ミューラボ|福島大学発の「超小型精密減速機」を開発するロボティクス系ディープテック企業

株式会社ミューラボ

ミューラボ「超小型精密減速機」を開発|研究領域=ロボットの関節を動かす小さな部品/強み=3つの歯車だけで力強く減速/将来性=ロボットの手先から宇宙の機器へ

企業紹介|ミューラボとは?

ロボットの関節や手先を、小さな体積で力強く動かす部品として注目を集める「超小型精密減速機」。ミューラボは、その社会実装を目指す、福島大学発のロボティクス系ディープテック企業です。3つの歯車だけで回転を遅くする「クラウン減速機構」を製品化し、減速機「CROWN ROBOXGEAR」や、物をつかむロボットの手である電動グリッパを販売しています。

キーワード「超小型精密減速機」

「超小型精密減速機」は、モーターの速い回転を遅くする代わりに回す力を大きくする減速機のうち、外形が数十mmほどの小さな製品です。ロボットの関節はモーターと減速機の組み合わせで動くため、減速機の大きさと強さが、ロボットの大きさと力を左右します。小型のロボットの関節や、ロボットハンドの指を動かす部品として使われています。

市場課題|ロボット用の減速機は小さく強くするのが難しい

現状のロボット用の減速機の課題|現状は、部品が多く小さくするほど力を保ちにくい/減速機の小型化要求が厳格化/既存方式では小型化と両立困難

減速機の小型化要求が厳格化

ロボットの細身化が進み、関節を動かす減速機には、より小さく薄い形が求められています。狭い場所の作業や人との協働に向けて、ロボット全体を細くする必要があるためです。既存の部品を限られた体積に収めることさえ難しいほど、その要求は厳しくなっているといわれています。

既存方式では小型化と両立困難

既存の減速機の方式は、小型化と、大きな力を受け止める性能を両立しにくい状況です。遊星歯車装置(歯車が別の歯車の周りを回る減速機)は体積とバックラッシの面で劣り、サイクロイド減速機(波形の板で減速する減速機)も部品が多く小型化に不利です。小型化に向く波動歯車装置(薄い歯車をたわませる減速機)も変形する歯車の設計と加工が難しく、小さな関節では別の仕組みが必要になるといわれています。

他にも、配線を通す中空穴の確保、バッテリー駆動に向けた効率の向上、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • バックラッシかみ合う歯車の歯と歯の間にあるすき間で、回転の向きを変えたときに生じるがたつきである。バックラッシが大きいほど、ロボットの手先が同じ位置に戻る精度が下がる。

ミューラボの強み|「超小型精密減速機」を開発

ミューラボが「超小型精密減速機」を開発|現在は、歯車の首振りで力強い減速機を提供/3つの歯車の首振りで減速/立体カムで指先を精密に駆動

3つの歯車の首振りで減速

従来の減速機は、歯車に加えて回転の偏りを打ち消す部品や継手を組み合わせる構成が多く、外形を小さくするほど、力を受け止める性能を保ったまま部品を収めるのが難しくなります。

ミューラボの「クラウン減速機構」は、ロータギア、ステータギア、アウトプットギアの3つの剛体歯車(変形しない硬い歯車)だけで回転を遅くする仕組みです。モーターの回転はロータギアの歳差運動に変わり、ロータギアは外側でステータギアと、内側でアウトプットギアとかみ合います。歯数の異なるステータギアとのかみ合いで回転が遅くなり、その回転をアウトプットギアが取り出す構造。同じ大きさの減速機の2倍のトルク(回す力)を出せるとされ、小さなモーターでもロボットの腕や手先を力強く動かすことができます。

立体カムで指先を精密に駆動

小さな手先で指を開閉させるには、回転を別の向きの動きに変える部品が要り、径が小さくなるほど精密に動きを伝えるのが難しくなります。

ミューラボの「立体カム機構」は、立体的なカム面を2つ持つカムと、その面をなぞるフォロアで構成され、2組のカム面とフォロアが常に接したまま動く仕組みです。小さな径のまま、回転軸と向きの異なる軸へ動きを精密に伝えられるのが特徴です。この機構と「クラウン減速機構」を組み合わせた電動グリッパ「ミューダイナミクスRBCK30」は、重さ300gで最大20Nの力でつかみ、直径0.5mmのシャープペンシルの芯もつまめます。細い部品や変形しやすい部品も1台でつかめるため、自動化装置で扱える部品の幅が広がります。

FrontJournalの解説
  • 歳差運動回転する物体の軸そのものが、円を描くように向きを変えていく運動である。回るコマの軸がゆっくり首を振る動きが代表例で、クラウン減速機構では歯車の回転をこの動きに変えて減速に使う。

超小型精密減速機の未来|ロボットの手先から宇宙の機器まで

力強い超小型精密減速機が変える未来|他社製品から宇宙まで、用途が広がる/技術供与で他社製品へ展開/樹脂製減速機で用途を拡大/宇宙産業を支える部品を目指す

技術供与で他社製品へ展開

同社は、製品として販売してきた技術を他社に提供する技術供与の事業へ広げています。2020年に自社ブランドの製品を発売し、2022年にはFA機器(工場の自動化機器)を扱うオリムベクスタが同社の電動グリッパを紹介しました。技術供与の事業はコロナ禍に構築を始め、2025年に形になったとしています。自社で製造しない分野でも、他社の機械に同社の機構が組み込まれる道が開けました。

樹脂製減速機で用途を拡大

次の段階として、同社は樹脂で作る減速機を用意しています。2026年7月の機械要素技術展では、軽さと静かさ、さびにくさを特徴とする樹脂製の減速機を紹介しました。2023年には外形13mmの減速機のシリーズも加え、関節の大きさに応じて選べる品ぞろえを整えています。軽さや静かさが求められる機器でも、同社の機構を選びやすくなります。

宇宙産業を支える部品を目指す

同社は2030年のビジョンに「“月”へ到達する」を掲げ、自社の技術が宇宙産業を支える部品になることを目指しています。より小型の機構で、次世代のロボットや高度な医療機器、ロケットや人工衛星といった機械の実現に貢献するとしています。重さや大きさの制約が厳しい機器こそ、小さく強い減速機が力を発揮する場面です。部品が小さく強くなれば、医療の現場から宇宙まで、人が入りにくい場所の作業をロボットに任せやすくなります。

会社概要|株式会社ミューラボ

福島大学の研究から製品化

ミューラボは、2015年4月に設立された福島大学発のベンチャー企業で、同大学が認定した第1号のベンチャーです。設立に先立つ2012年10月から、文部科学省の「大学発新産業創出拠点プロジェクト(START)」で準備を進め、モーターを内蔵したミリサイズの関節アクチュエータ(関節を動かす駆動装置)を開発しました。社名は、とても小さいことを表す「ミュー(マイクロ)」と「ラボ(研究室)」に由来します。代表取締役社長は伏見雅英氏で、福島大学でメカトロニクスを研究する高橋隆行氏が非常勤の取締役を務めています。

国の支援事業に相次ぎ採択

同社は2019年6月、経済産業省が進めるスタートアップの育成支援プログラム「J-Startup」の企業に選ばれました。2024年11月には「J-StarX Boston Robotics Program」に、2025年2月には特許庁の知財支援事業「IPAS」の支援先に採択されています。2026年1月には、経済産業省が米国のシリコンバレーに設けた拠点「Japan Innovation Campus」のコワーキングメンバーに選ばれました。同年6月には、中小企業の研究開発を支える「成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)」にも採択されています。

スター精密などから資金調達

同社は2024年9月、事業拡大に向けて、スター精密などから約1億5,000万円の資金調達を行いました。スター精密は、精密機械やプリンターを手がける静岡県の上場企業です。それ以前にも、2017年2月に約7,500万円、2019年3月に約1億2,000万円の増資を実施しています。

会社情報

会社名株式会社ミューラボ(Mu Lab, LTD.)
所在地福島県福島市金谷川1番地 福島大学 共生システム理工学類研究実験棟407号室(ベンチャー・インキュベーション・ルーム)
設立2015年4月1日(福島大学認定第1号のベンチャー企業)
代表伏見 雅英(代表取締役社長)
調達約7,500万円の増資(2017年2月)。約1億2,000万円の増資(2019年3月)。スター精密などから約1億5,000万円(2024年9月)
事業動力伝達装置用コンポーネント・アクチュエータ・システムの製造と販売。超小型精密減速機「CROWN ROBOXGEAR」(外形13mm・20mm・30mm、中実・中空・ギアードモータータイプ。外形30mmタイプは定格トルク3Nm・瞬時最大トルク45Nm)。電動グリッパ「ミューダイナミクスRBCK30」(最大把持力20N・重量300g・繰り返し位置決め精度 片側±0.01mm)
技術領域クラウン減速機構、立体カム機構、超小型アクチュエータ
採択J-Startup(2019年)。J-StarX Boston Robotics Program(2024年)。IPAS 2024年度第2期支援先(2025年)。Japan Innovation Campus コワーキングメンバー(2026年)。Go-Tech事業(2026年)
URLhttps://mu-lab.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

ロボットの話題は人工知能や制御に集まりがちですが、実際に腕や指を動かしているのは、モーターと減速機という機械の部品です。減速機が小さく強くならなければ、ロボットの手先は細く器用になりません。ミューラボが取り組むのは、その減速機を、数十mmの大きさのまま力強くすることです。

興味深いのは、コマの首振りのような運動を減速に使うという、歯車の組み方そのものを見直した点です。ロボットに人のような力の加減を持たせるモーションリブのような企業も現れ、ロボットの手先を支える技術は部品と制御の両面で進んでいます。部品の工夫と制御の工夫がそろって初めて、ロボットの手先は人の手に近づきます。

大学の研究室で生まれた小さな歯車が、工場の自動化装置から宇宙の機器までを支える部品になれるのか、引き続き注目していきたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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