イムノジェネテクス株式会社は細胞1個ずつ遺伝子の働きを高感度に解析する東京理科大学発の企業

イムノジェネテクス株式会社

イムノジェネテクス「高感度シングルセル解析」を研究|研究領域=細胞1個ずつ・遺伝子の働きを解析/強み=増幅の工夫で・遺伝子を多く検出/将来性=検査薬や治療法の・開発を目指す

企業紹介|イムノジェネテクス株式会社とは?

細胞1個ずつ、どの遺伝子が働いているかを読み取る技術として、注目を集める「高感度シングルセル解析」。イムノジェネテクス株式会社は、その社会実装を目指す、東京理科大学発のバイオ系ディープテック企業です。シングルセルRNA-Seq(細胞ごとにRNAを読む解析)やTCRレパトア解析(T細胞受容体の種類を調べる解析)の受託サービスを、大学や研究機関へ提供しています。

キーワード「高感度シングルセル解析」

「高感度シングルセル解析」は、組織から分けた細胞の一つひとつについて、働いている遺伝子を読み取る解析手法です。特徴は、発現量(遺伝子から写し取られるRNAの量)の少ない遺伝子の情報まで、取りこぼしを抑えて捉えられる点にあります。がんや免疫疾患の研究では、どの細胞が病気に関わるかを細かく調べられます。

市場課題|発現量の少ない遺伝子やT細胞受容体の遺伝子を捉えにくい

現状の遺伝子解析の課題|現状は、微量なRNAを捉えにくく細胞の変化を見逃す恐れ|発現量の少ない・遺伝子を見逃す/T細胞受容体の・解析が困難

発現量の少ない遺伝子を見逃す

細胞1個ずつ読むシングルセル解析でも、発現量の少ない遺伝子は捉えにくいのが現状です。1細胞に含まれるRNAはごく微量で、バルクシーケンスとは異なり量を確保できないため、読み取れる遺伝子の数には限りがあります。発現量の少ない遺伝子を取りこぼすと、病気に関わる少数の細胞の変化も見落とされやすくなります。

T細胞受容体の解析が困難

免疫細胞のT細胞では、異物の目印を見分けるT細胞受容体(TCR)の遺伝子を読み取りにくいとされています。休止期(活性化していない状態)のT細胞では、TCRの遺伝子の発現量が1細胞あたり数コピー程度と低く、TCRレパトアを正確に調べるのは容易ではありません。研究者は腫瘍の中でどのT細胞が増えているかを1細胞ずつ見分けにくく、がん免疫療法の研究の手がかりが不足しかねません。

他にも、細胞を分ける前処理の手間試薬や機器の費用配列データの解析負担、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • バルクシーケンス多数の細胞をまとめて壊し、含まれるRNAやDNAの配列を一度に読み取る解析を指す。組織全体の傾向をつかむのに向くが、結果は全細胞の平均値となり、少数の細胞が持つ特徴は見えにくい。

イムノジェネテクスの強み|「高感度シングルセル解析」を研究

イムノジェネテクスが「高感度シングルセル解析」を研究|今後は、増幅法で高感度な検出が可能に|増幅の工夫で・遺伝子を多く検出/T細胞受容体を・高感度に解析

増幅の工夫で遺伝子を多く検出

ビーズ上でcDNA(RNAを写し取ったDNA)を増やす従来の方式は、微量なRNAから増やす効率に限りがあり、検出できる遺伝子の数が少ないという弱点がありました。

同社の中核にあるのは、取締役らが開発したcDNA増幅法「TAS-Seq」です。TdT(DNAの末端に塩基をつなぐ酵素)で磁気ビーズ上のcDNAの末端を伸ばし、そこを起点にcDNAを増やします。ターミネーター(伸長を止める塩基)を加え、残ったプライマー(増幅の起点となる短いDNA)が伸びて余分なDNAになるのを止めています。改良版「TAS-Seq2」の検出遺伝子数は、BD Rhapsody(1細胞解析装置)の標準キットの約3倍です。検出の感度が向上し、少数の細胞の変化も見落としにくくなります。

T細胞受容体を高感度に解析

TCRの遺伝子を増やす従来の方法は、可変領域(受容体の種類ごとに配列が異なる部分)ごとに多数のプライマーを混ぜて使うため、感度に限りがあり、配列によって増えやすさに差が出る弱点がありました。

同社は、mRNA(情報を運ぶRNA)から作ったcDNAを共通プライマー(共通配列につく起点)で増幅し、高感度で偏りの少ない解析を行います。1細胞の解析にはTAS-Seq2を用います。マウスのがんモデルの腫瘍内T細胞では、α鎖とβ鎖(受容体の2本の鎖)がそろって読める細胞の割合が標準キットの57.0%に対し86.9%でした。腫瘍内T細胞の種類を血液と照合して判定する手法で、同社は特許を出願しています。研究者は、腫瘍内で増えたT細胞のクローン(同じ細胞から増えた集団)を1細胞ずつ特定できます。

FrontJournalの解説
  • cDNA細胞のRNAを鋳型に、逆転写酵素で写し取ったDNAを指す。RNAは壊れやすく、そのままでは増やせないため、いったんcDNAに変えてから増幅して配列を読む。遺伝子の働きを調べる解析の出発点である。

高感度シングルセル解析の未来|受託解析から検査薬や治療法の開発へ

高感度シングルセル解析が変える未来|受託解析から検査薬や治療法の開発へ広げる|多くの大学の・研究を解析で支援/T細胞受容体の・解析を検査薬へ/新しいT細胞療法の・開発を目指す

多くの大学の研究を解析で支援

東京大学、京都大学、東北大学などの大学や国立国際医療研究センター研究所(現・国立健康危機管理研究機構)の研究を、同社の受託解析が支えてきました。受託の範囲は、空間トランスクリプトーム解析(組織の場所ごとに遺伝子の働きを読む解析)や、1,000細胞からの微量な検体を調べる解析まで広がっています。組織を単一の細胞に分ける作業の代行や、装置の貸し出しにも応じています。2025年には、同社の技術を使った肺のオルガノイド(臓器に似せて培養した細胞の塊)の研究成果が学術誌に掲載されました。

T細胞受容体の解析を検査薬へ

臨床検査薬の開発も、同社が掲げる事業の一つです。TCRレパトアを調べれば、がん組織や血液の中でどのT細胞が増えているかが把握可能です。T細胞の反応を読み取る検査は、がん免疫療法の効き目を確かめる手段として期待されています。検査薬として実用化されれば、医師が治療の継続を判断する材料が増えます。

新しいT細胞療法の開発を目指す

同社が目指すのは、遺伝子解析の技術をもとにした新しいT細胞療法ワクチン療法の開発です。細胞1個ずつTCRのα鎖とβ鎖の組み合わせを読めれば、がん細胞を狙うT細胞がどの受容体を持つかを調べる手がかりになります。あわせて、細胞ごとの情報を集めた1細胞情報データベースの開発も目標の一つです。同社は、がんに限らず、炎症や免疫難病を抑える方法の提供も目的に掲げています。

会社概要|東京理科大学発、受託解析を柱に研究開発を進める

東京理科大学の研究から創業

イムノジェネテクス株式会社は、2019年6月に設立された東京理科大学発のスタートアップです。基盤は、東京理科大学の松島綱治教授の研究室が進めてきたシングルセル解析とTCRレパトア解析の技術です。同研究室の七野成之氏、上羽悟史氏らが開発したTAS-Seqは、2022年に英科学誌「Communications Biology」で発表されました。松島教授は、第7回「日本医療研究開発大賞」で内閣総理大臣賞を受けています。現在は美濃輪昇氏が代表取締役を務め、松島教授、上羽氏、七野氏は取締役として経営に加わっています。

認定と財団助成で基盤を整備

同社は2019年10月に東京理科大学発ベンチャーの認定を受けました。2020年6月には、「BD Rhapsody」を販売する日本ベクトン・ディッキンソンから、同装置のサービスプロバイダーに認定されています。2020年2月には三菱UFJ技術育成財団の研究開発助成金(2019年度第2回)、2025年2月にはひまわりベンチャー育成基金の助成金(2024年下期)に採択されました。

受託解析を事業の柱に

大学や研究機関から解析を請け負う受託サービスが、同社の事業の柱です。依頼元へサンプル調製用の試薬や機器を送り、届いた検体の処理から結果の報告までを担います。2024年8月には、千葉県柏市の三井リンクラボ柏の葉1に新拠点を開設し、現在の所在地としました。2026年2月には、第三者割当(特定の相手に新株を引き受けてもらう資金調達)による増資の手続きを完了しています。

会社情報

会社名イムノジェネテクス株式会社(ImmunoGeneTeqs, Inc.)
所在地千葉県柏市柏の葉6丁目6番2号 三井リンクラボ柏の葉1 304号室
設立2019年6月3日
代表代表取締役:美濃輪 昇。取締役:松島 綱治、上羽 悟史、七野 成之、外山 和夫
資本金3774万4千円
調達2026年2月:第三者割当による新株発行
事業シングルセルRNA-Seq、シングルセルTCRレパトア解析、空間トランスクリプトーム解析、微量検体RNA-Seq、TCRレパトア解析、シーケンス解析の受託サービス。臨床検査薬、新規T細胞療法、ワクチン療法、1細胞情報データベースの開発
技術領域高感度cDNA増幅法「TAS-Seq」「TAS-Seq2」。共通プライマーによるTCRレパトア解析。血液のTCRレパトアと照合して腫瘍組織のT細胞クローンの種類を判定する重複クローン解析(特許出願中)
連携東京理科大学。日本ベクトン・ディッキンソン(BD Rhapsody サービスプロバイダー認定・2020年6月)
採択東京理科大学発ベンチャー認定(2019年10月)。三菱UFJ技術育成財団 研究開発助成金(2019年度第2回)。ひまわりベンチャー育成基金 助成金(2024年下期)
URLhttps://immunogeneteqs.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

同じ組織の中にも、性質の違う多数の細胞が混ざっています。イムノジェネテクスが取り組むのは、その一つひとつの違いを平均に埋もれさせずに読み分ける技術です。細胞にわずかしかないRNAの取りこぼしを抑えて増やす工夫は、研究者が知りたい細胞の変化を捉える助けです。

注目したいのは、この技術がT細胞受容体を1細胞ごとに読む手段にもなっている点です。T細胞が持つ受容体を読み分けられれば、腫瘍の中で増えている細胞の集団を具体的に捉えられます。受託解析で積み重ねた経験は、検査薬や新しい治療法の開発を支える基盤になると考えます。

細胞1個の違いから、免疫疾患を抑える道が開ける日を期待しています。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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