インフォステラとの提携を解説します。">
小型衛星の運用を支える地上局サービスを提供する SSC Space(スウェーデン発)

小型衛星の運用を支える「地上局サービス」を提供【SSC Space|スウェーデン発】

小型衛星の打ち上げが世界で相次ぎ、衛星と交信する地上局(衛星と電波をやり取りする地上のアンテナ設備)の確保が、運用者の課題になっています。この課題に取り組むのが、スウェーデンのエスエスシー・スペース(以下SSC Space、旧スウェーデン宇宙公社)です。同社は世界各地に持つ地上局で衛星との交信やデータの受信を代行する「地上局サービス」を提供しています。2025年11月には、小型衛星向けの新サービスSSC Space Go」の開始を発表しました。

衛星通信の課題

SSC Spaceの紹介と、衛星の急増で地上局が不足し、交信の機会が短く限られる課題を示す図

衛星が増え地上局が不足

低い軌道を回る小型衛星が世界で急増し、衛星と交信する地上局の需要が高まっています。欧州宇宙機関(ESA)は、軌道上の衛星が2030年には約10万機に達する見込みだとしています。衛星の数に対して地上局の整備が追いつかなければ、撮影したデータを地上へ降ろす機会が限られ、衛星の価値を生かしにくくなります。

交信の機会が短く限られる

低軌道の衛星は地球の周りを高速で回るため、1か所の地上局から見える時間は周回のごく一部に限られます。世界各地にアンテナを置けば交信の機会は増えますが、用地の確保や設備の運用に費用と人手がかかります。自前で地上局網を整えにくい小規模な運用者ほど、データを受け取るまでの待ち時間が長くなりやすい状況です。

  • 地上局
    衛星に指令を送ったり、衛星が集めたデータを受け取ったりする地上のアンテナ設備。衛星が上空を通る間だけ交信できる。
  • 低軌道
    高度およそ2,000km以下の軌道。地球観測や通信の小型衛星の多くがここを回り、約90分から2時間で地球を1周する。

SSC Spaceが「地上局サービス」を提供

SSC Spaceが提供する地上局サービスの、高緯度の拠点網と運用の自動化を示す図

課題解決に挑むSSC Space

SSC Spaceは、世界各地の地上局で衛星との交信やデータの受信を代行する、スウェーデンの宇宙インフラ企業です。1972年に設立されました。出発点は、欧州宇宙研究機構(ESRO、欧州宇宙機関の前身)が1964年に北部キルナ近郊へ設けた射場「Esrange(エスレンジ)」の所有と運営を引き継いだことです。

高緯度の拠点で交信機会が拡大

同社は自社で運用する10局と提携先の11局からなる地上局網で、衛星の追跡・管制とデータの受信を請け負います。2000年に米国のUniversal Space Networkを買収して海外へ広げ、2009年にはカナダ北部のイヌビックに地上局を開設しました。小型衛星向けの「SSC Space Go」は、Esrange、米アラスカ、イヌビック、西オーストラリア、チリ南部のプンタ・アレナスの5拠点で、4m級のアンテナ13基を使えます。北極圏や南米南端など高緯度の拠点を組み合わせ、幅広い低軌道の衛星に対応できる配置にしています。

運用の自動化で導入が迅速に

「SSC Space Go」は、共通の様式で設定を1回済ませれば、ネットワーク全体のアンテナを使える仕組みです。利用者は交信したい時間枠を予約するだけで、衛星の管制と観測データの受信に使えます。2026年3月には米Kratosのソフトウェア基盤「OpenSpace」の導入を発表し、衛星が上空を通るたびに設備の構成を自動で切り替えられるようにしました。衛星ごとに専用の機材や手順をそろえる手間が減るため、運用者は準備にかかる期間を短縮できます。

  • Esrange
    スウェーデン北部、北極圏のキルナ近郊にある宇宙センター。観測ロケットの射場として1966年に初打ち上げを行い、現在は地上局の拠点も兼ねる。
  • 追跡・管制
    衛星の位置を測り、状態のデータを受け取り、指令を送る運用業務。英語の頭文字でTT&Cと呼ばれる。
  • OpenSpace
    米Kratosが提供する地上局向けのソフトウェア基盤。アンテナの信号処理をソフトウェアで行い、衛星ごとの設定を自動で切り替える。

地上局サービスの未来

地上局サービスが観測データの即時配信と宇宙利用の裾野拡大をもたらし、日本のインフォステラと提携したことを示す図

観測データの即時配信が可能に

地上局の共同利用が広がれば、衛星が撮影した画像やデータを短い待ち時間で利用者へ届けられます。これまでは自社の地上局の上空を衛星が通るまで、データの受信を待つ必要がありました。「SSC Space Go」は受信したデータをほぼリアルタイムで届けることを掲げ、複数の拠点を切り替えて使うことで交信の機会を増やせます。災害時の被害の把握や農地の生育の確認など、衛星データを使うサービスの鮮度が上がる可能性があります。

宇宙利用の裾野拡大を目指す

同社は、小規模な運用者でも衛星を運用しやすい環境を目指しています。「SSC Space Go」は、大型で高価なアンテナを必要としない小型衛星や、多数の衛星を連携させるコンステレーションの運用者を対象にしたサービスです。拠点は需要の拡大に合わせて増やす計画が示されています。大学や地方の企業が自前の設備を持たずに衛星を運用できれば、宇宙から得たデータを使うサービスがより身近になります。

インフォステラと日本で提携

2026年7月、SSC Spaceは日本のインフォステラ、セーレンとともに、小型衛星「FUSION-1」へ「地上局サービス」を提供すると発表しました。インフォステラの地上局仮想化プラットフォーム「StellarStation」を通じて、「SSC Space Go」の地上局網を使う形態です。「FUSION-1」は、繊維メーカーのセーレンが主体となり、福井県の補助金を活用して福井大学などと進める産学官連携の衛星ミッションです。日本企業が運用する衛星が海外の地上局網を日常の運用で使う事例となり、国内の小型衛星も交信の選択肢を広げやすくなります。

  • コンステレーション
    多数の衛星を連携させて1つのシステムとして運用する方式。衛星の数が多いため、交信の機会を確保する地上局の役割が大きい。
  • 地上局仮想化
    複数の事業者の地上局をソフトウェアでまとめ、1つの窓口から予約・利用できるようにする仕組み。

まとめ

小型衛星の急増で、衛星と交信する地上局の確保が運用者の課題になっています。SSC Spaceは1972年以来の地上局運用の実績を基に、小型衛星向けの「SSC Space Go」で地上局の共同利用を広げています。インフォステラとの提携により、日本企業が運用する小型衛星も同社の地上局網を使い始めました。地上局を共同で使える環境は、衛星を運用する大学や企業の負担を下げる手段になります。FrontJournal編集部は、「地上局サービス」が小型衛星の運用を支える基盤として広がることに期待しています。

※ 本記事は各社の公式発表・主要報道をもとに、FrontJournal編集部が再構成したものです。数値は各社・各媒体の公表値です。
主な出典:SSC Space の公式サイト各ページ、Kratos の発表、欧州宇宙機関(ESA)、インフォステラ・セーレンとの共同発表。

この記事の作者

FrontJournal編集部

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