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NUProtein株式会社(エヌユープロテイン)

NUProtein「成長因子」を研究

企業紹介|NUProtein株式会社とは?

培養肉の細胞を増やすために使われる「成長因子」。NUProtein株式会社は、その社会実装を目指す、名古屋大学発のバイオ系ディープテック企業です。同社は、コムギ胚芽の抽出液や遺伝子組換えイネを使い、培養肉メーカーなどに向けた成長因子の生産方法を研究しています。

キーワード「成長因子」

成長因子は、細胞に増殖を促す信号を伝えるタンパク質です。培養肉は、動物の細胞を培地(細胞を育てる栄養液)の中で増やしてつくるため、成長因子が欠かせませんが、動物などから取得する従来の成長因子は高額です。NUProteinは、植物であるコムギ胚芽やイネを使ってつくる方法を研究しています。

市場課題|培養肉の価格を押し上げる成長因子

現状の成長因子の課題

成長因子が高額で培養肉が高価に

培養肉の製造では、培地に加える成長因子が必要で、広く使われてきたものは動物などから取得するため高額です。このため成長因子は、培養肉の製造コストの大部分を占めると日立造船は説明しています。成長因子の価格が下がらなければ、培養肉の価格も下がりにくくなります。

培養と精製の設備で量産しにくい

成長因子は、動物の細胞や大腸菌に遺伝子を入れて、つくらせる方法で得られてきました。この方法には、細胞を培養する設備に加え、目的のタンパク質だけを取り出す精製(不純物を取り除く工程)が必要です。生産量を増やすには設備と工程ごと大きくする必要があり、需要が伸びても供給を広げにくくなります。

他にも、動物の細胞に混ざる感染症のウイルスへの対策、大腸菌でつくる際に混ざる内毒素(大腸菌などの細胞壁に含まれる有害な物質)の除去、動物細胞で合成を終えるまでの1か月以上の期間、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 培地細胞を増やすための栄養分を含む液体である。培養肉では、動物の細胞を培地に入れて増やし、成長因子などのタンパク質を加えて増殖を促す。

NUProtein株式会社の強み|「成長因子」を研究

NUProteinが「成長因子」を研究

コムギ胚芽の抽出液で安価に合成

無細胞合成(細胞を使わず抽出液の中でタンパク質をつくる方法)は、合成を妨げるトリチン(コムギ胚芽に含まれる物質)を含まない専用農場産の胚芽が一般に必要なため、原料費がかさみました。

同社は、製粉所の副産物であるコムギの胚芽から、通常の胚芽でも合成に使える抽出液をつくる工程を設計しました。この抽出液に、成長因子の遺伝情報を写し取ったmRNA(遺伝情報を運ぶ分子)を入れると、抽出液の中で成長因子が合成されます。専用農場の胚芽を使う方法より原料費を抑えられ、細胞を増やして培養する工程も要りません。培養肉メーカーが成長因子を安く調達しやすくなり、培養肉の価格を下げる余地が広がります。

イネの種子に成長因子を蓄える

細胞や抽出液を使う方法は、合成のたびに原料と装置を用意するため、量を増やすほど手間と費用が増えます。

同社は、遺伝子を組み換えたイネの種子に、成長因子を蓄えさせる方法を研究しています。種子の胚乳(栄養を蓄える部分)はタンパク質を貯蔵する性質を持ち、遺伝子の組み換えによって成長因子の貯蔵場所になります。栽培は温室型の閉鎖環境で行う計画です。栽培面積を広げれば生産量も増やせるため、細胞や装置を増設する方法に比べ、量を増やす負担が小さくなります。培養肉メーカーは、必要な量の成長因子を計画的に確保しやすくなります。

FrontJournalの解説
  • 無細胞合成生きた細胞を使わず、細胞から取り出した抽出液にmRNAを加えて、試験管内でタンパク質を合成する方法である。細胞を培養する工程が要らない。

成長因子の未来|自動化から培養魚肉、イネの量産へ

低コストを目指す成長因子が変える未来

抽出液の製造を機械で自動化

同社は日立造船と共同で、成長因子の原料にあたるコムギ胚芽抽出液の製造工程を、自動化する装置を開発しました。手作業を再現したロボット制御と装置の製作は日立造船が、原料と抽出プロセスの最適化はNUProteinが担当しています。日立造船の発表によると、1か月の稼働で約3トンの培養魚肉に必要な成長因子を製造できる装置です。人の手で行っていた抽出液の製造が機械に置き換わり、培養肉向けの成長因子を繰り返し製造する土台が整います。

ウナギ培養肉向けに提携

NUProteinは2023年1月、シンガポールの培養魚肉のスタートアップ「Umami Meats」と、成長因子の生産システムを提供する提携を結びました。Umami Meatsは、NUProteinの技術を、ニホンウナギの培養肉づくりに使う予定です。成長因子の調達費が下がれば、需要の高い魚種の培養肉が普及しやすくなります。

イネで成長因子の量産を目指す

コムギ胚芽に続く素材として、同社は2023年1月に、遺伝子組換えイネによる成長因子の製造を始める方針を示しました。また、京都府立大学や奈良先端科学技術大学院大学などに、連携を求めたとされています。温室型の閉鎖環境で育てるイネを使う生産基盤を、共同開発やライセンスの形でも提供する方針です。実現すれば、培養肉メーカーは、成長因子の調達先と方法を選べるようになります。

会社概要|NUProtein株式会社の事業内容・設立背景

名古屋大学発の設立背景

NUProtein株式会社は、2016年8月に設立された、名古屋大学発のベンチャー企業です。名古屋大学の研究者紹介には、設立時に取締役を務めた野元美佳氏が、在学時に試験管内でタンパク質を合成するシステムを開発し、会社の設立に携わった、と記されています。創業当初は医療分野への応用を目指していましたが、製造の安定性や安全性の面で参入の壁が高いとして、市場の伸びが期待できる培養肉を主な用途に据えました。2023年1月時点のイークラウドの募集ページには、南賢尚氏が2016年8月に名古屋大学を退職して同社の代表取締役に就任したと記載されています。

採択・連携

同社は、大学や企業と連携しながら研究を進めています。2021年6月には、奈良先端科学技術大学院大学の加藤晃教授のグループとの共同研究で見いだした翻訳エンハンサー(タンパク質の合成を促す配列)を使う、無細胞合成用の試薬の販売が始まったと発表されました。2022年3月に結果が報告された、JETRO(日本貿易振興機構)の補助事業では、海外の培養肉メーカーに成長因子の合成用キットのサンプルを提供する実証に取り組みました。2023年には、日立造船との装置の共同開発と、Umami Meatsとの提携が発表されています。

資金調達

2021年10月、株式投資型クラウドファンディング「イークラウド」で、343名の個人投資家から5,738万円を調達しました。株式投資型クラウドファンディングは、多数の個人投資家が株式を購入する形の資金調達です。調達した資金は、海外向けの事業開発と、コムギ胚芽由来のタンパク質合成技術の改良に充てられました。2023年1月には2回目の募集を行い、資金はイネの栽培用の植物工場の設置などに充てる計画が示されました。

会社情報

会社名NUProtein株式会社(NUProtein Co., Ltd.)
設立2016年8月
代表南賢尚(代表取締役・2023年1月時点)
調達株式投資型クラウドファンディング(2021年10月に5,738万円、2023年1月に2回目の募集)
事業成長因子など、培養肉向けタンパク質の研究開発
技術領域無細胞合成(コムギ胚芽抽出液)。遺伝子組換えイネによる成長因子の生産
連携奈良先端科学技術大学院大学(無細胞合成用試薬の共同研究)。日立造船(抽出液の製造装置の共同開発)。Umami Meats(成長因子の生産システムの提供)
採択JETRO 中堅中小企業輸出ビジネスモデル調査・実証事業費補助金(2022年3月に結果報告)
URLhttps://nuprotein.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

NUProtein株式会社は、培養肉の価格を左右する成長因子に絞り、コムギ胚芽の抽出液から遺伝子組換えイネへと、材料を広げながら研究を進めてきた点が特徴です。培養肉そのものではなく、その材料の価格に向き合う姿勢といえます。植物を使う発想は、動物由来ではない原料による供給の可能性を示しています。

とくに注目したのは、日立造船との装置開発のように、抽出液の製造という手間のかかる工程を自動化し、量産に近づける取り組みを進めている点です。成長因子が身近な価格になれば、培養肉の選択肢が広がります。今後の動きを見守りたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:名古屋大学 Researchers' VOICE(野元美佳氏)、奈良先端科学技術大学院大学 デジタルグリーンイノベーションセンター(2021年6月14日)、ニュースイッチ(2022年6月27日)、ニュースイッチ(2023年10月18日)、Food Tech Japan(2023年10月31日)、神戸新聞NEXT(2023年6月5日)、日経バイオテクONLINE(2023年1月6日)、JETRO 補助事業結果報告(PDF)、イークラウド(2023年1月)、Market Shake by GourmetPro(2023年1月26日)、NUProtein株式会社 公式サイト

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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