センシング|千葉大学発の「非接触バイタルセンシング」を研究するディープテック企業

株式会社センシング

センシング「非接触バイタルセンシング」を研究|研究領域=顔の動画から体調を推定する技術/強み=脈拍や自律神経をカメラで推定/将来性=健康管理に活用し運転の分析も計画

企業紹介|センシングとは?

スマートフォンのカメラで顔を撮影するだけで、脈拍や自律神経の状態を推定する技術として、注目を集める「非接触バイタルセンシング」。株式会社センシングは、その社会実装を目指す、千葉大学発のヘルスケア系ディープテック企業です。顔の動画から脈拍などを測る技術「SENSING」を、健康管理アプリや自動車のサブスクリプションサービスを手がける企業へ提供しています。

キーワード「非接触バイタルセンシング」

非接触バイタルセンシングは、体にセンサーを着けずに、カメラの映像から脈拍や呼吸数などのバイタルサイン(体の状態を示す数値)を推定する技術です。特徴は、血流に合わせて変わるわずかな顔色の変化を、身近なカメラで読み取れる点にあります。職場のストレスチェックやオンライン診療での活用が想定されています。

市場課題|離れた場所にいる人の体調を日々把握しにくい

現状の健康管理の課題|現状は、ビデオ通話で体調が見えにくく、専用の機器も必要/ビデオ通話では体調が見えにくい/機器が要り日々の計測が困難

ビデオ通話では体調が見えにくい

ビデオ通話の画面越しでは表情の微妙な違いが読み取りにくく、従業員の健康管理が行き届きにくいといわれています。背景にあるのは、テレワークや遠隔診療の普及に伴う画面越しのやり取りの増加です。ストレスの蓄積に周囲が気づくのが遅れれば、心の不調の前兆を見過ごす恐れがあります。

機器が要り日々の計測が困難

心拍や自律神経の状態を測るには、心電計(心臓の電気信号を記録する装置)やウェアラブル端末といった専用の機器が要ります。日常的にバイタルサインを測る機会は少なく、体調の変化に気づきにくいといわれています。生活習慣病が増加傾向にあるといわれるなか、日々の変化を追えなければ予防の機会を逃しかねません。

他にも、その日の体調が運転操作に及ぼす影響、高齢者施設での見守り、未病(病気になる手前の状態)の人の増加、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 自律神経意思とは無関係に心拍や呼吸、血管の収縮を調整する神経。活動時に働く交感神経と休息時に働く副交感神経があり、両者のバランスは心身のストレスの状態を反映するとされる。

センシングの強み|「非接触バイタルセンシング」を研究

センシングが「非接触バイタルセンシング」を研究|現在は、顔の動画で脈拍などの計測を提供/顔の動画から血流を読み取る/手持ちの端末で計測できる

顔の動画から血流を読み取る

従来のバイタル計測は、相手のそばで機器を使う方式が中心で、画面越しの相手の体調を数値で確かめる手段は限られていました。

同社の「SENSING」は、RGBカメラ(赤・緑・青の3色で撮影する一般的なカメラ)で撮った顔の動画から脈拍などを読み取る技術です。心臓の拍動に合わせて皮膚の血液量が変わると、顔色もわずかに変化します。同社はこの変化を追い、脈拍数を求めます。脈拍の間隔のゆらぎから算出するのが、LF/HF(交感神経と副交感神経のバランスを示す指標)です。オンライン診療などで、相手の体調を数値で確認できるようになると想定されています。

手持ちの端末で計測できる

心電計やウェアラブル端末による計測では、利用者が機器を用意して体に着ける必要がありました。

「SENSING」が使うのは、スマートフォンやパソコン、タブレットに搭載された一般的なカメラです。同社のアプリでは、顔を45秒間撮影するだけで、脈拍数や呼吸数、LF/HFなどを計測できます。測定する環境が変わっても結果の差が出にくいとされ、屋内でも屋外でも使える点も特徴です。他社のサービスに組み込むためのSDK(ソフトウェア開発キット)も、各種OS(端末を動かす基本ソフト)向けに開発中です。利用者は新しい機器を買わずに済み、毎日の体調の記録を続けやすくなります。

FrontJournalの解説
  • LF/HF脈拍の間隔のゆらぎを、ゆっくりした変動(LF)と速い変動(HF)に分け、その比で表した値。交感神経と副交感神経のどちらが優位かの目安とされ、ストレスの評価に使われる。

未来|非接触バイタルセンシングが運転と健康管理を変える

非接触バイタルセンシングが変える未来|アプリから運転の安全まで活用が広がる/アプリで今日の体調を確認/体調と運転の関係を解析/カメラで測る健康管理を目指す

アプリで今日の体調を確認

株式会社KINTO(車のサブスクリプションサービスを展開する会社)のアプリでは、2026年4月に始まった実証で、利用者が顔を撮影して今日の体調を確認できるようになりました。「KINTO Unlimitedアプリ」を使うこの実証で、センシングは計測技術と解析ロジックを提供しています。「活力度」や「自律神経バランス」を解析し、結果に応じて食事や運動の助言が届く仕組みです。実証にはトヨタ自動車と東京海上日動火災保険も協力しています。

体調と運転の関係を解析

次の段階では、2026年夏ごろからバイタルデータと急ブレーキなどの車両操作データを結び付け、両者の相関を分析する計画です。狙いは、どのような体調のときに危険な挙動が起きやすいかを明らかにし、体調と運転を結び付けた助言の仕組みを開発することです。将来は運転中の眠気や急なストレスを検知し、車から休憩を促すサービスへの展開も構想されています。運転者の体調を、事故の要因の一つとしてとらえた取り組みです。

カメラで測る健康管理を目指す

同社は「非接触でバイタル情報を取得し人々の健康を守る」を使命に掲げ、カメラで測る健康管理の普及を目指しています。想定する用途は、オンライン診療や見守りなどです。メディカル・データ・ビジョン株式会社のPHR(個人が健康・医療の記録を管理する仕組み)「カルテコ」には、2023年にセンシングの計測機能が加わりました。日々のバイタルが医療の記録と結び付けば、生活習慣病などの解析が進むと期待されています。

会社概要|株式会社センシング

千葉大学の研究を事業化

株式会社センシングは、2019年12月に設立され、本社は東京都港区にあります。同社は、千葉大学大学院情報学研究院の津村徳道准教授の研究室と共同研究を行ってきました。同研究室は、顔の動画をヘモグロビン(血液中で酸素を運ぶ赤いたんぱく質)などの色素成分に分けて脈波を推定する研究を進めています。津村研究室は、高額な機器に代わる安価なカメラによる非接触のバイタル・情動センシング(体や感情の状態を推定する技術)を研究してきました。同社は金一石氏が代表取締役を務め、千葉大学発の企業として技術の商用化を進めています。

提携と採択を重ねる

同社は2021年8月、株式会社アウトソーシングテクノロジーと戦略的提携を結び、技術提供を始めました。2022年には「Plug and Play Japan」のアクセラレータープログラム(大企業との協業を支援する育成事業)のモビリティ(移動・交通)部門に採択されて成果発表会で表彰を受け、マイクロソフトの「Microsoft for Startups」にも採択されています。同年11月にはメディカル・データ・ビジョン株式会社と資本業務提携を結び、2025年3月にはISMS(情報セキュリティの管理体制に関する認証)を取得しました。

実証を重ねて用途を開拓

同社は、メンタルクリニックや人材サービス企業、スポーツジム、高齢者施設との実証実験を通じて、用途を探ってきました。その過程で、iOS版とAndroid版のデモアプリも開発しました。事業の柱は、非接触で生体情報を取得する技術を活用したサービスの開発、販売、サポートです。2022年には、岡山県吉備中央町のデジタル田園都市構想(デジタル技術で地方の課題を解く国の構想)に推進ワーキングチームとして参画しました。

会社情報

会社名株式会社センシング
所在地東京都港区愛宕2-5-1 愛宕グリーンヒルズMORIタワー34F
設立2019年12月16日
代表代表取締役 金一石
資本金2,000万円
事業非接触生体情報取得技術を活用したサービスの開発、販売、サポート等
技術領域カメラで撮影した顔の動画から脈拍数・呼吸数・LF/HFなどを測る非接触バイタルセンシング技術「SENSING」
連携株式会社アウトソーシングテクノロジー(戦略的提携・2021年)、メディカル・データ・ビジョン株式会社(資本業務提携・2022年)、株式会社KINTO(実証への技術提供・2026年)
採択Plug and Play Japan アクセラレータープログラム Summer/Fall 2022 Batch(Mobility部門)、Microsoft for Startups(2022年)
URLhttps://sensing-art.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

センシングの技術は、誰もが持ち歩くスマートフォンのカメラを、体調を測る道具に変える点に特徴があります。大学の研究室で積み重ねられた画像処理の知見を、アプリとして日常に届けようとする姿勢が印象に残りました。測られる側に機器を持たせない発想は、健康管理を続けるうえでの手間を減らすものです。

活用の場は、職場の健康管理から自動車の安全運転へと広がりつつあります。千葉大学からは医療やヘルスケアの分野でもスタートアップが生まれており、その顔ぶれを紹介したのが千葉大学発スタートアップ10選です。カメラ越しの健康管理がどこまで身近になるのか、今後の展開に注目していきます。

FrontJournal編集部

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月29日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら

この企業について、
もっと深く知りたい方へ

パートナーシップ・お問い合わせはこちらから。