ビークル「バイオナノカプセル」を開発|リポソームと中空の粒子が肝細胞に届くイラスト

株式会社ビークル

ビークル「バイオナノカプセル」を開発|研究領域=ウイルスの外殻で・作る中空の粒子/強み=薬の運び役と・検出の試薬に活用/将来性=肝臓の新薬や・ワクチンを開発

企業紹介|株式会社ビークルとは?

薬を狙った細胞へ届けたり、目的のタンパク質を抗体で素早く検出したりする技術として、注目を集める「バイオナノカプセル」。株式会社ビークルは、その社会実装を目指す、岡山大学・神戸大学・大阪大学・慶應義塾大学発のバイオ系ディープテック企業です。タンパク質を抗体で検出するキット「Easy-WESTERN」などの研究用試薬を、生命科学の研究現場へ提供しています。

キーワード「バイオナノカプセル」

「バイオナノカプセル」は、B型肝炎ウイルスの外殻だけを酵母に作らせた、中が空洞のナノ粒子です。特徴は、ウイルスの遺伝子を含まないまま、ヒトの肝細胞を見分けるウイルス本来の性質を利用できる点にあります。薬の研究や生命科学の実験の現場で、薬の運び役や、タンパク質を検出する試薬として使えます。

市場課題|薬が正常な細胞にも作用し、タンパク質の検出にも手間がかかる

現状の薬の届け方と検出の課題|現状は、薬が全身に回り、タンパク質の検出も手間がかかる|薬が全身に回り・副作用が出る/タンパク質の・検出は手順が煩雑

薬が全身に回り副作用が出る

抗がん剤などの薬は、病気の細胞だけでなく正常な細胞にも作用し、強い副作用を引き起こすことがあります。副作用や繰り返しの投与で、患者の生活の質(QOL)は低下しやすくなります。薬が狙った場所以外にも広がるため、治療効果と患者の負担の両立は難しい課題です。

タンパク質の検出は手順が煩雑

タンパク質を調べるウェスタンブロット(抗体を使って特定のタンパク質を見つける方法)は、検出の手順が煩雑です。膜に写したタンパク質に一次抗体(調べたいタンパク質に結合する抗体)を反応させ、次に一次抗体の動物の種類に合わせた二次抗体を反応させる2段階の手順です。反応と洗浄を重ねるため、試料の多い研究ほど時間の負担が増えかねません。

他にも、細胞の中で働くタンパク質を外から導入する難しさ、世界で多くの人に持続感染するB型肝炎ウイルスへの対策、ワクチンの効果を高める抗原(免疫が異物と見分ける目印)の設計、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 二次抗体一次抗体に結合する抗体である。酵素や蛍光色素の目印を持ち、目的のタンパク質の位置を光や色で知らせる。一次抗体を作った動物の抗体の形を認識して結合する仕組みである。

ビークルの強み|「バイオナノカプセル」を開発

ビークルが「バイオナノカプセル」を開発|現在は、中空の粒子で研究用試薬を提供|肝細胞を見分けて・薬を届ける/少ない手順で・素早く検出

肝細胞を見分けて薬を届ける

薬をリポソーム(脂質の膜でできた小さな袋)に包む従来のDDS(薬を狙った場所へ届ける仕組み)では、特定の細胞を選ぶために目印の分子を別に付ける必要がありました。

バイオナノカプセルは、B型肝炎ウイルスの外殻にあるLタンパク質(外殻を作るタンパク質の一種)だけで組み立てた粒子で、ウイルスと同じくヒトの肝細胞を見分ける部位を表面に持っています。ビークルは、薬を包んだリポソームにこの粒子を融合させ、薬をヒトの肝細胞へ選んで届ける技術を開発しました。抗がん剤のドキソルビシンや、遺伝子の働きを抑えるsiRNA(短い二本鎖のRNA)を運ぶ製剤に応用しています。実用化されれば、薬が肝臓以外の組織へ届きにくくなり、副作用の負担を抑えた治療につながります。

少ない手順で素早く検出

従来の検出では、一次抗体の後に二次抗体を反応させる工程が必要で、二次抗体も一次抗体の動物の種類ごとに選び分ける必要がありました。

同社は、抗体の根元(Fc領域)をつかむ部位をバイオナノカプセルの表面に組み込み、1粒子に多数の抗体結合部位と酵素の目印を持たせました。粒子が一次抗体に直接結合して信号を出すこの仕組みを「MAD技術」(粒子で一次抗体を直接検出する技術)と名付け、ウェスタンブロット用キット「Easy-WESTERN」として商品化しています。一次抗体と試薬を先に混ぜれば、60分での検出が可能です。「Easy-WESTERN Multi」は哺乳動物の抗体を幅広く検出でき、動物の種類ごとに試薬を選び分ける手間が減ります。

FrontJournalの解説
  • リポソーム脂質の二重の膜でできた、小さな袋状の粒子である。中に薬を閉じ込めて体内へ運ぶことができ、実用化されたナノサイズの薬の運び役の代表例である。表面に目印を付けると、届け先を選ぶ働きを持たせられる。

バイオナノカプセルの未来|研究用試薬から肝臓の薬とワクチンへ

中空のバイオナノカプセルが変える未来|研究用試薬から肝臓の薬とワクチンへ広がる|研究用試薬として・実用化済み/粒子型ワクチンの・開発を推進/肝臓を狙う新薬の・実現を目指す

研究用試薬として実用化済み

バイオナノカプセルを用いた研究用試薬は、すでに販売されています。MAD技術は、ウェスタンブロット用キットに加え、ELISA(抗体と酵素の反応で物質の量を測る方法)の構築キット「Easy ELISA Constructor」にも使われています。同社はこのほか、B型肝炎ウイルスの表面抗原や、それに対する抗体を測る測定キットも製品化済みです。これらは自社のオンラインストアに加え、試薬販売の代理店からも購入が可能です。

粒子型ワクチンの開発を推進

同社は、バイオナノカプセルの構造を生かし、B型肝炎ワクチンをはじめとするワクチンを開発中です。バイオナノカプセルは、多数のタンパク質が膜を貫いて表面に並ぶ粒子です。抗原を粒子の表面に並べた構造は、免疫を引き出しやすく、ワクチンに適しているといわれています。実用化されれば、B型肝炎の予防や治療の選択肢が増えることが期待されます。

肝臓を狙う新薬の実現を目指す

肝細胞へ薬を届ける技術について、同社は肝臓の病気の新しい治療薬へ育てることを目指しています。抗がん剤を包んだ製剤「BNC-D」や、siRNAを体内で届ける仕組みは、いずれも非臨床(ヒトに投与する前の研究)の開発品です。粒子にタンパク質を入れて細胞内へ届ける技術もあり、細胞の中で働くタンパク質医薬への応用も視野に入れています。実現すれば、薬を肝細胞へ集めて肝臓以外の組織への作用を抑える治療が選べるようになり、患者の副作用の負担が軽くなることが期待されます。

会社概要|4大学の発明を実用化するビークル

4大学の発明から2002年創業

株式会社ビークルは、2002年8月に有限会社として設立され、2004年1月に株式会社へ移行しました。岡山大学、神戸大学、大阪大学、慶應義塾大学の4大学で発明されたバイオナノカプセルを実用化するため、4大学共同の大学発ベンチャーとして生まれた会社です。2003年に岡山リサーチパークインキュベーションセンターへ本社と研究所を置き、2005年には同センターに製造プラントを竣工しました。2012年には本社と研究所を京都市へ移転しています。

創業初期から受賞と採択

同社は、創業の初期から複数の賞を受けてきました。2004年に第4回バイオビジネスコンペジャパンで優秀賞を受け、2005年には大学発ベンチャー功労賞と、第4回バイオベンチャー大賞の文部科学大臣賞を受賞しています。2014年にはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の実用化支援の事業に採択されました。2023年には、小規模事業者持続化補助金にも採択されています。

試薬の販売で開発資金を確保

研究用試薬の製造・販売は、医薬品に関わる技術の開発資金を確保する同社の事業です。医薬品の技術は開発に長い期間を要するため、試薬事業がその開発を支える構成です。開発と製造は、品質マネジメントの国際規格「ISO9001:2015」の認証を受けた品質管理のもとで行っています。新型コロナウイルスの研究用試薬も発売し、オープンイノベーション(社外の技術や知見を取り入れる手法)を活用した新規事業の創出にも取り組んでいます。

会社情報

会社名株式会社ビークル(Beacle, Inc.)
所在地京都府京都市左京区吉田河原町14番地1
設立2002年8月12日(有限会社として設立。2004年1月に株式会社へ移行)
資本金5,000万円(公式サイト掲載)
事業医薬品・医薬部外品・試薬・機器等の研究・開発・製造・販売。研究用試薬「Easy-WESTERN」「Easy ELISA Constructor」、B型肝炎ウイルス関連の測定キット等
技術領域バイオナノカプセル(B型肝炎ウイルスの外殻タンパク質から作る中空のナノ粒子)。DDS・ワクチン・抗体を使ったタンパク質の検出
連携岡山大学、神戸大学、大阪大学、慶應義塾大学(設立時の4大学)
採択第4回バイオビジネスコンペジャパン優秀賞(2004年)。大学発ベンチャー功労賞(2005年)。第4回バイオベンチャー大賞 文部科学大臣賞(2005年)。NEDOの実用化支援の事業(2014年)。小規模事業者持続化補助金(2023年)
URLhttps://beacle.com/japanese/

編集後記|FrontJournal編集部より

ウイルスの外殻と同じ構造の粒子を酵母で作り、薬の運び役や実験の道具に生かす。バイオナノカプセルは、ウイルス本来の「肝細胞を見分ける力」を、遺伝子を持たない粒子で利用する発想から生まれた技術です。病原体の性質を役立つ形に変えて使う点に、生命科学の面白さを感じました。

ビークルは、医薬品の開発という時間のかかる挑戦を、研究用試薬の事業で支えながら続けてきた会社です。同じ粒子が、ある場面では薬を届ける乗り物になり、別の場面ではタンパク質を見つける目印になる。一つの基盤技術から用途を広げてきた点に、この会社らしさがあると思います。

研究室の実験台で使われている試薬の先に、肝臓の病気に悩む人を支える新しい治療が生まれる日を楽しみに待ちたいと思います。岡山大学から生まれたほかの企業は、岡山大学発スタートアップ10選で紹介しています。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら

この企業について、
もっと深く知りたい方へ

パートナーシップ・お問い合わせはこちらから。