウザ型メタバース」を開発

Urthが「ブラウザ型メタバース」を開発|今後は、低コストで手軽な導入が可能に|設計データを変換し・制作費を低減/ブラウザから・URLで直接入室

建築士の設計で空間制作費を低減

従来のメタバース空間の制作では、案件ごとに3Dモデルを一から作り込むため、工程と費用が膨らみやすい手法です。

同社は、建築士が設計で使うBIM(建物の形と部材の情報を持つ3Dモデル)やCAD(コンピュータで図面を描く設計ツール)のデータを、メタバース用に変換するシステムを開発しました。空間の設計は、依頼主の要望を聞き取った建築士やデザイナーが担う仕組みです。建築士は普段の設計データを空間の土台に使えるため、3Dモデルを一から作り込む工程を減らせます。ゲームや映像向けの3D制作の専門人員をそろえなくても空間を作れるため、企業は大規模な開発体制を組まずに、制作費を抑えて独自の空間を持てるようになります。

ブラウザからURLで直接入室

アプリ型のメタバースは、端末ごとに専用アプリを入れる必要があり、来訪者が入室するまでに複数の手順を踏みます。

「metatell」は、Webブラウザで動くメタバースの一つで、会員登録やアプリのダウンロードをせずに、URLから入室できます。パソコンやスマートフォン、タブレットに加え、「Meta Quest」(米Meta社のVRゴーグル)にも対応した設計です。交流手段は音声会話とチャットで、企業の担当者は管理画面から入室者の限定や来訪者の行動の数値分析を行えます。案内をURL1本で送れるため、来訪者はアプリの準備に手間取らず、そのまま空間に入れるようになります。

FrontJournalの解説
  • BIM建物を3Dモデルで表し、壁や柱、設備といった部材ごとに寸法や材料の情報を持たせる設計手法、およびそのモデルを指す。形と情報を一体で扱えるため、設計の成果物を別の用途へ再利用しやすい。

ブラウザ型メタバースの未来|採用活動から現実の建築への応用

企業向けのブラウザ型メタバースが変える未来|採用説明会で使われ、建築への展開を目指す|採用説明会で現場を・仮想空間で公開/AIとデータ移行で・構築を効率化/空間設計の仕組みを・現実の建築へ展開

採用説明会で現場を仮想公開

「metatell」は、企業の採用活動で、実際には立ち入りにくい現場を仮想空間に再現する用途に使われています。イベント制作会社のシミズオクトは、イベント設営の現場を空間上に再現し、学生に業務内容を伝える場として活用しています(2025年3月時点)。設営の工程は、養生(床や壁を傷から守るために覆う作業)から順に、アニメーションで見せています。入室者を限定できる管理画面の機能を使えば、機密情報を含む工場のように一般公開が難しい施設でも、説明会の参加者が中を歩いて見学できるようになります。

AIと移行ツールで構築を効率化

同社は、LLM(大量の文章を学習し、文章を生成するAI)をはじめとするAI技術を使い、利用者が自ら空間を組み立てる作業や機能の追加を支援するシステムを開発中です。2025年3月には、他社のメタバース「DOOR」のサポート終了に合わせ、3Dデータや画像データを自動で移せる移行ツールを開発しました。移行はワンクリックで行えます。空間の構築や移し替えにかかる手間を減らし、企業が空間を使い続けやすくする取り組みです。

現実の建築への展開を目指す

Urthは、仮想空間で培った空間設計の仕組みを、現実の建築にも広げることを目指しています。代表の田中大貴氏は、「2035年に火星に家を建てる時に自社の技術が使われている」状態を、事業の目安に掲げています。同社は仮想空間での取り組みとして、スペースシードホールディングスの依頼を受け、月面での酒蔵建設を想定したメタバース空間を構築しました。こうした取り組みを通じて、Urthは建築士とITを結び、誰もが好きな空間を持てる社会を目指しています。

会社概要|Urthの事業内容と設立背景

早稲田大学の支援を受けて創業

株式会社Urthは、2020年1月に東京都新宿区で設立された早稲田大学発スタートアップです。創業の中心となったのは、早稲田大学大学院創造理工学研究科で建築を学んできた田中大貴氏です。2019年度の「早稲田大学GapFundProjects」(文部科学省の起業家育成事業による支援制度)で支援を受けて創業しました。本社は早稲田大学アントレプレナーシップセンター内にあり、田中氏は代表取締役CEOを務めながら、同研究科の博士後期課程で研究を続けています(2025年時点)。

製造業への導入と支援獲得

「metatell」は、ソマールやFUJI、酒井化学工業といった製造業の企業に導入されています。情報セキュリティ管理の国際規格「ISO/IEC 27001」の認証も取得済みです。2024年12月には、Google、Microsoft、AWS、Cloudflareのスタートアップ支援プログラムに選ばれ、計約62万ドル分のサーバー利用クレジットの支援を受けています。

累計約1億600万円を調達

2024年10月、同社はシードラウンド(製品を市場に定着させる前の、ごく初期の資金調達段階)の1回目として、Iceblue Fundなどからの出資と三井住友銀行などからの融資により、総額6,000万円を調達しました。調達した資金は、開発やマーケティング、人材採用、新規事業への投資に充てる計画です。2025年4月には同ラウンドの2回目で融資を含む総額3,100万円を調達し、2024年10月より前の調達も含めた累計の調達額は約1億600万円となりました(2025年4月時点)。

会社情報

会社名株式会社Urth
所在地東京都新宿区西早稲田1-22-3 早稲田大学アントレプレナーシップセンター
設立2020年1月20日
代表代表取締役CEO:田中大貴
資本金320,000円
調達2024年10月:シードラウンド 総額6,000万円(Iceblue Fund有限責任事業組合、90s1号投資事業有限責任組合ほか・三井住友銀行ほかの融資を含む)。2025年4月:シードラウンド 2nd close 総額3,100万円(コロプラネクスト、スペースシードホールディングス、合同会社NYKYほか・日本政策金融公庫の融資を含む)。累計約1億600万円(2025年4月時点)
事業企業向けメタバース「metatell」。建築・デザイン向け業務管理システム「7kake」
技術領域ブラウザ型メタバース。BIM・CADデータのメタバース用変換
連携スペースシードホールディングス(月面酒蔵メタバースプロジェクトの空間構築)
採択早稲田大学GapFundProjects(2019年度)。Google for Startups AI First、Microsoft for Startups、AWS Activate、Cloudflare for Startups(2024年12月)
URLhttps://u-rth.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

企業がメタバースを使うとき、最初の壁になるのは空間を作る費用と、来訪者を招き入れる手間です。Urthは、この2つの課題に建築とWebの両面から取り組んできた企業です。建築を学んだ創業者が、建築士の設計力を仮想空間の制作へ持ち込んだ点に、この会社の出発点があります。

注目したいのは、単なる3D空間の提供でなく、建築士を仮想空間の作り手として事業に取り込む仕組みを築こうとしている点です。設計データを生かせれば、建築士に新たな仕事の場が生まれる可能性があります。企業にとっても、採用説明会や商談の場を仮想空間に持ちやすくなります。

仮想空間で培った空間設計の仕組みを、現実の建築へどう広げていくのかに期待しています。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら

この企業について、
もっと深く知りたい方へ

パートナーシップ・お問い合わせはこちらから。