① QuantumScape(スタンフォード大学発)― 燃えにくい「全固体電池」
| 大学・創業 | 米スタンフォード大の研究を基に2010年創業 |
| 分野 | 全固体電池(電池内部の液体を固体に置き換えた次世代電池) |
| 特徴 | 液漏れ・発火に強く高容量。VWと提携し、ドゥカティの電動バイクで実走デモに成功 |
電池の中の液体を、燃えにくい固体に変える
2010年、米スタンフォード大学のフリッツ・プリンツ教授らが創業した会社です。狙うのは全固体電池。いまの電池は、電気の素(イオン)を運ぶために燃えやすい液体(電解液)が入っています。QuantumScapeはこの液体をセラミック(陶器のような硬い無機材料)の固体に置き換えることで、発火リスクを抑えながら、より多くのエネルギーを詰め込もうとしています。
さらに同社は、負極(電気をためる側の電極)にあらかじめ材料を置かない「負極レス」という設計を業界で初めて採用しました。使う材料が減るためコストが下がり、製造工程も簡単になるといいます。エネルギー密度(同じ大きさにためられる電気の量)は844Wh/Lに達するとされ、一般的なリチウムイオン電池を上回る水準です。同じ大きさでより長く走れる、とイメージすると分かりやすいでしょう。
ドゥカティの電動バイクに積んで実際に走らせた
同社が最初の量産品とする「QSE-5」は、10%から80%まで約12分で充電でき、氷点下30度でも動く設計とされます。2025年9月には、独フォルクスワーゲン(VW)グループのバイクメーカー、ドゥカティの電動バイクに搭載され、ドイツの展示会IAAで実際に走るデモを公開しました。研究室の試作品が、初めて公道を走る乗り物として動いた瞬間です。
2026年、量産の試作ラインが動き出した
2026年2月には、量産をにらんだ試作ライン「Eagle(イーグル)」を稼働させました。提携先はVWグループの電池会社PowerCoで、これまでに2.6億ドルを超える投資が公表されています。基礎研究から実用化まで、長い時間と資金をかけて一歩ずつ進む――ディープテックらしい歩みです。

FrontJournalの解説
- 全固体電池電気の素(イオン)が通る道を、液体ではなく固体にした電池。燃えにくく長持ちしやすいとされ、各国が「EVの本命」と位置づける。日本ではトヨタなどが先行。
- 電解液いまの電池に入っている液体。イオンを運ぶ役割を担うが、発火リスクの一因にもなる。
- 負極レス(アノードフリー)負極にあらかじめ材料を置かない設計。材料が減りコストや製造の手間を抑えられるとされる。
- エネルギー密度同じ大きさ・重さにどれだけ電気をためられるかの指標。高いほど小型・長距離に有利。