株式会社watousはスマートフォンの映像から動作を数値にするマーカーレス動作解析を開発する広島大学発の企業

株式会社watous(ワトアス)

watous「マーカーレス動作解析」を研究|研究領域=体に何も付けず映像から骨格を推定/強み=スマホの撮影で関節角度を数値化/将来性=リハビリや労災予防に活用

企業紹介|株式会社watousとは?

スマートフォンで撮影した映像から、関節の角度や動きを数値にする技術として、注目を集める「マーカーレス動作解析」。株式会社watousは、その社会実装を目指す、広島大学発のAI系ディープテック企業です。映像から骨格と動きを推定する「AI動作解析ソリューション」を、リハビリや介護、物流・製造の現場に向けて提供しています。

キーワード「マーカーレス動作解析」

「マーカーレス動作解析」は、体にマーカー(位置を測るための目印)を付けずに、カメラの映像から人の骨格と動きを推定する解析手法です。特徴は、スマートフォンで撮影するだけで、関節の角度や左右差、動作の速さを数値にできる点にあります。リハビリの歩行訓練や倉庫での荷物の持ち上げを撮影し、記録して評価できます。

市場課題|体の動きを数値で測る手段が限られる

現状の姿勢評価の課題|腰を痛める姿勢を捉えにくい/目印を貼る計測は準備が煩雑

腰を痛める姿勢を捉えにくい

物流や製造、介護の現場では、荷物の持ち上げや前かがみ、体のひねりといった腰を痛める姿勢が繰り返されますが、その負担は目で見ても数値では捉えにくいものです。休業4日以上の職業性疾病のうち、約6割を腰痛が占めるとされています。負担の大きさが分からなければ、作業の見直しで腰の負担が減ったかの検証が難しくなります。

目印を貼る計測は準備が煩雑

精密な光学式モーションキャプチャ(体に貼った目印を複数のカメラで追う計測法)は、準備に手間と設備を要します。体の各部に反射マーカーを貼り、キャリブレーション(カメラ位置の校正)を済ませてから撮影します。機材も一般に高価で、計測できる場所は専用の環境に限られがちです。

他にも、目視による姿勢評価で生じやすい評価者ごとの差、熟練者の作業のコツを新人へ伝える難しさ、訓練の成果を患者や家族と共有する手間、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 光学式モーションキャプチャ体の関節などに反射する目印を貼り、周囲に並べた複数の赤外線カメラでその位置を撮影して、3次元の動きを求める計測法を指す。精度が高く、研究や医療の分野で使われている。

watousの強み|「マーカーレス動作解析」を開発

watousが「マーカーレス動作解析」を開発|関節の角度や左右差を数値化/スマホの撮影だけで骨格を推定

関節の角度や左右差を数値化

目で見て姿勢を確かめる方法では、関節の角度を数値で記録しにくく、評価する人によって判断が分かれやすくなります。

同社の「AI動作解析ソリューション」は、推定した骨格の動きを数値に変換します。解析の土台は、映像から関節点を割り出す姿勢推定の技術です。歩行や立ち上がり、階段昇降、荷物の持ち上げといった動作から、関節角度や左右差、動作速度の変化を自動で解析し、腰や肩に負担の大きい姿勢や体のひねりも可視化します。解析結果を記録として残せるため、作業を見直した前後で姿勢がどう変わったかを、客観的なデータで比べられるようになります。

スマホの撮影だけで骨格を推定

光学式の計測では、撮影の前に、体に目印を貼る作業が必要です。

同社のソリューションは、スマートフォン等で撮影した映像を入力にし、AIで骨格を推定します。撮影から可視化、分析までを一貫して扱い、動作のどこを直せばよいかという改善点まで示す仕組みです。計測はカメラに映るだけの非接触方式で、患者や作業者の体に専用スーツやマーカーを付ける必要がありません。そのため、リハビリや介護の現場から物流・製造の作業場まで、歩行や荷物の運搬といった動作を記録できるようになります。

FrontJournalの解説
  • 姿勢推定画像や映像に写った人物から、肩・肘・膝などの関節点の位置を割り出し、それらを結んで骨格の形として捉えるAI技術を指す。

マーカーレス動作解析の未来|医療から労災予防・スポーツへ

スマホで使えるマーカーレス動作解析が変える未来|リハビリの効果を数値で共有/熟練者の動作を安全教育に活用/スポーツ指導への展開を目指す

リハビリの効果を数値で共有

同社の解析は、リハビリの現場で訓練の効果を数値で示すことができます。対象は、歩行や立ち上がり、階段昇降、バランスといった日常の動作です。そのため、患者や家族に回復の経過を伝えやすくなります。介護の現場では、職種の異なるスタッフや家族との情報共有、ケア方針の合意形成にも使えます。

熟練者の動作を安全教育に活用

物流や製造の現場では、熟練者の理想フォームを標準モデルとして蓄積し、安全教育に活用できます。解析の対象は、荷物の持ち上げや運搬、ピッキング(倉庫で商品を棚から取り出す作業)、組立といった一連の作業です。動画とデータを組み合わせたOJT(職場で実務を通じて行う教育)に使えば、新人が早く作業に慣れる助けになります。姿勢の負担を示した教材も作れるため、けがなどの労働災害の削減への貢献が期待されます。

スポーツ指導への展開を目指す

同社は、スポーツの指導にも、この動作解析を広げることを目指しています。想定しているのは、カメラの映像から関節角度や重心移動、タイミングを自動で解析し、数値で本人に返す仕組みです。実現すれば、選手はスマートフォンやタブレットで撮影するだけで、自分の癖や再現性の低い動きを客観的に把握できるようになります。部活動やフィットネスジムからプロのチームまで、けがの予防と競技力の向上に向けたフォームの改善を支える考えです。

会社概要|watousの設立背景と事業

医療者と技術者が組む開発チーム

株式会社watousは、エンジニアに医師や医学生が加わる開発チームで、医療やアカデミアの現場と、製品開発・事業開発の現場をつなぐことを掲げています。同社は2023年3月に広島県東広島市で設立され、広島大学VBL(ベンチャービジネスラボラトリー)に拠点を置いています。経営陣は、代表の宮﨑雄大氏、取締役の田村恵大氏、共同創業者の山田和輝氏です。

大学発ベンチャー認定と助成金

同社は、2025年4月に広島大学発ベンチャーの認定を受けました。同年11月には、公益財団法人ひろしまベンチャー育成基金が主催する「第32回ひろしまベンチャー助成金」の贈呈先に選ばれ、50万円の助成を受けています。助成の対象となった題目は「AIを用いたマーカレス動作解析の社会実装」です。

医療向け試作と製品開発が柱

事業の柱は、医療向けのPoC(概念実証=アイデアを試作で確かめる工程)システム開発と、ヘルスケア製品の開発です。臨床や研究の仮説を整理して必要な機能に絞り込み、要件定義から試作、実証、次の段階の判断までを支援しています。これまでに、高齢者向けのVR旅行ソフト「KIZUNA VR」や、訪問看護のサマリ(利用者の状態をまとめた要約文)作成を補助する仕組み、研究用の画像位置記録ツールなどを手がけました。

会社情報

会社名株式会社watous(ワトアス)/watous Inc.
所在地広島県東広島市鏡山2丁目313 広島大学VBL
設立2023年3月24日
代表宮﨑 雄大。田村 恵大(取締役)。山田 和輝(共同創業者)
資本金100万円
事業医療向けPoCシステム開発。ヘルスケアプロダクト開発。AI動作解析ソリューション等
技術領域マーカーレス動作解析(映像からの骨格推定)。機械学習・AI。Web・モバイル。3D・VR
採択広島大学発ベンチャー認定(2025年4月)。第32回ひろしまベンチャー助成金(2025年11月)
URLhttps://watous.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

体の動きを精密に測る方法は、これまで専用の設備を備えた場所に限られがちでした。watousが取り組むのは、動作の記録と数値化を手元のスマートフォンで扱えるようにすることです。リハビリの現場や倉庫の作業場で動きを測れる点に、この技術の意味があります。

注目したいのは、医師や医学生が開発チームにいることです。現場で何を測れば役に立つのかを知る人が、仕組みを作る側に立っています。解析の結果が、現場の判断を支える道具として使われていくことが期待されます。

広島で生まれた動作解析が、治療や働く人の安全を支える場面へ広がっていくのか、今後も追っていきます。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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