長崎大学発スタートアップ8選|病理AIから昆虫飼料・においセンサーまで

長崎大学発スタートアップ8選|病理AIから昆虫飼料・においセンサーまで

長崎大学発スタートアップは、病理AI、がん免疫の研究用キット、血液脳関門モデル、抗ウイルス剤、マダニの判別AI、昆虫飼料、においセンサー、自治体の政策立案支援など、医療・感染症から食料・環境、地域の行政まで広がっています。

この記事で紹介する8社のうち、N-サンガク、レボーン、N Lab、出島リサーチ&コンサルツ、フィールドワーカーズ、Booonの6社は、長崎大学から「長崎大学発ベンチャー」の称号を授与されています。これは大学が公表する称号授与企業の一覧(2024年12月時点)に基づきます。ファーマコセルは長崎大学の名誉教授が経営し、AVSSは長崎大学の元教授が創業した企業です。

大学発スタートアップの面白さは、単に大学名が付いていることではありません。研究室や研究者、学生、卒業生、大学周辺の支援機関が持つ知見が、医療、ものづくり、AI、環境、教育、社会インフラの課題と結びつき、事業として社会へ出ていくところにあります。

この記事では、長崎大学とのつながりを公開情報で確かめられる8社を紹介します。

長崎大学発スタートアップを見るポイント

1つ目は、病理AI、がん免疫の研究用キット、血液脳関門モデルなど、病院や研究室で使う道具を製品にする医療・バイオの企業が多いことです。

2つ目は、ウイルスを扱う技術を抗ウイルス剤や検査に生かすAVSSと、マダニの種類を画像から判別するAIを研究するフィールドワーカーズのように、感染症に向き合う企業があることです。

3つ目は、食品廃棄物で育てたミルワームの飼料、においのセンサー、自治体のアンケートと統計分析など、食料・環境・地域の課題へ研究や専門知を広げる企業があることです。

長崎大学発スタートアップ カオスマップ:領域別の8社

長崎大学発スタートアップ8選

ここからは、領域別に8社を紹介します。

資金調達、提携、製品リリースなどの最新情報は、各社の公式発表もあわせて確認してください。

医療・創薬・バイオ

1. N Lab|根拠を示す病理AIで診断を補助する

N Lab(エヌラボ)は、2017年2月に北村由香氏が設立した、長崎大学発のヘルスケア系企業です。2022年10月に、長崎大学から長崎大学発ベンチャーの称号を授与されました。

組織を顕微鏡で調べて病気を確定する病理診断を担う病理医は少なく、常勤の病理医がいない病院は、ガラス標本を外部の病理医へ郵送して診断を依頼しています。間質性肺炎の組織診断は病理医の経験に左右されやすく、診断の再現性が低いとされています。

同社は、標本全体を撮影したデジタル画像をブラウザで開いて診断を記載するシステム「MIXTURE report」と、説明可能なAIの作成手法を使った病理AI「MIXTURE AI」を開発しています。病理医はAIが示した所見を確かめて最終診断を下せるため、患者へ根拠を説明できます。2024年7月には、情報セキュリティの国際規格「ISO/IEC 27001」の認証を取得しました。

企業ページ株式会社N Lab

2. N-サンガク|免疫細胞を増やして働きを測る研究用キットを製品にする

N-サンガク(エヌサンガク)は、地元企業の経営者が発起人となり、2014年5月に設立された長崎大学発のバイオベンチャーです。長崎大学の研究成果を活用した事業と、産学連携による新たな事業の創出を掲げています。

がん免疫療法の研究では、免疫細胞を働きを保ったまま十分な数に増やすことが課題です。細胞ががん細胞を壊す力を測る従来の方法は、放射性同位元素のクロム51を使い、細胞を混ぜて反応させる時間が通常4時間かかります。

同社は、田中義正氏らが長崎大学で得た研究成果をもとに、研究用キットを2種類製品化しました。「N-SPC ヒトγδ型T細胞増殖キット」は、健常な成人の血液なら10〜11日で、がん細胞を壊す働きをもつγδ型T細胞が1000倍程度に増えます。「N-SPC 非RI細胞障害性アッセイキット」は、放射性物質を使わずに蛍光で測り、反応時間は40分です。購入の問い合わせ先は、株式会社テクノ・スズタです。

企業ページ株式会社N-サンガク

3. ファーマコセル|培養皿の上に血液脳関門を再現する

ファーマコセルは、2005年2月に設立された企業で、長崎大学名誉教授の丹羽正美氏が代表取締役社長を務めています。経済産業省の大学発ベンチャーデータベースには、長崎大学と福岡大学の研究成果を活用したベンチャーとして掲載されています。

脳に効かせる薬は、血液中の物質が脳へ入るのを制限する仕組みの血液脳関門を越えなければ届きません。試験管内の評価に細胞株だけを使うと、関門の働きを再現できず、脳に届かない物質の開発を進める恐れがあります。

同社は、脳の毛細血管の内皮細胞、ペリサイト、アストロサイトの3種類の細胞を組み上げて凍結した「BBBキット」を販売しています。-80℃で保存でき、解凍から4日目以降に試験に使えます。キットを使った、薬の脳移行性試験の受託も手がけています。

企業ページファーマコセル株式会社

感染症

4. AVSS|ウイルスを扱う技術で抗ウイルス剤と検査を研究する

AVSS(エービス)は、2006年10月に長崎大学発のベンチャー企業として設立されました。創業者で代表取締役CEOの小林信之氏は、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科の元教授です。2019年3月に長崎大学の研究室を閉じてからは、沖縄県うるま市の沖縄研究室を研究の拠点としており、本社は長崎市にあります。

新しいウイルス感染症は、流行が始まった時点で使える治療薬が乏しい場合が多く、抗ウイルス剤の開発では、候補となる物質の評価に時間がかかります。

同社は、多種多様なウイルスを感染性を保ったまま培養する技術をもとに、培養細胞にウイルスを感染させて物質の効き目を調べる評価系を築き、天然物素材から抗ウイルス活性をもつ物質を探しています。検査の分野では、2016年にデングウイルスの検出キットを完成させ、2020年4月から沖縄県内で新型コロナウイルスのPCR検査の受託を始めました。

企業ページ株式会社AVSS

5. フィールドワーカーズ|マダニの種類を画像から見分けるAIを研究する

フィールドワーカーズは、2022年6月に長崎大学熱帯医学研究所発のスタートアップとして設立されました。創業者で代表取締役の星友矩氏は、医学博士で、長崎大学熱帯医学研究所の助教を務める研究者です。

マダニが媒介する重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は、国内で報告される地域が広がっている感染症です。マダニの種類を見分ける同定は専門家の観察が欠かせず、各地で集めたマダニの種類を速く確かめることが難しい状況です。

同社は、マダニの画像から種類を判別するAIを研究しています。長崎県と佐賀県で採集したマダニを対象に、深層学習のモデル「ResNet-50」で種類を判別するモデルを開発し、性能を確かめてきました。ただし概念実証の段階で、評価の数値は過大になりうる点が、今後の検証課題とされています。蚊やマダニの研究に使う機材の製造販売や、衛生害虫の調査も手がけています。

企業ページ株式会社フィールドワーカーズ

資源循環・センシング・地域データ

6. Booon|食品廃棄物で育てたミルワームを養殖飼料にする

Booon(ブーン)は、2022年11月に長崎市で設立された企業で、長崎大学の認定ベンチャーとして、長崎大学発ベンチャーの第8号にあたります。創業者の一人で代表取締役の橋爪海氏は、長崎大学経済学部の卒業生です。

養殖魚の飼料に多く使われてきた魚粉は、価格の高騰が続いています。飼料費が膨らむほど、養殖業者の経営は圧迫されかねません。魚粉の代わりに注目される昆虫も、餌代や飼育の人件費がかかります。

同社は、食品加工工場などから出る野菜くずや加工残渣を餌に、甲虫の幼虫のミルワームを育てています。ミルワームの粉末は、エビ向けの水産飼料「booonエビ用1号」の主な動物性原料で、魚粉の一部を置き換える設計です。ミルワームの糞の「ミルワームフラス」は、2026年7月に有機JAS資材リストへ登録されました。

企業ページ株式会社Booon

7. レボーン|においをセンサーとAIで数値にする

レボーンは、2018年12月に設立された、においのソリューションの提供に特化した企業です。代表取締役の松岡広明氏は、長崎大学の大学院在学中に同社を創業しました。同社は長崎大学が認定する大学発ベンチャーで、本社は東京にあります。

においの品質評価は、評価する人によって結果がぶれやすいことが課題です。食品や化粧品、洗剤の現場には、人が嗅いで判断する官能評価を使う場面があります。

同社のにおいセンシングデバイス「OBRE」は、水晶振動子の表面に塗った16種類の感応膜に、においの成分が付いたり離れたりして変わる振動の周波数のパターンで、においを数値にします。測ったデータはクラウド「iinioi cloud」に蓄積し、AIが正常品との差を判定します。2026年1月には4.3億円の資金調達を発表し、創業以来の累計調達額は13.5億円になりました。

企業ページ株式会社レボーン

8. 出島リサーチ&コンサルツ|アンケートと統計分析で自治体の政策づくりを支える

出島リサーチ&コンサルツは、2018年7月に長崎大学経済学部の教授を中心に設立された、コンサルティング企業です。代表取締役社長の岡田裕正氏は、2011年から2019年まで長崎大学経済学部の学部長を務めました。事業の中心は、企業や自治体からの調査・研究の受託と、経営戦略の策定や業務改善などのコンサルティングです。

長崎県の人口は1960年の176万人をピークに、2015年の国勢調査では138万人まで減りましたが、何が減少を招いているのかを把握するのは容易ではありません。自治体が職員だけで統計分析を進めるのも難しいといわれています。

同社は2019年度から長崎県統計課と連携し、証拠に基づく政策立案(EBPM)に取り組んできました。大学生の就職意識を尋ねるアンケートの設計と統計分析を担い、課題に合う専門分野の大学教員へ分析を委託する方式を取っています。

企業ページ株式会社出島リサーチ&コンサルツ

長崎大学発スタートアップに多い注目領域

この記事で紹介した8社では、N Lab、N-サンガク、ファーマコセルのような医療・創薬・バイオ系、AVSSやフィールドワーカーズのような感染症系、Booon、レボーン、出島リサーチ&コンサルツのような資源循環・センシング・地域データ系が並びます。

まとめ

長崎大学発スタートアップには、病理AIや免疫細胞の研究用キット、血液脳関門モデルから、抗ウイルス剤、マダニ判別AI、昆虫飼料、においセンサー、自治体の政策立案支援まで、大学の研究や専門知を医療・感染症・食料・地域の課題へつなげる企業が並んでいます。大学の研究室から生まれた企業に加え、元教授や名誉教授が創業・経営する企業や、経済学部の教授らが設立した企業もあり、長崎大学とのつながり方はさまざまです。

この記事の作者

ショクレキ代行

ショクレキでは、ヒアリングをもとに職務経歴書を一緒に作成するサービスを提供しています。「大学発スタートアップに応募したいが、研究経験をどう書けばいいかわからない」「書類選考が通らない」という方は、ぜひ一度ご相談ください。

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