Ussio Lab.株式会社は、海底から湧き出す海水を平釜で炊き、アミノ酸を残した塩を作る早稲田大学発の企業

Ussio Lab.株式会社(ウッシオラボ)

Ussio Lab.「海底湧水塩」を研究|研究領域=海底から湧く海水を平釜で塩にする/強み=加熱の温度と時間を決める/将来性=発酵食品や飲料へ用途を広げる

企業紹介|Ussio Lab.株式会社とは?

残すアミノ酸の量を数値で定めた製法から生まれる、注目の「海底湧水塩」。Ussio Lab.株式会社は、その社会実装を目指す、早稲田大学発の食品系ディープテック企業です。海底湧水塩「うっしお」と、その塩で豆を焙煎した「塩焙煎コーヒー」を、通信販売と飲食店へ提供しています。

キーワード「海底湧水塩」

「海底湧水塩」は、海底から湧き出す海水を原料に、アミノ酸を残して炊き上げた塩です。特徴は、残すアミノ酸の量と、うま味側と甘み側の割合を、数値で定めている点にあります。家庭の食卓や飲食店で、一般には取り除く苦汁(にがり)を残した塩として使えます。

市場課題|塩に残りにくい海のアミノ酸

現状の製塩の課題|煮詰める熱でアミノ酸が減る/うま味の側に偏りがち

加熱でアミノ酸が減りやすい

海水にはアミノ酸が溶けていますが、その量はごくわずかです。塩を作る工程では海水を煮詰めて水分を飛ばすため、熱の影響を受けやすい成分は加熱と長い工程のあいだに失われやすくなります。うま味や甘みのもとになる成分を残した塩を安定して作ることは、容易ではありません。

甘みの成分が生かされにくい

海水由来の塩で注目されやすいのは、うま味に関わる成分です。アスパラギン酸やグルタミン酸はうま味に、アラニンやグリシンは甘みに関わりますが、両方を決まった割合で含む塩は多くないといわれています。原料や製法の違いが味にどう表れるかを、成分の量で確かめる手掛かりも限られます。

他にも、季節や場所で変わる沿岸の海水の成分、薪と釜を使う製法にかかる人手と時間、海へ栄養を届ける森林の手入れの不足、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • アミノ酸たんぱく質を構成する成分で、種類ごとにうま味や甘みなどの味に関わる。海水に溶けている量はごくわずかで、加熱や工程の長さによって失われやすい。1マイクログラムは100万分の1グラムを指す。

Ussio Lab.の強み|「海底湧水塩」を研究

Ussio Lab.が「海底湧水塩」を研究|加熱の温度と時間を決めてアミノ酸を残す/うま味と甘みのアミノ酸を比で設計する

加熱の温度と時間で残す

海水を煮詰める製法では、加熱の温度と時間は、成分の残り方と結びつけて示されてきませんでした。

同社が採るのは、海底湧海水平釜へ流し込み、加熱して水分を蒸発させる製法です。基となる特許(特許第7458621号)が示すのは、釜を150〜250度に加熱し、取水から15時間以内に結晶を析出させる条件です。取水から結晶化までの時間を短く保つことが、海塩100グラムあたり20マイクログラム以上のアミノ酸を残す条件として示されています。牛島では地下5〜10メートルから汲み上げた海水を使い、薪の平釜で約10時間炊き上げます。一般には取り除く苦汁(にがり)を残しているため、マグネシウムなども含む塩です。

うま味と甘みを比で設計

塩の成分は含まれる量で語られることが多く、成分どうしの割合を設計の指標に置く見方は一般的ではありませんでした。

基となる特許(特許第7424612号)が示すのは、2つのアミノ酸群の割合を定めた海塩です。アラニンやグリシンなど甘みに関わる群と、アスパラギン酸やグルタミン酸などうま味に関わる群を分けて考えます。甘み側に対するうま味側の重量比は0.1から1の範囲です。うま味側は海塩100グラムあたり5〜500マイクログラム、甘み側は10〜1,000マイクログラムという範囲が示されています。原料の海底湧海水は、森に降った雨が地下水となり、地下で海水と混ざって海底から湧き出す水といわれています。

FrontJournalの解説
  • 平釜底が平たい大きな釜を指す。海水を張って下から加熱し、水分を蒸発させて塩の結晶を得る。加熱の温度と時間を調整しやすく、成分を残したまま炊き上げる製法に用いられる。

海底湧水塩の未来|食品と森林への広がり

森が育む海底湧水塩が変える未来|その塩でコーヒーの生豆を焙煎する/みそやしょうゆへの応用を研究/森を整えて海の栄養を守る

コーヒーの焙煎に応用

同社は、海底湧水塩を使ってコーヒーの生豆を焙煎する「塩焙煎」に取り組んでいます。最初の工程は、生豆を海底湧海水で研ぎ、虫食いなどの欠点豆を手作業で取り除くことです。次にその豆を、湧海水をまとわせたまま天日で干し、その日の気象条件に合わせて水分量を整えます。最後に牛島の塩を使い、豆の水分量に応じて焙煎の時間を変えるのが仕上げの工程です。

発酵食品への応用を研究

アミノ酸を含む塩は、発酵食品への応用が研究されています。ソルト・サイエンス研究財団の2023年度助成では、「アミノ酸ハイブリッド型食塩が発酵食品成分組成・生物活性プロファイルに与える影響に関する研究」が採択されました。研究代表者は、同社の技術の基となる研究を進めてきた早稲田大学中尾洋一教授です。みそやしょうゆのように塩を使う食品で、仕上がりの成分がどう変わるかは、今後の成果が待たれます。

森と海の循環を守ることを目指す

同社は、原料となる海底湧海水を守るため、森を整えることを目指しています。人が入らなくなった森林では土壌が固くなり、雨水が地下へ浸透しにくくなるといわれています。地下水が海へ運ぶ栄養が減れば、海底湧海水の質にも影響しかねません。同社はこの森林の手入れを「0次産業」と呼び、製塩の前段に位置づけています。

会社概要|Ussio Lab.の事業と設立背景

早稲田大学の研究から創業

Ussio Lab.株式会社は、2021年11月に東京都新宿区西早稲田で設立されました。代表取締役は重岡敬之氏で、山口県光市にもオフィスを置いています。技術の出発点は、早稲田大学のPoCファンドプログラム(研究成果が事業になりうるかを確かめる支援制度)に採択された課題「アミノ酸ハイブリッド型食塩の機能と用途開発の検証」です。この課題の研究代表者は、機能性食品化学を専門とする早稲田大学理工学術院の中尾洋一教授です。

大学が出願した特許が基盤

同社の製法は、学校法人早稲田大学が出願した2件の特許に基づきます。「アミノ酸含有海塩及びその製造方法」(特許第7424612号)は2024年1月に、「アミノ酸含有海塩におけるアミノ酸の減少を抑制する方法」(特許第7458621号)は同年4月に公報が発行されました。いずれも発明者に代表の重岡氏と中尾教授が名を連ねています。

直販と支援で事業を運営

同社は、自社の通信販売を軸に製品を届けています。2022年2月から3月にかけてクラウドファンディング(インターネットで支援を募る仕組み)を実施し、目標の30万円に対し、71人から38万6,000円の支援が集まりました。現在は海底湧水塩「うっしお」と塩焙煎コーヒーを販売し、コーヒーの生豆には、ラオス南部の自社農園自然栽培により育てたものを使います。

会社情報

会社名Ussio Lab.株式会社(ウッシオラボ)
所在地本店:東京都新宿区西早稲田一丁目22番3号。山口オフィス:山口県光市室積
設立2021年11月24日
代表代表取締役:重岡 敬之
事業海底湧水塩「うっしお」の製造・販売。塩焙煎コーヒーの製造・販売。ラオスでのコーヒー農園の運営
技術領域海底湧海水を原料とする平釜製塩。アミノ酸含有海塩に関する特許第7424612号および特許第7458621号(出願人は学校法人早稲田大学。発明者に代表取締役が参加)
採択早稲田大学PoCファンドプログラム「アミノ酸ハイブリッド型食塩の機能と用途開発の検証」(研究代表者:中尾洋一)
URLhttps://www.ussiolab.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

塩は、どの家庭の台所にもある身近な調味料です。その塩を、森に降った雨から数えて捉え直した点に、この会社の面白さがあります。海底から湧く海水という原料を選び、加熱の温度と時間まで条件を決めて結晶にする姿勢は、職人の勘を数値に置き換える試みといえます。

注目したいのは、単なるこだわりの製法ではなく、数値で再現できる形まで落とし込んで特許にしている点です。うま味と甘みに関わるアミノ酸を分けて考え、その重量比を定めるという発想は、味を語る言葉を設計の指標へ置き換える試みとして受け止められます。森林の手入れを製法の前段に置く「0次産業」という考え方も、原料の質を長く保つための現実的な備えです。

調味料の一粒から、森と海のつながりが見えてくる。そんな食卓が広がることを期待しています。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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