2026.10.21 │ NEDO・神戸大学・島津製作所 │ 元発表:2026.10.20

神戸大学ら、自動メタボローム解析システムを世界で初めて開発

ニュース紹介

「世界初の自動メタボローム解析システムを開発しました~微生物の培養から試料採取~抽出までを一気通貫で自動化~」

NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、「植物等の生物を用いた高機能品生産技術の開発」で、神戸大学と島津製作所と共同で、微生物の培養から試料採取、細胞内の代謝反応の停止、遠心分離、代謝物の抽出、分析用プレートへの分注までを一体化した自動メタボローム解析システムを、世界で初めて開発した。あらかじめ設定した時刻に培養液を自動で採取し、冷却した溶液と混ぜて代謝反応を止めたうえで、細胞の回収と代謝物の抽出を自動で行う。試料はバーコードで管理され、液体クロマトグラフィー質量分析装置で測定できる状態まで調製できる。本システムは神戸大学に構築した「DBTL型スマートセル開発拠点」に実装されており、企業が利用できるという。

出典:NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構) 2026年10月20日 発表(掲載誌:Analytical Chemistry/2026年10月19日付オンライン掲載/DOI: 10.1021/acs.analchem.6c01820)
https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101976.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

メタボローム解析は、細胞に含まれる糖やアミノ酸、有機酸などの低分子化合物をまとめて測定し、細胞の状態や反応を調べる方法です。遺伝子やタンパク質の情報と比べ、細胞の実際の活動状態をより直接的に反映するとされ、微生物を使って化学品や有用物質を作る「バイオものづくり」で、生産性の高い菌株を選ぶ際に使われます。

課題は、細胞内の代謝物の中に、環境の変化に応じて数秒以内に量が変わるものがあることです。このため、培養液を採取した直後に代謝反応を止め(クエンチング)、同じ手順と時間で細胞を処理する必要があります。これまでは採取、冷却、遠心分離、上澄み液の除去、抽出液の添加などを人が行うことが多く、作業者や試料数による時間差が避けられませんでした。

①採取から抽出までを自動化し、試料の取り違えを防ぐ仕組みを備えた

発表によると、本システムはサンプリング、クエンチング、冷却遠心、液体除去、チューブ搬送、分注、加熱しながらの振とう・撹拌抽出などを担うユニットと、それらを制御するソフトウェアで構成されています。培養液は培養槽から約13秒で代謝反応停止用のチューブに到達します。各試料にはバーコードが付けられ、培養槽、採取時刻、処理工程、分析用プレート上の位置が自動的にひも付けられます。さらに、カメラ画像による工程監視、光学センサーによる細胞沈殿の再懸濁確認、バーコードによる試料照合を組み合わせた多重チェック機構を搭載し、温度や装置動作、画像、試料IDが記録されます。

②大腸菌4株で、増殖速度が近くても代謝の挙動が大きく異なることを示した

研究グループは本システムで、産業利用されている4種類の大腸菌を対象に、培養開始から19時間までの代謝変動を連続して測定しました。増殖速度が類似している時点でも、細胞内の糖、アミノ酸、エネルギー関連物質の量やその変化の挙動が株ごとに大きく異なることが明らかになったと説明しています。例えばW株では一部のアミノ酸が比較的多く、C株では糖の代謝やテルペン類の合成につながる経路の中間物質に特徴的な変化が見られたとのことです。この結果から、生産性の高い微生物を構築するには、増殖速度だけでなく、細胞内部の代謝状態を直接比較することが重要だとしています。

編集部からひとこと

今回の成果は、メタボローム解析の前処理を人手から装置へ移し、時刻や温度、試料IDを記録して処理の再現性を確かめられるようにした点にあります。発表では、研究機関が異なる場合でも比較できるデータが得られるため、標準化技術としての展開も期待されるとしています。一方、実際に企業の菌株選定や生産条件の最適化でどれだけ研究開発期間が短縮されるかは、今後の利用実績で見えてくる段階です。拠点を利用する企業がどの用途で使い始めるかが注目点です。

FrontJournal編集部

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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