フリューゲルズ「モノリスカラム」を開発|一体型の精製カラムのイラスト

フリューゲルズ株式会社

フリューゲルズ「モノリスカラム」を開発|研究領域=一体型のシリカを・使う精製カラム/強み=繰り返し使えて・低圧でも分離できる/将来性=研究現場から・工業用途を目指す

企業紹介|フリューゲルズ株式会社とは?

混合物から目的の物質だけを取り出す精製で、溶媒と廃棄物を減らす技術として、注目を集める「モノリスカラム」。フリューゲルズ株式会社は、その社会実装を目指す、京都大学発の素材系ディープテック企業です。一体型のシリカでできた精製カラム「MONOLITH」シリーズを、有機合成などの研究現場へ提供しています。

キーワード「モノリスカラム」

「モノリスカラム」は、一体成形した多孔質のシリカ(二酸化ケイ素)を収めた、液体クロマトグラフィー(混合物を成分ごとに分ける方法)用のカラムです。特徴は、液の通り道が連続していて、低い圧力でも液を流せる点にあります。有機合成の研究室で、反応後の生成物を取り出す精製に使えます。

市場課題|精製で溶媒と廃棄物が増え、高い分離性能には高圧装置が要る

現状の精製カラムの課題|現状は、粒子充填カラムで高圧装置が必要に|精製で溶媒と・廃棄物が増える/高い分離性能は・高圧装置が前提

精製で溶媒と廃棄物が増える

液体クロマトグラフィーによる精製は、充填剤と溶媒を大量に消費します。医薬品やファインケミカル(高付加価値の化学品)の製造では、高純度化のためにこの精製が広く使われています。使い捨てのカラムも多く、溶媒と充填剤の大量消費が、CO2の排出や廃棄物につながり、環境負荷とコストが膨らみやすい状況です。

高い分離性能は高圧装置が前提

HPLC(高圧で液を送る高速液体クロマトグラフィー)は、高い分離性能が得られる反面、高圧装置が前提です。フラッシュ精製(中低圧でカラムに溶媒を通す精製)は、手軽な反面、粒子充填カラムでは分離性能が不足しやすくなります。カラムを大きくして補うと、溶媒も時間も廃棄物も増えやすい状況です。

他にも、溶けにくい有機EL(有機化合物を使う発光技術)材料の精製で起きる目詰まり、有害なハロゲン系溶媒(塩素などを含む溶媒)の扱い、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • フラッシュ精製カートリッジ状のカラムに溶媒を比較的低い圧力で通し、混合物を成分ごとに分ける精製法を指す。有機合成の研究室で広く使われ、HPLCより装置が簡便である。

フリューゲルズの強み|「モノリスカラム」を開発

フリューゲルズが「モノリスカラム」を開発|現在は、一体型のシリカで精製カラムを提供|再利用と小型化で・溶媒を削減/低圧でも高い・分離性能を発揮

再利用と小型化で溶媒を削減

粒子を詰めた従来のカラムは、分離性能を補うためにカラムを大きくすると、溶媒の使用量が増えやすくなります。

同社の「モノリスカラム」は、シリカを粒でなく一体の多孔質体として成形し、カラムの中に収めた構造です。フラッシュカラムは平均20回、ガラスカラムは平均50回以上、繰り返して使えます。試料を多く載せる高負荷でも精製でき、カラムを小型化できます。有機EL材料の合成工程の精製では、63マイクロメートルのシリカ粒子を詰めた従来のカラムに比べ、溶媒の使用量を60%、固体廃棄物を90%削減しながら、純度99%以上を達成しました。再利用で使い捨てカラムの買い替えが減り、小型化で溶媒と廃液の量も抑えられます。

低圧でも高い分離性能

高圧用の粒子充填カラムは、小さな粒子を密に詰めるため、送液に高圧ポンプと耐圧配管を備えた装置が要ります。

同社のモノリスカラムは、骨格が三次元につながり、その隙間でスルーポア(液が通り抜ける孔)が連続して流路になるため、液の流れる抵抗が小さく、低い圧力でも高い分離性能を発揮します。極低圧のシステムでも、高圧精製用の10マイクロメートル粒子を詰めたカラムに相当する分離性能が得られます。フラッシュカラムは、汎用の精製装置で使い捨てのカートリッジと付け替えて使える設計です。高圧用の専用装置が要らなくなり、従来の使い捨てカートリッジより高い分離性能が得られるようになります。

FrontJournalの解説
  • スルーポアモノリスの内部を貫通し、液の通り道となる大きな孔を指す。同社のカラムでは径が約5マイクロメートルで、孔が三次元につながるため、低い圧力でも液が流れやすい。

モノリスカラムの未来|研究現場から工業用途への広がり

モノリスカラムが変える未来|工業展開で、環境負荷の低減が期待される|研究現場で・購入できる/論文では・ハロゲンフリー精製/工業用途への・展開を目指す

研究現場で購入できる

「MONOLITH フラッシュカラム」と「MONOLITH ガラスカラム」は、研究現場で購入できます。フラッシュカラムは、負荷量(一度に精製できる試料の量)が4ミリグラムから33グラムまでの精製に対応します。ガラスカラムは、あらかじめ充填したプレパック式で、粒子を詰める作業も、粒子による汚れも要りません。使い方のコツは公式サイトで公開中です。

ハロゲンフリーで材料を精製

創業者らの論文では、有機EL材料のように溶媒に溶けにくい化合物の精製で、ハロゲンフリー(ハロゲンを含む溶媒を除いた)の手法が示されました。モノリスの網目状の骨格により、本来は固体が析出する高い濃度でも、過飽和状態(溶ける量を超えて溶けている状態)のまま溶液をカラムに通せます。ジクロロメタン(塩素を含む有機溶媒)などのハロゲン系溶媒なしで精製でき、この論文の条件では純度99.9%超、回収率61%以上でした。有害な溶媒を避けられるため、排出と処理の手間が減ります。

工業用途への展開を目指す

同社は、研究用のカラムに加え、工業用途への展開を目指しています。同社の製造技術を支える基盤の一つは、1000ミリリットルを超える大型のシリカモノリスを、ひび割れなく均質に製造する製法です。大型モノリスの異なる部位から切り出した小型カラムどうしでも、分離性能は同等でした。プラント(生産設備)規模の精製や高性能フィルターへの応用が進めば、医薬品や化学品の製造で出る溶媒と廃棄物が減り、環境への負担が下がることが期待されます。

会社概要|2025年に設立された京都大学発の素材ベンチャー

京都大学の研究から事業化

フリューゲルズ株式会社は、2025年9月に設立されました。創業者は、京都大学大学院理学研究科化学専攻の助教で取締役CTOの金森主祥氏と、同専攻の教務補佐・研究員(非常勤)で代表取締役CEOの宮本利一氏です。取締役CSO(最高科学責任者)は、京都大学化学研究所の梶弘典氏が務めています。所在地は、京都大学国際科学イノベーション棟西館のベンチャーインキュベーションセンター内にあります。

起業支援の採択と企業連携

設立前の2024年度に、創業者らのプロジェクトが起業支援プログラム「京都大学・三菱商事Startup Catapult」に採択されました。2024年には、宮本利一氏・金森主祥氏・梶弘典氏らが、モノリス型シリカゲルのカラムに関する論文を『ACS Sustainable Chemistry & Engineering』誌へ発表しています。同社は、株式会社ナード研究所との連携により、モノリスカラムを使った実サンプルの精製条件の検討を、有償サービスとして開始しています。

研究用カラムを販売する

同社の事業は、モノリスカラムの製造と、研究者向けの販売です。取り扱いは、アズワンのWebショップ「AXEL」、Amazon、販売代理店で、直接のお問い合わせにも対応しています。科研費など公的研究費での購入にも、見積書と請求書で対応しています。

会社情報

会社名フリューゲルズ株式会社(FLUGELZ Co., Ltd.)
所在地京都府京都市左京区吉田本町36番地1 京都大学国際科学イノベーション棟西館104号室
設立2025年9月
代表代表取締役CEO 宮本利一。取締役CSO 梶弘典。取締役CTO 金森主祥
事業シリカ材料・有機-無機ハイブリッドポリマー・高分子材料、触媒・分離材料・機能性材料などの研究開発、製造、販売。液体クロマトグラフィー用の精製カラム「MONOLITH」シリーズの製造・販売
技術領域モノリス型シリカゲルを使ったフラッシュカラムとガラスカラム
連携株式会社ナード研究所(実サンプルの精製条件検討の有償サービス)
採択京都大学・三菱商事Startup Catapult(2024年度に創業者のプロジェクトが採択)
URLhttps://flugelz.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

カラム精製は、有機合成の研究室で日常的に行われる作業です。フリューゲルズは、その作業の道具であるカラムの素材と構造そのものを、粒から一体型へ置き換えました。使い捨てが多かった消耗品を、繰り返し使えるカラムに置き換える発想だと感じます。

同じ京都大学発では、MOF(金属有機構造体)でガスを貯蔵する技術を開発しているAtomisが、穴の多い材料を扱っています。同社の一体型のシリカも、内部の孔の構造が性能を左右する材料です。素材の内部の穴をどう設計するかが、両社に共通する着眼点だと感じます。

実験室の小さなカラムから、工業用途の大型の精製へ。精製の現場で、溶媒と廃棄物が減っていく日を楽しみに待ちたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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