セレイドセラピューティクス「造血幹細胞の増幅」を開発|細胞の入った培養容器と分子模型のイラスト

セレイドセラピューティクス株式会社

セレイドセラピューティクス「造血幹細胞の増幅」を開発|研究領域=造血幹細胞を・体外で増やす/強み=人工化合物で・品質をそろえる/将来性=米国で臨床試験を準備・遺伝子治療を目指す

企業紹介|セレイドセラピューティクス株式会社とは?

移植に必要な量の確保が難しい造血幹細胞を、体外で増やす「造血幹細胞の増幅」。セレイドセラピューティクス株式会社は、その社会実装を目指す、東京大学発の細胞治療系ディープテック企業です。さい帯血(臍帯と胎盤に含まれる血液)を原料とする小児向けの治療製品「CLD-001」を開発し、米国での臨床試験の開始に向けて準備を進めています。

キーワード「造血幹細胞の増幅」

「造血幹細胞の増幅」は、血液細胞のもとになる造血幹細胞を、治療に必要な量まで体外で増やす技術です。従来は採取できる細胞が少なく、特にさい帯血では移植に使える量が限られていました。同社は、生物由来の成分に頼らず、人工の化合物を使って増やす培養法を開発しています。

市場課題|造血幹細胞は必要な量の確保が難しい

現状の造血幹細胞移植の課題|現状は、細胞量が足りずドナー探しも難しい|さい帯血は・幹細胞が少ない/ドナー探しと・副作用が壁

さい帯血は幹細胞量が不足

末梢血(全身を流れる血液)やさい帯血の移植では、採取できる造血幹細胞が少量のため、生着率(移植した細胞が体内で根づく割合)や品質に課題が残ります。従来の体外で増やす方法でも、必要な量を確保しにくい状況です。このままでは、移植に使える細胞の量と質が、治療の制約になる可能性があります。

ドナー探しが難航し副作用も重い

骨髄移植では、ドナーのHLA(ヒト白血球抗原)の型が患者と合う必要があり、適合する人を見つけにくい点が壁です。患者側にも重い副作用であるGVHD(移植片対宿主病)の危険があります。ドナー探しの難しさと副作用の危険から、移植の実施には今も高いハードルが残ります。

他にも、遺伝子治療に使う造血幹細胞の確保、血液がん以外の難治性疾患への対応、細胞の品質の安定、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • HLA白血球などの細胞の表面にある、自己と他者を見分ける目印となるタンパク質の型である。型が合わない移植では、免疫が相手の細胞を攻撃しやすくなる。

セレイドセラピューティクスの強み|「造血幹細胞の増幅」を開発

セレイドセラピューティクスが「造血幹細胞の増幅」を開発|これまでに、人工化合物で増幅を実現|人工化合物で・幹細胞を増幅/適合度の高い・さい帯血を選ぶ

人工化合物で幹細胞を増幅

造血幹細胞の培養液には、血清アルブミン(血液中のタンパク質)やサイトカイン(細胞の増殖を促すタンパク質)といった生物由来の成分が使われ、成分のばらつきとコストが課題でした。

同社の技術は、生物由来の成分の代わりに人工の化合物を加えた培地(細胞を育てる液)で、造血幹細胞を増やす方法です。マウスの研究では、アルブミンの代わりにポリビニルアルコール(合成の水溶性高分子)を使い、増幅能力が高まることを実証しました。続いてヒトの造血幹細胞に合わせて培地を最適化し、増やしたヒト造血幹細胞が免疫不全マウスの体内で生着することも確認しています。材料が人工物のため成分のばらつきを抑えやすく、必要な量の造血幹細胞を、品質をそろえて低コストで用意できるようになる道が開かれました。

さい帯血を原料に型を選びやすい

骨髄移植は、HLAの型が合うドナーを見つける必要があり、骨髄ドナー不足も課題です。

同社が開発する「CLD-001」は、さい帯血バンクに保存された凍結さい帯血を原料にするため、ドナー問題への対応を目指す製品です。さい帯血は含まれる造血幹細胞が少ないものの、同社の増幅技術で細胞数の少なさを補えるため、より適切なHLA適合度のさい帯血を選ぶ柔軟性が高まります。対象は小児の重篤な血液・免疫疾患などで、同種造血幹細胞移植(他人の細胞を使う移植)後の全生存率(移植後に生存している患者の割合)の改善への貢献が目標です。患者に合う細胞を選びやすくなり、移植の選択肢が広がる可能性があります。

FrontJournalの解説
  • 培地細胞を体外で育てるために、栄養や増殖を促す成分を含ませた液体である。成分の種類や純度が、細胞の増え方や品質に影響する。

「造血幹細胞の増幅」の未来|小児の血液疾患から遺伝子治療まで

造血幹細胞の増幅が変える未来|米国の臨床試験から遺伝子治療へ|FDAとの・治験開始前相談/米国で臨床試験・の開始を目指す/遺伝子治療へ・応用を目指す

米国での臨床試験準備が進展

「CLD-001」は、米国での臨床試験の開始に向けた準備が進んでいます。動物モデルでは、有効性と安全性を支持する非臨床データが得られました。製造工程を確立し、米国の開発・製造受託機関(CDMO)への技術移管も完了しています。米国食品医薬品局(FDA)との治験開始前相談も終え、IND申請(臨床試験の開始申請)の準備を進めています。

米国で臨床試験の開始へ

次の段階は、米国でのIND申請と臨床試験の開始です。同社は、細胞製造、安全性評価、臨床開発、薬事対応を進めています。2026年8月には、AMED(日本医療研究開発機構)の創薬ベンチャーエコシステム強化事業で2回目の中間評価を通過し、支援の次の段階(ステージ3)へ移りました。米国で臨床PoC(人での有効性の確認)を取得できれば、小児の患者が、さい帯血を使う新しい移植を選べる可能性が広がります。

遺伝子治療への応用を目指す

同社は、増幅した造血幹細胞を、遺伝子治療など次世代の治療へ応用することを目指しています。遺伝子治療の一つであるex vivo法(体外で遺伝子導入する方法)では、患者の異常な造血幹細胞を体外に取り出し、遺伝子編集で正常化して戻します。同社は2025年8月に、AGC株式会社(総合素材メーカー)とiPS細胞由来の造血幹前駆細胞の増幅に関する共同研究契約を結びました。増幅技術の応用が広がれば、必要な量の造血幹細胞を確保しやすくなり、より多くの患者に細胞治療が届く可能性があります。

会社概要|2020年設立の東京大学発企業セレイドセラピューティクス

東京大学の研究を受け継ぎ設立

セレイドセラピューティクス株式会社は、2020年10月8日に設立されました。2019年に東京大学医科学研究所の山﨑聡(当時は特任准教授)と中内啓光(当時は特任教授)のチームが、マウスの造血幹細胞の体外増殖技術を開発し、同社はこの成果を受け継ぎ製品化を目指しています。代表取締役社長の荒川信行は、コンサルティング会社での勤務や大学発バイオベンチャーの立ち上げを経て、2020年に同社を共同創業しました。

採択・連携

2024年3月にNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のディープテック・スタートアップ支援事業に採択され、2026年1月には同事業のPCAフェーズにも採択されています。2024年9月にはAMEDの創薬ベンチャーエコシステム強化事業にも採択されました。研究面では、2023年8月に国立がん研究センター、2024年8月に東京医科歯科大学(現・東京科学大学)と共同研究契約を結んでいます。

シリーズBまで進んだ資金調達

2024年5月にはシリーズA(事業を軌道に乗せる段階の資金調達)で、累計約12億円相当の調達を完了しました。2025年10月のシリーズBの1st Closeでは、第三者割当増資5.55億円とAMEDの助成約5億円を合わせた約10.55億円を調達し、2026年10月の2nd Closeでは、塩野義製薬株式会社とTeikoku Ventures, Inc.(帝國製薬グループのCVC)を新たな投資家に迎えて4億円を調達しました。補助金等を含む累計調達額は、2026年10月時点で約34.2億円です。

会社情報

会社名セレイドセラピューティクス株式会社(Celaid Therapeutics Inc.)
所在地東京都文京区本郷7-3-1 東京大学南研究棟アントレプレナーラボ(本社)。兵庫県神戸市中央区港島南町1-6-5 国際医療開発センター5階(神戸オフィス)
設立2020年10月8日
代表荒川信行(代表取締役社長、共同創業者)。共同創業者に中内啓光、山﨑聡ら
調達補助金等を含む累計約34.2億円(2026年10月時点)。シリーズB 2nd Close 4億円(2026年10月、塩野義製薬、Teikoku Ventures)。シリーズB 1st Close 約10.55億円(2025年10月。第三者割当増資5.55億円とAMED助成約5億円の合計。出資はOUVC2号、UTEC5号、テクノサイエンス、つくばエクシード2号など)
事業ヒト造血幹細胞の増殖試薬、細胞の製造販売、ヒト造血幹細胞を活用した再生医療製品の開発、遺伝子治療などの次世代治療法の開発。開発品は造血幹細胞治療製品「CLD-001」
連携国立がん研究センター(2023年8月)、東京医科歯科大学(現・東京科学大学)(2024年8月)、AGC株式会社(2025年8月)、筑波大学(研究拠点)
採択AMED創薬ベンチャーエコシステム強化事業(令和6年度採択、2026年8月にステージ3へ移行)。NEDOディープテック・スタートアップ支援事業(2024年3月、PCAフェーズは2026年1月)
URLhttps://celaidtx.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

血液がんなどの治療で行われる造血幹細胞移植は、必要な量の細胞を確保できるかどうかが壁になってきました。同社は、その壁に細胞を増やすという入口から取り組んでいる会社です。人工の化合物で培養する方法は、成分のばらつきを抑えやすく、品質をそろえて量を確保するという産業の発想とも相性がよいと感じました。

細胞治療の領域では、株式会社カクサスバイオが、iPS細胞から角膜内皮代替細胞を製造する再生医療に取り組んでいます。細胞を製造する技術と、同社の細胞を増やす技術は、それぞれ別の医療の入口を広げる取り組みです。どちらも、大学の研究成果を産業へつなぐ試みといえます。

大学の基礎研究から生まれた培養法を土台にした「CLD-001」が、米国の臨床試験に近づいています。小児の患者に新しい移植の選択肢が届く日を、楽しみに待ちたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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