【GAPファンド・北陸】TeSH発スタートアップの研究と事業
「GAPファンド」は、大学の研究成果が事業として成り立つかを、起業の前に検証するための資金です。北陸地域では、北陸3県の大学・高専が参加する「TeSH」がこの資金を運営しており、その採択者から医療機器、教育・福祉、工芸・アートの分野でスタートアップが生まれています。本記事では、このうち3社について採択時の研究テーマと現在の事業を紹介します。
「GAPファンド」は、大学の研究成果が事業として成り立つかを、起業の前に検証するための資金です。北陸地域では、北陸3県の大学・高専が参加する「TeSH」がこの資金を運営しており、その採択者から医療機器、教育・福祉、工芸・アートの分野でスタートアップが生まれています。本記事では、このうち3社について採択時の研究テーマと現在の事業を紹介します。
「GAPファンド」(ギャップファンド)の「GAP」は、研究成果と事業化の間にある隙間を指します。学術研究を支える「科研費」や、設立後の企業に投資する「VC」(ベンチャーキャピタル)とは異なり、GAPファンドは起業前の研究者や学生が行う試作や市場調査といった事業化の検証に充てられます。制度によっては、資金に加えて、経営人材とのマッチングやメンタリングなどの起業支援を受けることも可能です。
GAPファンドの仕組みや資金の使い道は、GAPファンドとは?研究を起業につなぐ資金の仕組みで詳しく紹介しています。
「TeSH」(Tech Startup HOKURIKU)は、「北陸先端科学技術大学院大学」と「金沢大学」を主幹機関とし、北陸3県の大学・高専が共同機関として参加するスタートアップ創出のプラットフォームです。2024年2月には、「科学技術振興機構」(JST)の「スタートアップ・エコシステム共創プログラム」に、全国9つのプラットフォームの一つとして採択されました。「TeSH GAPファンドプログラム」は、この事業の支援を受けて運営されています。
「TeSH GAPファンドプログラム」は、研究の進み具合に応じた2段階で構成されています。「ステップ1」は、基礎研究の成果をビジネスとして評価できる段階まで引き上げる応用研究の枠で、期間は1年です。令和8年度の公募によると、直接経費の上限はディープテック分野で500万円、社会的インパクト分野で200万円。「ステップ2」は概念実証(PoC)からスタートアップの組成までを支える枠で、ディープテック分野の教職員は最長3年で6,000万円まで申請でき、「事業化推進機関」との共同申請が必要です。
「ディープテック分野」は、医療・テック・環境などの技術分野ごとに申請を受け付けています。一方の「社会的インパクト分野」は、観光・交通・災害レジリエンス・芸術・教育など、地域や社会の課題の解決を目指す提案が対象です。応募できるのは参画機関の教職員と修士課程・博士課程の学生で、学生は担当教員との連名で申請します。
「TeSH」は、公式サイトの「TeSH発ベンチャー一覧」で、採択者から生まれたスタートアップを紹介しています。ここでは、このうち3社を医療機器・センサー、教育・福祉、工芸・アートの3分野に分けました。各社について、プロジェクトと採択枠を表で示し、採択時の研究内容と現在の事業を本文で説明します。
| 企業名 | 株式会社フロントセンシング |
|---|---|
| 分野 | センサー・医療機器 |
| プロジェクト | AIフロントセンシングビジネス↗ |
| 所属・大学 | 富山県立大学 |
| 採択枠 | ステップ1・令和6年度 |
「フロントセンシング」は、「ピエゾ抵抗型MEMS力センサ」を使った計測機器を研究・開発しています。「MEMS」とは、半導体の微細加工技術で製造する小さな機械部品のこと。代表の下山勲氏は、東京大学の教授を経て、2019年から2025年3月まで「富山県立大学」の学長を務めました。在任中の令和6年度に「AIフロントセンシングビジネス」の課題で「ステップ1」に採択され、同社によると最終報告会の審査で1位の評価を受けています。2025年4月に設立された同社は、大学での研究成果とノウハウを生かし、力・圧力・振動・粘度などを測るアプリケーションの開発支援や、MEMSの研究開発のコンサルティングを手がけています。直近の目標は、血糖値を24時間連続して「非侵襲」で計測するデバイスの開発。5年後には、AIチップとMEMSセンサの一体化を目指しています。
| 企業名 | 株式会社みらいのでざいん |
|---|---|
| 分野 | 教育・福祉・AI |
| プロジェクト | 特別支援が必要な子どもと全ての関係者のためのスマートシステム↗ |
| 所属・大学 | 福井工業高等専門学校 |
| 採択枠 | ステップ1・令和6年度 |
「みらいのでざいん」は、AIを使って一人ひとりの特性に合った支援を届けるシステムを開発しています。代表取締役CEOの小越咲子氏は「福井工業高等専門学校」の教授で、2009年から発達障害児者の個別支援に関する研究を続けてきました。2020年には福井県内の10校・80名の児童生徒に支援システムを導入し、学校の現場で検証しています。この研究をもとに令和6年度の「ステップ1」に採択され、2026年1月に同社を設立しました。事業の柱は、AIとの対話で本人の特性を把握する個別支援機器と、学校・家庭・福祉施設をつなぐ基盤システム「FAMILY」の開発です。支援の情報を関係者の間で共有し、ライフステージを通じて切れ目のない支援を実現することを目指しています。
| 企業名 | KOGEI PLUS 合同会社 |
|---|---|
| 分野 | 工芸・アート |
| プロジェクト | ~工芸領域横断型イノベーションによる海外富裕層市場の開拓~KANABI KOGEI +↗ |
| 所属・大学 | 金沢美術工芸大学 |
| 採択枠 | ステップ1・令和7年度 |
「KOGEI PLUS」は、工芸の複数の領域を組み合わせた付加価値の高いアート作品を制作しています。採択された課題「KANABI KOGEI +」は、「金沢美術工芸大学」の共通工房の技術専門員で、作家としても活動する15名が協働する研究課題です。この課題は、海外の富裕層向けアートビジネスの事業化を目標に掲げ、令和7年度の「ステップ1」に「地域・その他」の区分で採択されました。2026年4月に設立された同社は、「金沢美術工芸大学」発ベンチャーの第1号です。現在は素材研究から制作までを横断的に手がけ、コミッションワーク(依頼を受けて制作する作品)、空間演出、ワークショップ、作家の制作支援などを展開しています。
「TeSH GAPファンドプログラム」からは、医療機器のようなディープテックに加え、教育・福祉や工芸・アートの分野でも北陸発のスタートアップが生まれています。血糖値を非侵襲で測るデバイスが実用化すれば、糖尿病などで毎日数値を確かめる人の負担が軽くなります。特別な支援が必要な子どもは、学校・家庭・福祉施設が情報を共有することで、成長に合わせた支援を受け続けやすくなります。北陸の工芸も、作家と技術者の協働によって海外の市場へ届く機会が増えることが期待されます。北陸の大学・高専で事業化を目指す研究者は、所属機関の窓口で「TeSH GAPファンドプログラム」の公募時期を確認してください。
出典:TeSH発ベンチャー一覧/TeSHとは/TeSH GAPファンドプログラム/R6年度ステップ1採択者/R7年度ステップ1採択者/ISHIKAWA Interdisciplinary Fes. 2026 開催報告/金沢美術工芸大学Visit・意見交換会/フロントセンシング/みらいのでざいん/みらいのでざいん 採択実績/KOGEI PLUS
ディープテックを、ビジネスパーソンの視点でわかりやすく紹介するメディアです。
本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。
この企業の方へ
内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。