福田結晶技術研究所|東北大学発の「単結晶」でGaN基板と振動発電の材料を開発するディープテック企業

株式会社福田結晶技術研究所

福田結晶技術研究所「単結晶」を開発|研究領域=原子の並ぶ向きがそろった結晶/強み=半導体の基板と振動発電材料/将来性=半導体とセンサーを支える

企業紹介|福田結晶技術研究所とは?

原子が規則正しく並び、半導体の基板やセンサーの材料に使われる「単結晶」。株式会社福田結晶技術研究所は、その社会実装を目指す、東北大学発のナノテク・材料系ディープテック企業です。窒化ガリウム(GaN)半導体の基板になるSAM(スカンジウム・アルミニウム・マグネシウムの酸化物)や、振動発電に使う鉄ガリウム合金の結晶を、溶かした原料から引き上げて育てています。

キーワード「単結晶」

単結晶は、原子が結晶全体で一つの向きにそろって並んだ固体です。向きのそろわない小さな結晶が集まった多結晶と違って粒の境目がないため、電気や光、磁気の性質を結晶全体で均一に引き出せます。シリコンウエハーのように、半導体を作る土台として広く使われています。

市場課題|GaN基板の欠陥とセンサーの電池交換に課題

現状の基板とセンサーの課題|現状は、GaNの欠陥と電池交換の手間が負担に/原子間隔のずれがGaNに欠陥/センサーの電池交換が負担

原子間隔のずれがGaNに欠陥

GaNの膜を育てる土台として主に使われるサファイアやシリコンの基板は、GaNと原子の並ぶ間隔(格子定数)が10%以上ずれており、膜に多くの欠陥を生みます。GaNは、青色LEDやパワー半導体(電力の変換や制御に使う半導体)の材料です。GaNの欠陥が多いほど、LEDの効率や半導体レーザーの歩留まり、素子の寿命が下がりやすくなります。

センサーの電池交換が負担

設備や建物を見守る無線センサーでは、電池の交換が保守の負担になります。ボタン電池などの電池を電源とするセンサーは、寿命が来るたびに交換が必要です。このままでは、センサーの数を増やすほど交換作業が膨らみ、見守る範囲を広げにくくなる恐れがあります。

他にも、GaNそのもので作る基板が小型で高価なこと、複数の元素からなる新しい結晶の育てにくさ、大口径の結晶を育てる難しさ、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 格子定数結晶の中で原子が繰り返し並ぶ間隔を表す長さ。基板と、その上に成長させる膜とで格子定数が異なると、ずれを埋めきれずに膜の中に欠陥が生じる。

福田結晶技術研究所の強み|「単結晶」を開発

福田結晶技術研究所が「単結晶」を開発|現在は、単結晶の試作と製造技術を提供/SAM結晶で原子間隔を近づける/鉄ガリウムで振動から発電

SAM結晶で原子間隔を近づける

サファイアやシリコンの基板は、GaNとの格子定数のずれが大きいうえ、硬い結晶を切断・研磨して板に加工する必要があります。

同社が育てるのは、GaNとの格子定数のずれが約1.8%と小さいSAMの単結晶です。育成にはチョクラルスキー法(溶かした原料から結晶を回転させながら引き上げる方法)を使い、直径2インチでは転位(原子の並びの乱れ)がほとんどない結晶を作りました。SAMは特定の面で割れやすいため、切断や研磨をせずに割るだけで基板の面を作れます。GaNの欠陥と基板の加工の手間が減れば、LEDや半導体の効率と寿命が高まり、製造コストの低減につながります。

鉄ガリウムで振動から発電

振動発電に使う鉄ガリウム合金は、小さな結晶が集まった多結晶だと、単結晶に比べてさまざまな特性が劣るとされています。

同社は、この鉄ガリウム合金を、チョクラルスキー法で単結晶として引き上げることに成功しました。鉄ガリウム合金は磁歪材料(磁場をかけると形がわずかに伸び縮みする材料)の一つで、振動でゆがむと磁場が変化する逆磁歪という性質を持ちます。同社の単結晶は、磁場をかけたときの伸び縮みの割合(磁歪量)が300ppm(100万分の300)以上と大きく、耐久性と機械加工性も高い結晶です。機械や建物の振動を電気に変えられれば、無線センサーの電池交換を減らせるようになります。

FrontJournalの解説
  • 磁歪材料磁場をかけると形がわずかに伸び縮みし、逆に力を加えて形をゆがめると内部の磁気の状態が変わる材料。後者の性質を逆磁歪効果と呼び、振動から電気を取り出す振動発電に利用される。

未来|単結晶の基板と材料が次世代の半導体とセンサーを支える

原子の並びがそろう単結晶が変える未来|単結晶を次世代の半導体とセンサーへ広げる/SAM基板上でGaN基板を作製/電池交換を減らすセンサーへ/SAM結晶の大型化を目指す

SAM基板上でGaN基板を作製

SAM基板を土台にGaN基板を作れることは、実験で確かめられています。同社と立命館大学は、分子線エピタキシー法(真空中で原料を分子の流れで当てて膜を育てる方法)を使い、中間層を挟まずにGaNを成長させました。その上に別の成長法で厚さ1mmのGaNを育て、SAMの割れやすさを利用してはがすことで、GaNだけの自立基板が得られました。はがした後のSAM基板は再利用できるため、GaN基板の製造工程の簡素化とコスト低減が期待されています。

電池交換を減らすセンサーへ

同社は、電池交換を減らすセンサーに向けて、鉄ガリウム合金の単結晶を提供しています。用途の一つは振動発電による、無線通信の電源やボタン電池の代わりです。軸をねじる力を測るトルクセンサーにも使えます。電池の交換が減れば、設備やインフラを見守る範囲を広げやすくなります。

SAM結晶の大型化を目指す

同社は、SAM結晶の直径を大きくし、窒化物半導体(窒素を含むGaNなどの半導体)の基板として広く供給することを目指しています。直径6インチの技術開発に取り組み、2023年時点では宮城県の補助事業で直径3インチ結晶の量産技術を開発していました。さらに、緑や赤の光を効率よく出すLEDに向けて、InGaN(インジウムを加えたGaN)の膜をSAM基板に育てた土台の開発にも着手しました。基板の大型化と品質の向上が進めば、GaNを使う自動車用のパワー半導体や基地局、マイクロLEDディスプレイの性能向上につながります。

会社概要|株式会社福田結晶技術研究所

東北大学の結晶研究から創業

福田結晶技術研究所は、東北大学金属材料研究所の教授として単結晶の成長技術を研究してきた福田承生氏が、2002年1月に創業した会社です。福田氏は東芝の研究所を経て1987年に東北大学の教授となり、現在は名誉教授です。創業時は三菱商事の支援のもと、単結晶技術のコンサルティング会社として出発しました。2004年12月に三菱商事との合弁を解消し、ベンチャー企業へ移行しています。2006年5月に結晶センターを設けました。

企業の結晶開発を支援

同社は、自社での結晶開発に加え、企業による単結晶の事業化を支援してきました。LED用サファイアの大型結晶を育てる技術を国内と韓国の大手メーカー数社に指導し、トクヤマとは半導体露光装置のレンズに使う超大型のフッ化カルシウム結晶を共同で開発しました。現在は、試作した結晶や結晶を育てる装置の販売、装置のレンタル、技術指導も手がけています。

大学と組み基板と材料を開発

SAM結晶の開発では、2014年に東北大学金属材料研究所の松岡隆志教授らと共同で、SAM基板の上にLEDの構造を作り、基板としての有用性を確かめました。2023年には、立命館大学と共同で進めた研究の成果が、応用物理学会の国際学術誌「Applied Physics Express」に掲載されています。鉄ガリウム合金の単結晶は、東北大学の鈴木教授や金沢大学の上野准教授らと共同で開発し、JST(科学技術振興機構)の研究事業「CREST」などの支援を受けました。創業者の福田氏は、2007年に結晶成長の分野の国際的な賞である「J.チョクラルスキー・ゴールドメダル賞」を受けています。

会社情報

会社名株式会社福田結晶技術研究所(Fukuda Crystal Laboratory)
所在地宮城県仙台市青葉区南吉成6丁目6番地の3
設立2002年1月
代表代表取締役社長 福田承生
資本金5,190万円(2016年6月に増資)
事業単結晶材料の開発と単結晶製造技術の開発。試作結晶・開発装置の販売。単結晶製造に関する研究から製品化までのコンサルティング、技術指導、装置レンタル
技術領域チョクラルスキー法による単結晶育成。ScAlMgO4(SAM)単結晶、鉄ガリウム合金単結晶、ニッケル単結晶、フッ化物単結晶など
連携東北大学金属材料研究所(SAM基板上のLED試作・2014年)。立命館大学(SAM基板上へのGaN直接成長・2023年)。東北大学・金沢大学(鉄ガリウム合金単結晶の共同開発)
採択JST「CREST」等の支援(鉄ガリウム合金単結晶の開発)。宮城県の補助事業(直径3インチSAM結晶の量産技術開発)
URLhttps://fxtal2002.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

半導体の性能は、その土台となる基板の結晶の質に大きく左右されます。福田結晶技術研究所は、作るのが難しいとされてきたSAMをはじめ、鉄ガリウム合金などを、溶かした原料から引き上げる方法で単結晶にしてきた会社です。大学の研究室で培われた結晶の技術が、20年以上にわたって企業の製品開発を支えてきた点も印象に残ります。

国内では、窒化物半導体で紫外線LEDを開発するナイトライド・セミコンダクターのように、GaNの仲間の半導体で製品を生み出す企業も育っています。基板の側から次世代の半導体を支える同社の今後の歩みに注目していきます。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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