アヘッド・バイオコンピューティング「IT創薬」を研究|分子模型から計算機チップへ矢印が伸びるイラスト

アヘッド・バイオコンピューティング株式会社

アヘッド・バイオコンピューティング「IT創薬」を研究|研究領域=計算で新薬の・候補を絞り込む/強み=共通部分の計算を・使い回して削減/将来性=量子アニーリングで・10億化合物級へ

企業紹介|アヘッド・バイオコンピューティング株式会社とは?

新薬の候補物質を、コンピュータで絞り込む技術として、注目を集める「IT創薬」。アヘッド・バイオコンピューティング株式会社は、その社会実装を目指す、東京科学大学発の計算科学系ディープテック企業です。創薬支援の計算サービスやソフトウェアの受託開発を、創薬の研究現場へ提供しています。

キーワード「IT創薬」

「IT創薬」は、コンピュータによる計算で、薬の候補になる化合物を探す手法です。特徴は、膨大な化合物のなかから、標的タンパク質(病気に関わる分子)に結合しそうなものを、実験の前に絞り込める点にあります。製薬の研究現場で、実験で試す化合物の数を減らし、探索の手間を抑えられます。

市場課題|化合物の一覧が巨大化し、薬の候補探しの計算が追いつきにくい

現状のIT創薬の課題|現状は、化合物が増え、全件を調べきれない|化合物が増え・計算が膨大に/10億化合物級は・従来の計算で難しい

ライブラリが巨大化し計算が膨大

創薬で参照できる化合物のライブラリ(化合物の一覧)は、数百万から数億件規模へ増えています。標的タンパク質との結合を調べるドッキング計算(結合の仕方をコンピュータ上で再現する計算)を全件に行うのは、現実的ではありません。このままでは、候補探索の期間と計算コストが膨らみ、創薬の初期段階が長引きかねません。

10億化合物級は計算が難しい

ライブラリの大規模化は続き、10億化合物級を対象とした効率的なバーチャルスクリーニングが求められています。ドッキング計算を化合物ごとに行う従来の方法では、この規模は計算コストの面から実施が難しい状況でした。計算の制約で探索できる範囲が狭まれば、有望な化合物を見逃しかねません。

他にも、化合物の形の変わりやすさ(柔軟性)を計算に含める難しさ、AIによる分子設計を創薬研究へ適用する際の壁、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • バーチャルスクリーニングコンピュータ上で、大量の化合物から標的タンパク質に結合する薬の候補を選び出す手法を指す。実験で全化合物を試す前に絞り込むことで、探索の時間と費用を抑える。

アヘッド・バイオコンピューティングの強み|「IT創薬」を研究

アヘッド・バイオコンピューティングが「IT創薬」を研究|現在は、計算技術で候補の絞り込みを提供|共通部分を・使い回して削減/量子向け定式化で・大規模化へ

共通部分の使い回しで計算削減

従来のバーチャルスクリーニングは、化合物ごとにドッキング計算を行うため、化合物が増えるほど計算量が増えます。

同社が活用する「Spresso」は、ドッキング計算の前段で、化合物を部分構造(フラグメント)に分割し、多くの化合物に共通する部分の計算結果を使い回す手法です。評価が必要な部分構造の種類は化合物の数より少ないため、事前選別(ドッキングの前に不要な化合物を除く工程)の計算量が大きく減ります。ドッキング計算にかける化合物を少ない計算時間で絞り込めるので、創薬の初期段階で、有望な候補の探索を速く進められます。

量子向け定式化で大規模化へ

従来のドッキング計算は、化合物が増えるほど必要な計算も増え、10億化合物級では計算コストが大きくなります。

同社は、タンパク質と化合物の結合を探すドッキング問題を、量子アニーリング(組合せ最適化問題を量子の性質で解く方式)で解けるように、数式へ定式化(QUBO形式)する手法を提案しました。化合物の形の変わりやすさまで含めて定式化した点が特徴です。動作確認には、東芝デジタルソリューションズの「SQBM+」(量子の考え方を取り入れ、従来型計算機で動く最適化ソリューション)を使い、実際の標的と化合物で行いました。計算を大規模化できれば、新たなドッキング手法として、結合の探索を速く進められる可能性があります。

FrontJournalの解説
  • 量子アニーリング多数の選択肢のなかから、条件に最も合う組み合わせを探す問題を、量子の性質を使って解く計算方式を指す。創薬では、化合物の結合の仕方の探索などへの応用が研究されている。

IT創薬の未来|標的探索から多様な薬の種類へ、10億化合物級の探索へ

創薬の計算技術が変える未来|標的探索から、多様な薬と10億化合物級へ|標的探索と細菌叢・解析にも適用/低分子から抗体まで・探索技術を開発/10億化合物級の・探索を目指す

標的探索と細菌叢解析にも適用

標的の探索や細菌叢(細菌の集まり)の解析にも、同社の技術が使われています。「MEGADOCK」(タンパク質同士の結合を予測するソフトウェア)は、数百万件規模の網羅的な予測に使われ、創薬の標的を探す手がかりです。「GHOSTZ」(配列の似た部分を探すソフトウェア)は、メタゲノム解析(細菌の遺伝情報を調べる解析)向けです。その検索速度は、メタゲノムデータでの測定で、BLASTX(従来の検索ソフト)の約185〜261倍とされています。

多様な薬の種類へ探索を広げる

低分子・ペプチド・抗体といった創薬モダリティ(薬の種類)を問わず、同社は薬剤候補を速く探す技術の開発に取り組んでいます。2025年10月には東芝デジタルソリューションズと戦略提携契約を結びました。東芝デジタルソリューションズの量子インスパイアード最適化ソリューション「SQBM+」を、同社が候補探索に生かす取り組みです。提携の目的は、探索技術の高度化と創薬プロセスの効率化です。

10億化合物級の探索を目指す

同社は、量子アニーリングを使い、10億化合物級のバーチャルスクリーニングを実現する計算基盤の開発を目指しています。同社は、2026年7月にNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の事業で実施予定先に採択され、東京科学大学とこのテーマに取り組みます。従来は難しかった規模の探索を可能にする基盤の開発と、創薬への有効性の実証評価です。同社は、創薬研究の効率化と新たな医薬品開発の加速への貢献を掲げています。

会社概要|東京科学大学の計算科学の研究から、2018年に設立された創薬計算企業

東京科学大学の研究から事業化

アヘッド・バイオコンピューティング株式会社は、2018年12月に設立されました。同社の源流は、東京科学大学(設立時は東京工業大学)で長年開発されてきた、バイオインフォマティクス(生命情報科学)や高性能計算の技術です。同社は、同大学が認定するベンチャー企業です。2022年9月には、東京工業大学からMEGADOCKとGHOSTZのライセンスの譲渡を受けています。2025年12月には、大上雅史氏が代表取締役社長、秋山泰氏が代表取締役CTOに就任しました。

採択と提携で量子技術を創薬へ

同社は、NEDOの事業採択と東芝デジタルソリューションズとの提携を軸に、量子技術を使った創薬計算を進めています。2023年6月にNEDOの「量子・AIハイブリッド技術のサイバー・フィジカル開発事業」に採択され、2024年9月には本格研究フェーズの実施予定先に選ばれました。2025年10月には東芝デジタルソリューションズと戦略提携契約を結び、2026年7月にはNEDOのポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業の実施予定先に採択されています。

受託開発で創薬の計算を支援

同社の事業は、創薬支援やゲノム解析の計算サービス、ソフトウェアの受託開発、研究開発コンサルティングなど、複数に分かれます。受託開発の例は、化合物の物性や活性のデータベース、ペプチド分子の設計支援システム、実験条件から実験計画を支援するAIシステムなどです。計算機システムの設計・販売では、AlphaFold2や分子動力学シミュレーションを動かすGPUサーバーなどの提案と構築を行っています。

会社情報

会社名アヘッド・バイオコンピューティング株式会社(Ahead Biocomputing, Co. Ltd.)
所在地神奈川県川崎市川崎区駅前本町11-2 川崎フロンティアビル4階
設立2018年12月
代表代表取締役社長 大上雅史(東京科学大学 情報理工学院 准教授)。代表取締役CTO 秋山泰(東京科学大学 情報理工学院 教授)
資本金3,000万円(資本準備金を含む)
事業創薬支援の計算サービス(IT創薬)。タンパク質間相互作用の予測。大規模ゲノム解析。ソフトウェアの受託開発。計算機システムの設計・販売。研究開発コンサルティング
技術領域バーチャルスクリーニング。タンパク質間相互作用予測。配列相同性検索。量子アニーリングを使った創薬計算
連携東芝デジタルソリューションズ(IT創薬事業の戦略提携。2025年10月)。メスキュージェナシス(ペプチド創薬の協業に関する基本合意書。2022年11月)
採択NEDO「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」(2026年7月)。NEDO「量子・AIハイブリッド技術のサイバー・フィジカル開発事業」(2023年6月)。川崎市「Kawasaki Deep Tech Accelerator」(2020年度の支援対象者)
URLhttps://ahead-biocomputing.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

新薬の候補を探す作業の入口は、実験の前に、計算機の上で大きく絞り込める時代になりつつあります。アヘッド・バイオコンピューティングは、化合物を部分構造に分けて計算を使い回す技術や、タンパク質同士の結合を網羅的に予測する技術を、創薬の現場へ届けています。いずれも、大学で培われた計算の技術が土台です。

アヘッド・バイオコンピューティングの「GHOSTZ」は、細菌の遺伝情報を調べるメタゲノム解析にも使われています。細菌叢を扱う企業は他にもあり、メタジェンセラピューティクス株式会社は、腸内細菌叢移植という医療技術の開発に取り組んでいます。薬を探す計算と、細菌叢を調べる計算は、ともに生命の複雑なデータを読み解く手段です。

量子アニーリングを使った計算基盤の開発が進み、10億化合物級の探索が可能になる日を、楽しみに待ちたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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