BRIファーマ株式会社は認知症治療薬と認知症リスクの血液検査を開発する東北大学発の企業

BRIファーマ株式会社(ビーアールアイファーマ)

BRIファーマ「認知症治療薬」を研究|研究領域=変性タンパク質を分解する候補薬/強み=候補薬SAK3が分解の仕組みを強化/将来性=血液でリスクを早期に把握

企業紹介|BRIファーマ株式会社とは?

脳にたまった変性タンパク質(形が崩れたタンパク質)を取り除き、病気の進行を抑える薬として研究が進む「認知症治療薬」。BRIファーマ株式会社は、その社会実装を目指す、東北大学発のバイオ・ヘルスケア系ディープテック企業です。候補薬SAK3」の研究と、血液で認知症のリスクを調べる検査技術の開発を進めています。

キーワード「認知症治療薬」

「認知症治療薬」は、記憶や判断の力が低下していく認知症に対して、症状を和らげたり進行を遅らせたりする薬です。これまで多く使われてきたのは、脳の神経伝達物質が分解されるのを抑え、症状を和らげる薬でした。近年は、病気の原因とされるタンパク質そのものに働きかけ、進行を抑える薬の研究が広がっています。

市場課題|変性タンパク質が脳の神経細胞を減らす

現状の認知症の課題|変性タンパク質が神経細胞を減らす/発症前の変化に気づきにくい傾向

変性タンパク質で神経細胞が減少

アルツハイマー病やレビー小体型認知症の原因は、変性タンパク質が脳にたまり、神経細胞を死滅させることにあるとされています。たまるタンパク質は病気で異なり、アルツハイマー病ではアミロイドベータやタウ(いずれも脳にたまる物質)、レビー小体型認知症ではシヌクレイン(神経細胞内で凝集するタンパク質)が代表です。失われる神経細胞が増えるほど、記憶や判断力が低下します。

発症前の変化に気づきにくい

アルツハイマー病では、症状が出るよりも15〜20年前からアミロイドベータがたまり始めるといわれています。脳のタンパク質を調べるには、アミロイドPET(薬剤を注射して脳を撮影する検査)などの画像検査が用いられます。症状が出る前に変化に気づくのは難しく、治療や生活習慣の見直しの時期を逃しかねません。

他にも、失われた神経細胞が戻りにくい点、介護の負担、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 変性タンパク質本来の立体構造が崩れ、正しく働かなくなったタンパク質である。互いにくっついて凝集体と呼ばれる塊をつくりやすく、神経細胞の中にたまると細胞の働きを損ない、細胞死を引き起こす原因となる。

BRIファーマの強み|「認知症治療薬」を研究

BRIファーマが「認知症治療薬」を研究|候補薬SAK3で変性タンパク質を分解/血液で発症前のリスクを評価

SAK3で変性タンパク質を分解

抗体医薬(特定の物質だけに結合する抗体を使った薬)は、狙いを定めた1種類のタンパク質に結合して働く薬で、高価になりやすいといわれています。

「SAK3」は、神経細胞の分解の仕組みを強めて変性タンパク質を取り除く低分子化合物(分子の小さな化合物)です。SAK3がT型カルシウムチャネル(細胞にカルシウムを入れる通り道)を活性化すると、CaMKII(記憶の形成に欠かせない酵素)が活性化し、プロテアソーム(不要なタンパク質の分解装置)の働きが高まります。シヌクレインなどの分解が進み、レビー小体型認知症のモデルマウスでは病気の進行が止まりました。複数の病型を1つの薬で治療できる可能性があり、抗体医薬より安価な選択肢になると期待されています。

血液で発症前のリスクを評価

脳の画像検査は大型装置を使うため、症状の軽い段階で広く受けるには不向きです。

同社は、採血した血液から認知症のリスクを調べる「認知症リスク血液検査」を開発しています。認知症の原因タンパク質は発症のおよそ20年前から脳にたまり始めるとされ、この検査の狙いは発症前の段階でのリスク把握です。調べるのは血液なので、大型装置のある施設に出向かなくても、身近なクリニックでの採血で検査を受けられます。症状が出る前の段階で状態を把握できれば、生活習慣の見直しや治療の検討に、余裕をもって早く取りかかることができます。

FrontJournalの解説
  • プロテアソーム細胞の中で不要になったタンパク質や変性したタンパク質を見分け、小さな断片に分解する筒状の装置である。細胞内の掃除役にあたり、働きが落ちると変性タンパク質がたまりやすくなる。

認知症治療薬の未来|発症前から防ぐ医療へ

進行を抑える認知症治療薬が変える未来|クリニックでリスク検査を提供/臨床試験で人での安全性を確認へ/検査と治療薬の実用化を目指す

クリニックでリスク検査を提供

認知症リスク血液検査は、クリニック向けに提供されています。検査は医療機関での採血で行われ、脳の画像検査のような大型装置を必要としません。自宅で使える自己採血できる検査キットと検査方法は確立しており、キットを配送・回収する仕組みづくりが課題です。医療機関に出向かなくても検査を受けられるようになれば、リスクを知る機会はさらに広がります。

臨床試験で安全性の確認へ

同社は2024年12月の報道時点で、2026年にも初期の臨床試験を始める方針を示していました。対象に想定するのは、アルツハイマー病とパーキンソン病、レビー小体型認知症です。初期の臨床試験では、少人数の参加者で薬の安全性や体内での動きを確かめます。動物実験の段階から、人を対象とする段階へ進む計画です。

検査と治療薬の実用化を目指す

同社が目指すのは、2030年代までに、認知障害のある患者が治療薬を手に取れる環境を整えることです。原因タンパク質は腸を介して脳にたまるという説があり、同社は、こうした病気を対象に治療薬の開発を進めています。SAK3は、変性タンパク質が原因とされるハンチントン病や前頭側頭葉変性症などへの応用も期待される化合物です。血液検査でリスクを早くつかみ、治療薬で進行を抑える流れが整えば、認知症は、症状が出る前から備えられる病気に近づきます。

会社概要|BRIファーマの事業内容と設立背景

東北大学の創薬研究から設立

BRIファーマは、2021年5月に設立されました。母体となったのは、東北大学大学院薬学研究科の福永浩司名誉教授らによる脳機能改善薬の研究です。SAK3は、福永名誉教授と川畑伊知郎特任准教授が開発した化合物で、2017年に認知機能を改善する作用が報告されました。同社は、この研究成果を治療薬と検査として社会で使える形にすることを目的としています。

公的研究費で研究を推進

SAK3の研究は、AMED(日本医療研究開発機構)の橋渡し研究加速ネットワークプログラムによる助成を受けて進められてきました。研究成果は、東北大学大学院薬学研究科の先進脳創薬講座から発表されています。2021年には、SAK3が変性タンパク質の分解を促す仕組みをまとめた論文が、学術誌「International Journal of Molecular Sciences」に掲載されました。2023年には、SAK3による認知症治療薬の開発を解説した福永名誉教授の論文が、「日本薬理学雑誌」の特集に掲載されています。

本店を鹿児島県霧島市へ移転

同社は設立時に宮城県仙台市に本店を置き、2025年11月に鹿児島県霧島市へ移しました。移転後の本店は、鹿児島県霧島市隼人町見次53番地1にあります。

会社情報

会社名BRIファーマ株式会社(ビーアールアイファーマ)
所在地鹿児島県霧島市隼人町見次53番地1
設立2021年5月
事業認知症治療薬の候補「SAK3」の研究開発。認知症リスク血液検査の開発と提供
技術領域T型カルシウムチャネルとプロテアソームの活性化による変性タンパク質の分解。血液による認知症リスクの評価
連携東北大学大学院薬学研究科(福永 浩司 名誉教授らの研究成果をもとに設立)
採択AMED 橋渡し研究加速ネットワークプログラム(東北大学での研究として)
URLhttps://bri-pharma.jp

編集後記|FrontJournal編集部より

認知症の薬の研究は、特定のタンパク質を狙い撃ちにする方向へ進んできました。BRIファーマが選んだのは、神経細胞がもともと備える分解の仕組みを強め、たまったタンパク質をまとめて分解するという道です。1つの化合物で複数の病型に向き合える可能性がある点に、この研究の奥行きを感じます。

注目したいのは、治療薬と血液検査を一体で考えている点です。リスクを早く知る手段と、進行を抑える手段がそろえば、認知症との向き合い方は変わっていきます。身近なクリニックでの採血が、家族と長く穏やかに暮らすための入口になる日を期待しています。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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