ANAX Optics「光学設計ソフト」を開発|レンズの一覧を表示した画面とパソコンに向かう人のイラスト

ANAX Optics株式会社(エーナックスオプティクス)

ANAX Optics「光学設計ソフト」を開発|研究領域=レンズや鏡の配置を・設計するソフト/強み=少ない知識で設計・既存設備で研磨/将来性=光学機器の開発が・進めやすくなる

企業紹介|ANAX Optics株式会社とは?

レンズなどの光学部品の設計を効率化する技術として、注目を集める「光学設計ソフト」。ANAX Optics株式会社は、その社会実装を目指す、京都大学発の光学系ディープテック企業です。光学設計ソフト「Anax Hyperion」と研磨加工用の「AnaxCAM」を開発し、スイスのPanDao GmbHの見積もりソフト「PanDao」を日本で取り扱っています。

キーワード「光学設計ソフト」

「光学設計ソフト」は、レンズや鏡の形と配置をパソコン上で組み立て、光の進み方を計算して性能を確かめるソフトウェアです。特徴は、試作の前に、光の集まり方などを画面上で確認できる点にあります。カメラやセンサー、顕微鏡といった光学機器の開発現場で、設計の検討に使えます。

市場課題|光学部品の開発は設計の知識と研磨の安定が壁になる

現状の光学設計の課題|現状は、設計に知識が要り研磨の精度も安定しにくい|設計に光学の・知識が要る/研磨の仕上がりが・安定しにくい

設計に光学の知識が要る

従来の光学設計ソフトは、使いこなすのに光学の知識と経験が求められ、設計できる人が限られがちです。性能を確かめるには、レンズの配置と材料を選んだうえで、光線追跡(光の進む経路を計算する方法)の結果を読み解く必要があるためです。専門家が少ない現場では、試作に進む前に光学系を検討しにくくなります。

研磨の仕上がりが安定しにくい

超精密研磨は、仕上がりの精度をそろえにくい工程です。工具の形状と、加工中に部品が変形することが誤差につながり、その誤差を補正しながら削る必要があるためです。精度がそろわないと、削り直しが増え、製造が長期化しかねません。

他にも、自由曲面(球面でない自由な形の面)のレンズやマイクロレンズアレイ(小さなレンズを多数並べた部品)といった複雑な形状の設計、設計段階では見えにくい製造の工程と費用、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 光線追跡光源から出た光を1本ずつ追い、レンズや鏡での屈折・反射を順に計算して、進む経路を求める方法を指す。光学設計ソフトの基本の計算で、像の位置や光の集まり方を確かめるのに使われる。

ANAX Opticsの強み|「光学設計ソフト」を開発

ANAX Opticsが「光学設計ソフト」を開発|現在は、設計と研磨のソフトを提供|少ない知識でも・設計できる/既存設備で・超精密に研磨

少ない知識でも設計できる

従来の光学設計では、設計者が経験に基づいてレンズの選定と配置の調整を繰り返し、性能を確かめます。

同社の「Anax Hyperion」は、光学系(レンズや鏡を組み合わせた全体)の設計とシミュレーション(計算機上での動作の再現)を、少ないボタンの画面で行えるソフトです。600種類超のレンズと、1,500種類超のレンズ材料のカタログから部品を選ぶ方式です。AIモジュールは、焦点距離・開口数(レンズが光を集められる角度の広さ)・視野を指定すると、光学配置を提案します。光学の専門家でなくても、試作の前に光学系の性能を確認できるようになることを目指しています。

既存設備で超精密に研磨

従来の超精密研磨は、工具の形状や部品の変形による誤差を、加工しながら補正する作業が中心です。

同社の「AnaxCAM」は、既存のマシニングセンタ(自動で切削する工作機械)や多関節ロボットを使い、時間制御型(工具の送り速度で、場所ごとに削る量を変える方式)の超精密研磨を行うためのCAM(加工機を動かすデータを作るソフト)です。AIが材料の種類や表面の状態から工具と加工条件を選びます。測定データを基に、工具の形状や部品の変形による誤差を補正できます。ファナックなどの3〜5軸の数値制御の工作機械と産業用ロボットに対応済みです。専用機を新たに導入せずに、研磨の仕上がりを安定させることができます。

FrontJournalの解説
  • 時間制御型加工面に工具が当たる時間や送り速度を場所ごとに変え、削る量を調整する研磨方式を指す。光学部品の形状の誤差を補正する場面で使われる。

光学設計ソフトの未来|設計の自動化から新用途の開発を目指す

光学設計ソフトが変える未来|設計の自動化から新用途の開発を目指す|レンズアレイを・自動で設計/NEDO助成で・光デバイスを開発/産学連携で・新用途を目指す

レンズアレイの設計を自動化

「Anax Hyperion」は、レンズアレイ(小さなレンズを多数並べた部品)のうち、複雑な形状のものの設計を自動化しています。設計方式には幾何学型とトポロジカル型があり、幾何学型は、区画ごとに光の入出力を指定すると、曲面の形状を1回の操作で求めます。トポロジカル型は、画像で指定した照明パターンに合わせ、区画の配置と曲面の形状を自動で計算する方式です。利用例には、非接触温度計などの設計があります。

生体医療の光デバイスを開発

ライトフィールド技術(三次元の空間で光の分布を制御する技術)を使った生体医療向けデバイスの開発に、同社は取り組んでいます。複雑な形状の光学素子を自動で設計し、用途に合わせた光の分布を作れるとされています。ライトフィールド技術の応用分野は、イメージングや量子コンピューティング、バイオフォトニクス(光を生体の観察や操作に使う分野)などです。研究発表では、光で微小な粒子を捕まえて動かす光学ピンセットを扱っています。

産学連携で新用途の開発を目指す

同社は、大学や産業界と協力し、フォトニクス(光を扱う技術分野)の新しい応用を開発する意向です。設計は同社開発の「Anax Hyperion」、研磨加工は「AnaxCAM」、製造工程の見積もりは日本で取り扱う「PanDao」が担います。同社のソフトで設計した部品の試作と量産を速める提携先は、複数の企業や精密機器の販売会社です。提携で試作と量産まで進められるようになれば、光学機器の開発を進めやすくなります。

会社概要|京都大学発で慶應義塾大学が支援する光学系企業

京都大学発で2022年に設立

ANAX Optics株式会社は、2022年3月に設立された京都大学のスピンオフ(大学の研究成果を基に設立された企業)です。現在は慶應義塾大学の支援を受けています。代表取締役の桐野宙治氏は、超精密加工を専門とする工学博士です。超精密部品を手がける中小企業で、研究開発を担当する経営に20年以上携わった経験を持ちます。共同創業者で最高技術責任者のAnthony Beaucamp氏は、慶應義塾大学で光学の設計と製造を研究しています。

助成と展示会・ピッチ

ANAX Opticsは、2024年6月に光学分野の展示会SPIEへ出展し、同年8月にNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のSBIR(スタートアップなどの研究開発を支援する制度)助成2,000万円を受けました。2025年2月には、国際コンテスト「Extreme Tech Challenge」の日本大会で、決勝に進む10社に選ばれ、同年4月には展示会OPIEにも出展しました。同年12月には、代表の桐野氏が「Nikkei The Pitch」に参加したことを公表し、2026年3月には日経のウェブサイトでも紹介されています。

PanDaoは3つの形態で提供

同社は、日本で取り扱う見積もりソフト「PanDao」を、3つの形態で提供しています。全社ライセンスは、一定数の見積もり依頼を含むパッケージを購入し、社内で並行して使う形態です。個人ライセンスは、依頼数に上限がなく、他の利用者へは譲渡できません。「設計から製造サービス」は、NDA(秘密保持契約)の下でレンズの仕様を同社へ送ると、製造費が最小になるよう、製造しやすさを解析して返す形態です。

会社情報

会社名ANAX Optics株式会社(ANAX Optics Inc.)
設立2022年3月
代表代表取締役の桐野 宙治。共同創業者で最高技術責任者のAnthony Beaucamp
資本金1,200万円
事業光学設計ソフト「Anax Hyperion」。研磨加工用のCAMソフト「AnaxCAM」。製造工程と費用の見積もりソフト「PanDao」の日本での取り扱い(開発元はスイスのPanDao GmbH)
技術領域光線追跡とAIによる光学系の自動設計。自由曲面とマイクロレンズアレイ(MLA)の設計。研磨加工の誤差補正
連携京都大学(スピンオフ元)。慶應義塾大学(支援)。PanDao GmbH(日本での代理)
採択NEDO SBIR助成(2024年8月・2,000万円)。「Extreme Tech Challenge」日本大会 決勝進出(2025年2月)
URLhttps://anax.jp/ja/home-jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

光学設計は、光学の専門家が専用のソフトで進める作業という前提で語られることの多い分野です。そのなかでANAX Opticsは、少ない知識でも使うことを目指す設計ソフトと、既存設備で超精密な研磨を行うための加工ソフトを開発し、製造費を見積もるスイス製のソフトも日本で取り扱っています。印象に残ったのは、設計から研磨加工、製造費の見積もりまで、工程ごとのソフトを提供している点です。

設計ソフトの提供にとどまらず、設計から加工までのソフトをそろえる姿勢は、光学部品を使う機器の開発の進め方を変える可能性があります。応用分野は、イメージングから生体医療までと幅広いものです。光を制御する技術が広く使われる日を、期待を込めて見守りたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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