N Lab「病理AI」を開発|組織の画像をAIが解析し病理医の診断を補助するイラスト

株式会社N Lab(エヌラボ)

N Lab「病理AI」を開発|研究領域=組織の画像から・診断を補助するAI/強み=判断の根拠を・病理医に示す/将来性=診断技術を・世界の医療機関へ

企業紹介|株式会社N Labとは?

病理医の診断を、組織の画像の解析で支える技術として、注目を集める「病理AI」。株式会社N Labは、その社会実装を目指す、長崎大学発のヘルスケア系ディープテック企業です。病理画像を見ながら診断を記載できるシステム「MIXTURE report」などを、病院や研究機関へ提供しています。

キーワード「病理AI」

「病理AI」は、患者から採った組織を写したデジタル画像を解析し、病理医の診断を補助する人工知能です。特徴は、がん細胞の検出や免疫染色の結果の解析など、病理医の作業の一部を補える点にあります。病院の病理部では、診断のダブルチェックなどへの応用が期待されています。

市場課題|病理医が少なく、間質性肺炎の診断は医師によって分かれやすい

現状の病理診断の課題|現状は、病理医不足で標本を郵送し、診断も分かれやすい|病理医が少なく・標本を郵送/間質性肺炎は・診断が分かれやすい

病理医が少なく標本を郵送

病理診断(組織を顕微鏡で調べて病気を確定する診断)を担う病理専門医は、2026年9月時点で全国に2,913名にとどまり、常勤の病理医がいない病院もあります。その場合、ガラス標本を外部の病理医へ郵送して診断を依頼しています。郵送の日数の分、患者へ結果を返すまでの時間が延びるのが実情です。

間質性肺炎は診断が分かれやすい

病理診断の中でも、間質性肺炎(肺が炎症や線維化で硬くなる病気)の組織診断は、病理医の経験に左右されやすく、診断の再現性が低いとされています。所見の読み取り方が医師ごとに異なるため、同じ標本でも診断がそろいにくいことが課題です。進行しやすい型の見分けにくさは、治療方針の判断にも影響します。

他にも、高額なスライドスキャナ(標本を撮影する装置)の導入費用、病理医の高齢化、免疫染色(抗体で分子を染める方法)の精度管理の手間、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 病理診断患者から採った組織や細胞を薄く切って染色し、顕微鏡で観察して病気の種類や広がりを確定する診断である。がんかどうかの確定や治療方針の決定に用いられ、担当する医師を病理医と呼ぶ。

N Labの強み|「病理AI」を開発

N Labが「病理AI」を開発|現在は、画像とAIで病理診断の支援を提供|標本画像で・遠隔から病理診断/根拠を示すAIで・診断を補助

標本画像で遠隔から病理診断

従来の病理診断は、ガラス標本を顕微鏡で直接のぞく方法が基本で、病理医と標本が同じ場所にある必要がありました。

「MIXTURE report」は、WSI(標本全体を撮影したデジタル画像)をブラウザで開いて診断を記載する、デジタルパソロジー(標本をデジタル画像にして扱う診断の方法)のシステムです。画像と臨床情報・依頼情報を同じ画面で確かめられ、病理AIも搭載できる設計です。スライドスキャナで撮影した画像を使えば、離れた病院の病理医もインターネットを通じて診断に加われます。病理医のいない病院も標本を郵送せずに診断を依頼でき、結果を返すまでの時間を短くできます。

根拠を示すAIで診断を補助

従来の深層学習(大量のデータから特徴を自動で学ぶ手法)による診断AIは、判断の過程が見えにくい「ブラックボックス」になりやすく、医師が結果の根拠を確かめにくいという課題がありました。

同社は、説明可能なAIの作成手法「MIXTURE」を使い、病理AI「MIXTURE AI」を開発しています。まず画像を小さな区画に分けて似た区画を自動でまとめ、次に病理医がそれを所見ごとに統合して正解データ(AIが学ぶ手本)を作ります。学習したモデルは線維化などの所見を拾い出し、進行しやすい型であるUIP(通常型間質性肺炎)かどうかを予測する仕組みです。病理医はAIが示した所見を確かめて最終診断を下せるため、患者へ根拠を説明できます。病理医ごとの判断の差を抑える効果も期待されています。

FrontJournalの解説
  • 説明可能なAI結論だけでなく、どの情報をもとにその結論に至ったかを人が確かめられる人工知能である。医療では、医師がAIの判断を検証して最終判断を下す必要があるため、根拠を示せることが導入の条件となる。

病理AIの未来|デジタル診断が地域の病院から世界へ広がる

根拠を示す病理AIが変える未来|地域病院からがん診断、世界の患者へ|地域病院の・病理診断を支援/肺がんや胃がんへ・開発を拡大/診断技術の・世界展開を目指す

地域病院の病理診断を支援

MIXTURE reportを使い、病理診断の体制を整えた地域の病院があります。千葉県館山市の安房地域医療センターは、常勤の病理医がいないため、ガラス標本を郵送して診断を依頼していました。同センターは、スライドスキャナとMIXTURE reportの導入、病院間の連携、週1日の非常勤病理医の雇用を組み合わせ、病理部門を黒字化しています。常勤の病理医がいない病院で、デジタルパソロジーを使って診断の体制を整えた例です。

肺がんや胃がんへ開発を拡大

同社は、間質性肺炎に続き、肺がん、胃がん、前立腺がん、脳腫瘍、唾液腺腫瘍の診断モデルを開発しています。MIXTUREは、病理医が所見を統合する作業によって、少ない手間で正解データを用意できる手法です。この手順は、ほかの病気の画像にも応用できるとされています。がんの診断にも根拠を示すAIが加われば、病理医の診断を支えるダブルチェックに使えることが期待されます。

診断技術の世界展開を目指す

同社は、病理診断のDX(デジタル技術による業務の変革)を進め、世界中の患者が適切な治療を受けられる環境の実現を掲げています。日本は欧米や中国に比べてデジタルパソロジーの導入が遅れているといわれ、同社はこの分野での貢献を使命としています。デジタル画像と病理AIを組み合わせた診断の環境を、発展途上国を含む世界の医療機関へ届けることが、同社の目標です。実現すれば、病理医のいない地域の患者も、専門医の診断にもとづく治療を選べるようになります。

会社概要|N Labの事業内容・設立背景

呼吸器外科医が2017年に創業

株式会社N Labは、2017年2月に代表取締役の北村由香氏が設立しました。北村氏は、呼吸器外科医として肺がんの手術などに携わった後、病理医不足と高齢化の問題を知って長崎大学病院の病理部へ移った病理医です。設立当初は衛生検査所として免疫染色を受託し、肺がん患者の治療に役立つバイオマーカー検査(薬の効果を見込むための目印を調べる検査)も提供していました。保険診療の免疫染色は2023年7月に終え、現在はデジタルパソロジーと病理AIの研究・開発・提供を主な事業としています。技術アドバイザーは長崎大学教授の福岡順也氏です。

受賞・採択と連携の歩み

同社は、2019年に「九州アントレプレナー大賞」を受けました。2022年には事業と知財の両面からスタートアップを支援するプログラム「IPAS」に採択され、長崎県の「ネクストリーディング企業」にも認定されています。同年4月には長崎大学の研究チームと「MIXTURE」の使用契約を結び、2023年5月には医用画像のプラットフォームを運営するCallistoとの連携を発表しました。

システム導入とAI開発が事業

同社は、診断システム「MIXTURE report」と、そこに搭載できる病理AIを研究・開発し、医療機関へ導入しています。スライドスキャナの取り扱いや、約100種類の抗体試薬に対応する免疫染色の精度管理用の組織アレイ(多数の組織片を1つにまとめた標本)「QC array」の販売も同社の事業です。2024年7月には情報セキュリティの国際規格「ISO/IEC 27001」の認証を取得し、医療情報を扱う体制を整えています。

会社情報

会社名株式会社N Lab(エヌラボ)
所在地長崎県長崎市旭町6番1-2205号
設立2017年2月3日
代表代表取締役 北村由香(病理医・外科医・医学博士)。技術アドバイザー 福岡順也(長崎大学教授)
資本金1,500万円
事業デジタル診断レポーティングシステム「MIXTURE report」。病理AI「MIXTURE AI」の研究・開発・提供。スライドスキャナの取り扱い。免疫染色の陽性コントロール組織アレイ「QC array」
技術領域病理AI(説明可能なAIの作成手法「MIXTURE」)。デジタルパソロジー
連携長崎大学(2022年10月に長崎大学発ベンチャーの称号を授与)。産業技術総合研究所(MIXTUREの開発で協力)。Callisto(2023年5月)
採択ナガサキ型新産業創造ファンド(2018年)。九州アントレプレナー大賞(2019年)。中小機構「FASTAR」(2019年度)。IPAS 2022。長崎県ネクストリーディング企業(2022年)。Healthtech/SUM2022 Life science Award・Amvis Holding Award(2022年)。九州経済連合会会長賞(2023年)。X-DOJO 2023W(2023年)
URLhttps://n-lab.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

医療では、AIの判断を医師が検証してから最終診断を下す必要があります。病理医が自ら所見をまとめ、それを正解データとしてAIに学ばせるMIXTUREは、AIと医師が同じ根拠を見ながら判断する道筋を示した技術です。その技術を病院の現場へ届けているのが、N Labです。

N Labの取り組みは、画像解析にとどまらず、病理医の少ない病院に専門医の診断を届ける仕組みの構築です。標本を郵送していた安房地域医療センターで診断の体制が整った事例は、その成果の1つです。そこに判断の根拠を示すAIが加われば、医師が納得して使える診断支援に近づきます。

長崎から生まれた技術が、世界のどこにいても根拠のある診断を受けられる医療につながる日を期待しています。長崎大学から生まれたほかの企業は、長崎大学発スタートアップ10選で紹介しています。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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