デバイスラボ「広帯域雑音計測」を開発

株式会社デバイスラボ

デバイスラボ「広帯域雑音計測」を開発|技術領域=雑音プローブ・広帯域の雑音計測/強み=中間帯域を測る・低温域へも拡張/将来性=量子コンピュータ・メモリ素子へ

企業紹介|株式会社デバイスラボとは?

電子部品の性能を左右する雑音を、広い周波数の範囲でとらえる技術である「広帯域雑音計測」。株式会社デバイスラボは、その社会実装を目指す、筑波大学発の半導体系ディープテック企業です。半導体素子の雑音を測る雑音プローブ「Entrope」を、電子デバイスの研究開発の現場へ提供しています。

キーワード「広帯域雑音計測」

「広帯域雑音計測」は、半導体素子が出す雑音を、低い周波数から高い周波数まで、周波数の切れ目なく測ることを目指す技術です。雑音は、素子の品質を映す指標になります。測定する周波数の範囲が連続していれば、素子の振る舞いを帯域全体で調べられます。

市場課題|微細化で目立つ、雑音の計測の壁

現状の雑音計測の課題|現状は、中間の帯域と極低温が測りにくい|中間の帯域は・測定が難しい/極低温の雑音は・把握が難しい

中間の周波数帯が測りにくい

トランジスタの雑音は、低い周波数では1/f雑音が、高い周波数では熱雑音が目立ちます。2013年の筑波大学などの発表によると、従来の測定機器は、数百kHz以下の低周波数帯と1GHz付近以上の高周波数帯の雑音を計測できる一方、その中間には対応する計測機器がありませんでした。中間の帯域には、集積回路の設計に重要な現象が現れることが知られています。

極低温の雑音は把握が難しい

量子コンピュータの制御回路などでは、極低温の環境で動く電子回路の開発が進められています。極低温の環境では、素子の雑音の振る舞いが室温と異なる可能性があります。極低温の環境で、広い周波数の雑音を実測することが課題です。

他にも、極低温の素子の雑音を予測する素子モデルを作ること、中間の周波数帯の雑音を回路設計に生かすこと、MOSFETの雑音特性を深く理解すること、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 1/f雑音周波数が低いほど大きくなる雑音である。トランジスタでは、ゲート酸化膜の品質などと関わる指標として扱われ、素子の評価に使われる。

デバイスラボの強み|「広帯域雑音計測」を開発

デバイスラボが「広帯域雑音計測」を開発|現在は、広帯域の雑音プローブを提供|プローブで・中間帯域を測定/室温から・低温域へ拡張

プローブで中間帯域を測る

従来の計測器では、中間の周波数帯の雑音を連続して測ることが難しい状況でした。

同社は、大学での研究を基に、低雑音の増幅回路(IC)を内蔵した雑音プローブ「Entrope」を製品化しています。製品の仕様上、測定できる周波数は100kHzから200MHzです。ノイズフロア(測定器自体の雑音の下限)は、型番101Aで10MHzにおいて約3×10の-23乗A²/Hzです。最大バイアス電圧は40V、最大ドレイン電流は5mA(高電流型は30mA)で、素子の電気的な条件を変えながら測れます。従来は測りにくかった中間の周波数帯の雑音を、素子の評価に使えるようになります。

低温域へ測定を広げる

極低温の環境で、広い周波数の雑音を測ることは課題でした。

同社は、極低温へ向けて、広帯域の雑音計測の温度範囲を広げています。2021年には、300Kから120Kまでの温度範囲で、広帯域の雑音を測定しました。同年5月に示した目標は4K(約マイナス269度、液体ヘリウムの温度付近)です。2022年12月には、クライオエレクトロニクス向けの雑音計測システムを公表。極低温で動く電子回路の開発に向け、温度を下げながら素子の雑音を実測でき、低温での素子の振る舞いを確認できるようになります。

FrontJournalの解説
  • クライオエレクトロニクス極低温の環境で電子回路を動かす技術である。量子コンピュータの制御回路などで、実用に向けた研究が進められている。

広帯域雑音計測の未来|量子コンピュータなどへの応用

広帯域雑音計測が変える未来|素子の評価から回路設計へ|電子デバイスの・進化を支える/メモリ素子の・特性評価へ/雑音を考慮した・回路設計を目指す

電子デバイスの進化を支える

デバイスの雑音計測は、電子デバイスの評価に使われる技術です。雑音は、素子の品質を映す指標のひとつです。低周波の雑音は、ゲート酸化膜の品質の評価に使えます。高周波の雑音は、素子の熱雑音の水準の把握に使える点が特長で、計測の範囲が広がるほど、評価できる観点も増えます。

メモリ素子の特性評価へ

メモリ素子の特性評価にも、技術を広げています。ソフトウェアは、Keysightの計測器を使った1/f雑音の測定用を用意。メモリスタ(抵抗が履歴に応じて変わる素子)の制御ソフトは、書き込み、読み出し、検証、リフレッシュを扱う内容です。素子の特性を、雑音と動作の両面から調べられるようになります。

雑音を考慮した回路設計を目指す

2026年2月、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のポスト5G関連事業「量子コンピュータ向けクライオエレクトロニクスデバイス技術の研究開発」に採択されました。この事業で「Noise-Aware」CMOS(ICの主流の回路技術)IC設計の提案を目指しています。雑音を考慮した集積回路の設計を目指す内容です。超伝導回路方式や半導体スピン方式の大規模量子コンピュータには、極低温エレクトロニクスの更なる高性能化が不可欠だと、同社は説明しています。

会社概要|デバイスラボの事業内容・設立背景

筑波大学の研究から事業化

株式会社デバイスラボは、2017年4月3日に設立されました。代表の大毛利健治氏は、名古屋大学で博士の学位を取得後、2010年から2017年まで筑波大学で准教授を務めました。2008年から2013年には、JST-CRESTの研究を率いています。2017年3月に大学を離れ、筑波大学発ベンチャーとして設立しました。

助成と採択で開発を継続

2021年11月には、NEDOのSBIR(中小企業の研究開発を支援する制度)に採択されました。テーマは、大規模量子ビット制御に向けた極低温環境下での広帯域雑音計測技術開発です。2023年12月には広沢技術振興財団に、2025年2月には市村清新技術財団に採択されています。2023年3月には、国際会議EDTM 2023でBest Contributed Paper Awardを、同社の論文が受賞しました。

製品販売と受託研究が事業

事業は、製品販売、受託研究・計測サービス、計測ソフトウェアの提供です。製品は、雑音プローブ「Entrope」です。受託研究では、提案、研究開発、測定、データ解析、発表までを扱います。計測サービスは、1Hzから1MHzの低周波雑音(ゲート酸化膜の品質の評価用)と、Entropeによる100kHzから100MHzの高周波雑音(熱雑音の水準の評価用)を対象としています。製品の仕様上限は200MHzで、計測サービスの対象範囲は100MHzまで。

会社情報

会社名株式会社デバイスラボ(Device Lab Inc.)
所在地茨城県つくば市東光台5丁目4番地2
設立2017年4月3日
代表大毛利 健治
事業雑音プローブ「Entrope」の販売。受託研究。計測サービス
技術領域広帯域雑音計測。極低温での雑音計測
連携D-Clue Technologies、東京工業大学(代表の大学在任時の共同研究、2013年)
採択NEDO SBIR(2021年11月)。広沢技術振興財団(2023年12月)。市村清新技術財団(2025年2月)。NEDOポスト5G関連事業(2026年2月)
URLhttps://www.devicelab.co.jp

編集後記|FrontJournal編集部より

素子が出す雑音をどこまで広く測れるかは、電子デバイスの評価の幅を左右します。株式会社デバイスラボの「Entrope」は、従来は測りにくかった中間の周波数帯を、プローブで測る雑音計測の製品です。特徴は、極低温へ向けて計測技術を磨いてきた点にあります。

量子コンピュータの制御回路のように、極低温で動く電子回路の開発では、雑音の実測データが設計の土台になります。大学の研究を事業にした取り組みは、電子デバイスの評価を支える挑戦です。今後も注目していきます。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら

この企業について、
もっと深く知りたい方へ

パートナーシップ・お問い合わせはこちらから。