VETA株式会社は選ぶ理由を数値にするValue Elicitation法を研究する早稲田大学発の企業

VETA株式会社(ヴィータ)

VETA「Value Elicitation法」を研究。図では言い換えとして価値観の数値化を併記|研究領域=選択の積み重ねで重視度を推定/強み=重視度を回答者本人へ返す/将来性=選挙や自治体の調査へ応用

企業紹介|VETA株式会社とは?

選んだ理由を、選んだ本人にも分かる形で数値にする技術として、注目を集める「Value Elicitation法」。VETA株式会社は、その社会実装を目指す、早稲田大学発の社会科学系ディープテック企業です。調査分析アプリケーションの開発と、導入から分析までの伴走支援を、報道機関や自治体、企業などへ提供しています。

キーワード「Value Elicitation法」(バリュー・エリシテーション法)

「Value Elicitation法」は、条件の組み合わせを変えた仮想の選択肢から繰り返し選んでもらい、何を重視しているのかを数値にする調査分析手法です。特徴は、回答が終わった時点で、その人自身の重視度を計算して返せる点にあります。投票先や就職先のように、複数の条件を比べて決める場面で、判断の基準を可視化できます。

市場課題|選ぶ理由は数値になりにくい

現状の意識調査の課題|選ぶ理由は本人も説明し難い/調査結果は回答者に戻りにくい

選ぶ理由は本人も説明し難い

人が何を重視して選んだのかは、本人にも言葉で説明し難いものです。就職先や投票先の選択は、待遇や勤務地、政策の中身といった複数の条件を見比べたうえで決まるからです。理由を尋ねられた人は思い当たる項目を挙げるものの、実際の決め手とはずれが生じ得ます。

調査結果は回答者に戻りにくい

多くの調査では、集計した結果が答えた本人に戻りにくいままです。集計と分析は実施した側の担当者が行い、回答者が自分の判断の傾向を知る手立ては限られます。答える側には負担だけが残り、次の調査への協力を得にくくなります。

調査では、本音より建前が選ばれる偏りも指摘されます。他にも、五段階で尋ねる評点式の設問では回答に差が付きにくいこと、設計と解釈に専門知識を要するコンジョイント分析を扱いにくいこと、集めたデータを政策へ結び付ける手順が不足していること、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • コンジョイント分析商品や政策などの選択肢を、価格や性能といった条件の組み合わせとして示し、選ばれ方から各条件の影響度を推定する分析手法である。マーケティングの新製品開発で用いられてきた。

VETAの強み|「Value Elicitation法」を研究

VETAが「Value Elicitation法」を研究|選択の積み重ねで重視度を推定/重視度を回答者本人へ返す

選択の積み重ねで重視度を推定

従来の調査では、重視する条件を回答者へ直接尋ねる形式が中心でした。言葉にする作業が回答者に委ねられるため、実際の判断との差が残ります。

「Value Elicitation法」は、条件の組み合わせを変えた仮想の選択肢を示し、どちらを選ぶかを繰り返し尋ねる調査分析手法です。コンジョイント分析を、因果推論(原因と結果を統計的に切り分ける考え方)で設計し直しています。年収や勤務地、事業の内容といった条件を入れ替えた選択を積み重ねると、どの条件が選択を動かしたのかを数値で切り分けられます。就職価値観の調査では、初期配属が出身地以外の大都市から自身の出身地に変わることが、平均年収が約60万円上がるのと同等の魅力を持つと示されました。

重視度を回答者本人へ返す

従来のコンジョイント分析は、集団全体の傾向を推定する設計で、一人ひとりの結果をその場で計算する使い方は想定されていませんでした。

「Value Elicitation法」では、回答が終わった時点で、その人が何を重視したのかを計算し、その場で画面に返します。この計算を担うアルゴリズム特許を出願中です。投票先を選ぶ調査では、政策を組み合わせた仮想の政党から選ぶ操作を繰り返し、考えの近い政党とあわせて、重視した政策のスコアを示します。自分が重視した政策ほど強く反映して政党との近さを計算するため、どの政策が結論を動かしたのかまで分かる仕組みです。回答者は自分の判断の基準を数値で受け取り、次の選択に生かせます。

FrontJournalの解説
  • 重視度回答者が意思決定の際に、どの条件をどれだけ重んじたかを数値で表した指標である。選択の積み重ねから統計的に推定するため、条件ごとの影響の大きさを比較できる。

Value Elicitation法の未来|選挙や自治体の調査への応用

価値観を測るValue Elicitation法が変える未来|選挙の投票先選びで実用化/自治体の市民意識調査へ導入/暮らしの選択の支援を目指す

選挙の投票先選びで実用化

「Value Elicitation法」は、選挙の投票先を選ぶボートマッチ(考えの近い政党を示すしくみ)で、すでに実用化されています。日本経済新聞社が2025年7月の参議院選挙に向けて公開したボートマッチに、同社のアルゴリズムが採用されました。2026年の衆議院選挙に向けたボートマッチでも、同じ手法が使われています。利用者は、考えの近い政党とあわせて、自分が重視する政策を数値で確かめられます。

自治体の市民意識調査へ導入

市民の意識調査へ「Value Elicitation法」を持ち込む取り組みも始まりました。静岡市と早稲田大学は2026年3月26日に共同研究の協定を結び、市が実施する市民意識調査への導入を進めています。「Value Elicitation法」を自治体の市民意識調査へ導入する例は、まだ限られています。従来の調査では読み取りにくかった市民の価値観を数値で示し、限られた予算の中での政策の優先順位づけに使えるようにする狙いです。

暮らしの選択の支援を目指す

同社が目指すのは、「暮らしの中で迷いやすい選択を、価値観の数値化によって支えること」です。就職先の選び方では、出身地への配属や社会貢献の姿勢が評価に与える影響が、すでに数値で示されています。不動産や人材の仲介サービスも、条件の優先順位を数値で示すことで紹介の精度を高められる分野です。証拠に基づく政策立案(EBPM)のように、公共の意思決定を支える分野への適用も進めています。

会社概要|VETA株式会社の設立背景と事業

早稲田大学の研究から事業化

VETA株式会社は、2025年4月30日に東京都新宿区で設立されました。創業の中心となったのは、早稲田大学政治経済学術院の山本鉄平教授と日野愛郎教授、そして同大学出身でデータサイエンティストの原健人氏です。両教授が積み重ねてきたコンジョイント分析の研究成果を、早稲田大学TLO(技術移転機関)の支援で知的財産にしたうえで、大学からのライセンスを前提に起業しました。代表取締役CEOには原氏が就任し、山本教授が取締役CSO(最高科学責任者)、日野教授が取締役CKO(最高知識責任者)を務めています。

報道機関や自治体との連携が拡大

同社は、報道機関や自治体との連携を広げています。日本経済新聞社へは、2025年の参議院選挙と2026年の衆議院選挙のボートマッチにアルゴリズムを提供しました。静岡市とは、早稲田大学を交えた共同研究として市民意識調査への適用を進めています。早稲田大学のキャリアセンターとは、学生の就職価値観を調べる共同調査を実施しました。いずれも、実際の意思決定の場で現場のデータを集める取り組みです。

約2億円の創業投資で設立

同社は、設立にあたって早稲田大学ベンチャーズから約2億円の創業投資を受けました(2025年6月時点)。創業投資は、事業の土台を作る時期に充てられる、ごく初期の資金調達にあたります。早稲田大学ベンチャーズは、同大学の研究成果を事業へつなぐ役割を担う大学系ベンチャーキャピタルです。同社は現在、利用者自身が「Value Elicitation法」を用いた調査を作成して実施できるアプリケーションの開発を進めています。

会社情報

会社名VETA株式会社(VETA Corp.)
所在地東京都新宿区西早稲田1-22-3
設立2025年4月30日
代表代表取締役CEO:原 健人。取締役CSO:山本 鉄平(早稲田大学 政治経済学術院 教授)。取締役CKO:日野 愛郎(早稲田大学 政治経済学術院 教授)
調達早稲田大学ベンチャーズから約2億円の創業投資(2025年6月)
事業Value Elicitation法に基づく調査分析・マッチングアプリケーションの開発と提供。調査の設計から分析までの伴走支援とコンサルティング
技術領域コンジョイント分析を発展させたValue Elicitation法。回答者へ重視度を直接返すアルゴリズム(特許出願中)
連携日本経済新聞社(参議院選挙2025・衆議院選挙2026のボートマッチ)。静岡市および早稲田大学(市民意識調査の共同研究・2026年3月)。早稲田大学キャリアセンター(学生の就職価値観調査)
URLhttps://www.veta.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

ディープテックという言葉は、材料や装置の開発と結び付けて語られてきました。VETAが事業の土台に据えたのは、政治学と統計学という社会科学の研究成果でした。人が何を重んじて選んだのかを、選択の積み重ねから統計的に取り出す考え方は、条件を並べて比べる場面であれば分野を問わずに使えます。

注目したいのは、単なる調査の高度化ではなく、結果を回答者本人へ返す設計になっている点です。自分が何を重視していたのかを数値で受け取れれば、選挙も就職も移住も、納得したうえで決められます。研究室の中で磨かれた手法が、生活者の手元まで届く形になっている点に、この会社らしさがあります。

価値観のずれから生まれる摩擦が、少しずつ和らいでいくことを期待しています。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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