点群ラボ|数十億点の点群を間引かず処理する電気通信大学発ディープテック

株式会社点群ラボ

株式会社点群ラボ「大規模点群処理」を開発

企業紹介|株式会社点群ラボとは?

レーザーで測った数十億点の3次元データ(点群)を、間引かずに処理する技術「大規模点群処理」。株式会社点群ラボは、その社会実装を目指す、電気通信大学発のディープテック企業です。導水管などの点検に使う点群解析システムを、インフラの維持管理や工場設備の現場向けに開発しています。

キーワード「大規模点群処理」

「大規模点群処理」は、数十億点から百億点を超える点群を、間引かずに実用的な時間で処理する技術です。特徴は、点群をファイルや幾何構造ごとに分けて処理し、結果を統合することで、通常のPCでも扱える点にあります。森林の樹木の抽出や導水管の壁面の変状確認などの現場で、微細な形状を残したまま情報を取り出せます。

市場課題|取得した点群を現場で活用しにくい

現状の大規模点群の課題

点群は取得しやすいが処理に時間

測量用レーザースキャナや移動計測技術の進歩で、広範囲で高密度な3次元点群の取得は容易になった一方、業務で使うまでの処理に時間を要します。活用には、大規模データの処理、対象物の抽出、変状(構造物の剥落などの異常)の可視化、3Dモデル化が必要です。手作業で行う工程が多く、十分に活用できていない現場があります。

間引くと微細な形状が失われる

大きく間引けば処理は軽くなりますが、高性能な3Dスキャナで取得した微細な形状情報が失われます。数十億点から百億点を超える大規模点群は、通常のPCのメモリに収まりにくく、処理にも時間を要します。間引かずに扱うには、専用の処理が欠かせません。

他にも、導水管の点検は暗所や閉鎖空間での危険な作業です。約1か月にわたる立入りが必要で、発電所の停止による発電収入への影響も生じます。作業者の高齢化、人材不足、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 点群レーザースキャナなどで対象物の表面を測り、各点の位置を3次元の座標で記録したデータの集まりを指す。点の数が多いほど形状を細かく表せるが、データ量も膨大になり処理に時間を要する。

株式会社点群ラボの強み|「大規模点群処理」を開発

株式会社点群ラボが「大規模点群処理」を開発

通常のPCで数十億点を処理

従来の点群処理は、手作業で整理する工程が多く、数十億点規模では時間を要していました。

同社は、大規模点群を効率よく処理するアルゴリズムとソフトウェアモジュールを開発しています。TLS(地上型レーザースキャナ)で取得した構造化点群は、点が格子状に並ぶ性質を使い、ファイルごとに処理して結果を統合する方式です。非構造点群(格子状の並びを持たない点群)は、幾何的な構造で分割して処理し、結果を統合します。森林の点群では、約70億点を通常のPCで約20分で処理し、約1300本の樹木を検出した実績です。通常のPCでも数十億点を扱えるようになり、必要な情報を短い時間で得られます。

間引かず微細な変状を可視化

点群を大きく間引くと処理は軽くなりますが、壁面の微細な凹凸が失われます。

同社は、点群を間引かずに処理し、壁面の微細な劣化や変状を形状の凹凸として捉えます。暗所では色の情報(RGB画像)を得られない場合があるため、点群をメッシュ(面の集まり)に変換して陰影処理を施し、凹凸を見分けやすくします。管状の構造物では、壁面を平面に展開して2次元画像で表示し、基準形状(比較の基準となる形)からの凹凸量に応じて色付けする方式です。剥落部や付着物の位置と範囲を、視点を変えずに広い範囲で確認できるようになります。

FrontJournalの解説
  • 構造化点群TLSなどで取得した、点が格子状に整然と並ぶ性質を持つ点群を指す。並びの規則を使うと、点群をファイル単位で効率よく処理し、後から結果を統合できる。

大規模点群処理の未来|インフラ点検から工場・森林への応用

大規模点群処理が変える未来

導水管の壁面を連続して確認

大規模点群処理は、水力発電所の導水管(水車へ水を導く管路)の変状の可視化で実証されています。秋田県の杉沢水力発電所での実証では、全長約4.5kmの導水管を415箇所で計測し、約5日で約41.5億点の点群を取得しました。壁面を平面に展開し、基準面からの差分として凹凸を検出することで、剥落や付着などを連続的に確認できる可視化データを作成しています。同社は、秋田県との協業で、計測から現場確認までを点群でつなぐ管路点検の仕組みを開発しています。

ロボットの配線を3Dモデル化

工場の点群からロボットを検出し、設計データであるCAD(コンピュータ上の設計図)のモデルへ置き換える手法は、他社へ提供できる状態です。ロボットの位置と姿勢を点群から高精度に算出し、CADモデルとの差分からワイヤハーネス(ロボットの各部をつなぐ配線)の3Dモデルを自動で生成する流れです。配線のないモデルでシミュレーションすると、実機の配線との干渉を事前に確認できず、現場で干渉が起き、機器の損傷や動作生成のやり直しにつながるおそれがあります。そこで、実際の配線を含む3Dモデルを、衝突判定のシミュレーションに使います。

点検の効率化と省人化を目指す

同社は、計測から変状マップ(変状の位置を示す図)の生成、オフィスでの事前確認、現場での確認、補修判断までを一連の流れとして整理しています。目指すのは、効率化、省人化、安全性向上です。大規模点群処理は、森林の樹木の抽出や送電鉄塔の部材の検出にも応用されています。

会社概要|株式会社点群ラボの事業内容・設立背景

電気通信大学の研究から事業化

株式会社点群ラボは、2025年4月3日に設立されました。代表取締役の増田宏氏は、電気通信大学の教授で、専門は3次元形状処理です。2005年に5000万点規模の発電所の点群を入手したことをきっかけに、大規模点群処理の研究を始めました。大学で培われた研究成果の社会実装を進めています。

秋田県の事業で採択

経済産業省のスマート保安実証支援事業において、秋田県が提案した「3Dスキャン技術の活用による水圧鉄管等の健全性評価実証事業」が採択されました。杉沢水力発電所の導水管での実証では、同社が大規模点群処理と変状の可視化手法の開発を担当しました。2026年6月には、秋田県の「柴平・八幡平発電所 水圧鉄管等調査(3Dスキャン)企画提案競技」に、2025年度に引き続き採択されています。

点群解析からPoCまで対応

同社は、顧客の業務課題に応じて、点群処理システムや解析システムを開発しています。主なサービスは、点検・維持管理のための点群解析、現況把握のための大規模点群処理、点群からの3Dモデル生成、PoC(概念実証)などです。対応領域は、大規模インフラ・産業設備、工場・プラント、森林・自然環境、道路空間(車載の移動計測データ)などです。

会社情報

会社名株式会社点群ラボ(Tengun Lab Inc.)
所在地東京都調布市調布ヶ丘1-5-1 電気通信大学 西11号館4F
設立2025年4月3日
代表増田 宏(代表取締役)
事業大規模点群データの処理・解析、3D計測データの成果化、AI・認識アルゴリズム開発、点群処理システム開発
技術領域大規模点群処理、変状・劣化の可視化、点群からの3Dモデル作成、点群からの対象物検出
連携秋田県と管路点検の仕組みを開発
採択経済産業省のスマート保安実証支援事業において、秋田県提案の事業が採択(同社は開発を担当)。秋田県「柴平・八幡平発電所 水圧鉄管等調査(3Dスキャン)企画提案競技」に採択(2026年6月)
URLhttps://tengunlab.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

点群は、取得しやすくなった一方で、処理が追いつかなければ使えないデータです。数十億点を間引かずに扱う技術は、点検や設備管理の現場がデータを判断に使うための土台になります。導水管、森林、工場など複数の対象に点群処理を適用している点が、同社の特徴です。秋田県の水力発電所で行われた実証は、その一例です。各地の設備点検へ、この技術が広がることが期待されます。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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