メドメイン|「デジタル病理」を研究

メドメイン株式会社(Medmain)

メドメイン「デジタル病理」を研究|研究領域=病理標本を/画像にして扱う/強み=離れた施設でも/同じ画像を見られる/将来性=AIの診断支援を/診療の現場へ

企業紹介|メドメイン株式会社とは?

顕微鏡で見ていた病理標本を、画面上で観察する技術が「デジタル病理」。メドメイン株式会社は、その「デジタル病理」の社会実装を目指す、福岡発の医療系ディープテックスタートアップです。病理画像を保管・共有するクラウドシステム「PidPort」を、大学病院や研究機関等へ提供しています。

キーワード「デジタル病理」(デジタルパソロジー)

「デジタル病理」は、ガラス標本の全体を専用の装置で読み取り、デジタル画像に変える方法です。特徴は、読み取った画像をそのまま送信でき、離れた施設の病理医とも同じ像を共有できる点にあります。病理医が少ない地域の病院でも、標本を郵送することなく専門医へ相談できます。

市場課題|病理診断を担う人材の偏り

現状の病理診断の課題|現状は、病理医の偏りで診断に時間/病理専門医が/都市に集中/確認の人手を/確保しにくい

病理医が都市に集中し地域で不足

がんの性質や広がりを見極める最終診断を担うのは病理医ですが、その分布は地域で大きく偏っています。2026年4月20日時点の病理専門医は全国で2,825名で、勤務先の都道府県別では、東京都の507名に対して鳥取県と島根県は各13名です。専門医が少ない地域ほど一人が受け持つ範囲は広がり、診断までの時間が延びやすくなります。

標本を目視で追う負担が重い

病理医は、一枚の標本を隅々まで目で追い、病変の有無と性質を判断します。一枚のガラス標本に含まれる細胞は膨大で、見落としを防ぐダブルチェックが一般的です。担い手が限られる施設ほど、この工程に人手を割きにくくなります。

標本を読み取る装置は導入費用も重い壁です。他にも、デジタル化の工程に見合う診療報酬の項目が乏しいこと、臓器ごとに画像を読み解く経験の蓄積に時間がかかること、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 病理診断患者から採取した組織や細胞をガラス標本にし、顕微鏡で観察して病変の性質を判定する診断。がんの確定診断を担う最終診断にあたる。
  • ガラス標本組織や細胞を薄く切ってガラス板に貼り、染色したもの。プレパラートとも呼ばれ、顕微鏡で観察して病理診断に用いる。

メドメインの強み|画像の共有と開発中のAI解析

メドメインが「デジタル病理」を開発|今後は、AIの確認も加えた支援が可能に/施設をまたいで/同じ画像を見る/AIが見落としの/防止を支援へ

画像共有で遠隔の相談を支える

ガラス標本は現物が一つしかないため、別の施設の病理医へ判断を仰ぐには、標本を梱包して郵送する運用が一般的でした。

「PidPort」は、病理標本をデジタル画像として保管し、施設をまたいで共有できるクラウドシステムです。読み取った画像はWSIと呼ばれ、病理医は画面上で倍率を上げて細部まで確認できます。離れた施設の病理医へその場で診断を依頼でき、やり取りも画面上で完結する仕組みです。同社は、病理標本を高品質にデジタル化する受託サービス「Imaging Center」も提供しています。読み取り装置を持たない施設は、標本を送れば任せられます。

AI解析で見落とし防止へ

目視によるダブルチェックは、二人の病理医が同じ標本を最初から見直すため、一枚あたりに二人分の時間が必要です。

同社は、病理画像のスクリーニング(ふるい分け)やダブルチェックを支援するAIを開発中です。このAIは「弱教師あり学習」で訓練し、症例単位のラベルだけで学習できます。対象は、胃・大腸・肺・乳腺・膵臓・前立腺・リンパ節の組織画像と、子宮頸部と尿の細胞診(採取した細胞を観察する検査)の画像で、病変の有無を判定します。2026年3月には、細胞増殖の指標Ki-67の陽性細胞率を自動で数えるAIの論文が、専門誌「Diagnostics」に掲載されました。AI解析は、日本国内では将来的な提供を計画しています。

FrontJournalの解説
  • WSIガラス標本の全体を読み取ってつくるデジタル画像。倍率を変えて観察でき、標本の全域を画面上で確認できる。
  • 弱教師あり学習画像の細部に正解の印を付けず、症例単位などの大まかなラベルだけで学習させる方法。教師データの作成にかかる負担を抑えられる。
  • Ki-67細胞の増殖の度合いを示すタンパク質。陽性となった細胞の割合は腫瘍の増殖の速さの目安とされ、悪性度や予後の予測に用いられる。

デジタル病理の未来|医療現場への応用

広がるデジタル病理が変える未来|画像の共有から診断の支援へ広がる/大学病院を持つ/大学の6割超が導入/病理医が個人で/使い始められる/病理AIの/承認を目指す

大学病院を持つ大学の6割超

「PidPort」は、すでに医療と教育の現場で使われています。2026年2月時点で、国内では大学病院を有する大学の6割超が導入し、海外の医療機関でも活用されているといわれています。久留米大学医学部は、教育と研究の用途で「PidPort」を採用しました。診断の現場に加えて、病理を学ぶ場でも同じ画像を見ながら議論できます。

個人向けプランで一人でも導入

2026年7月1日、同社は個人向けの新プラン「PidPort Personal」の提供を開始しました。施設単位の導入を待たずに、病理医が一人でも使い始められます。提供開始にあわせて、3か月間の無料キャンペーンも実施されました。所属先の設備に左右されず、個々の病理医がデジタル病理に触れられます。

病理AIの薬事承認を目指す

同社が目指すのは、病理AIを実際の診断の現場で使える形に整えることです。日本病理学会の手引きは、病理診断支援AIを実際の診療で用いる場合、医薬品医療機器等法に基づく承認や認証を受ける必要があるとしています。同社は薬事承認の申請に向けた準備を進めています。あわせて所見の作成を支える技術の整備も進み、2025年10月には、病理医が書いた所見とAIが生成した所見を照合し、誤字や記載漏れ、内容の不整合の検出を支援する「所見作成作業効率化システム」で特許を取得しました。

FrontJournalの解説
  • 医薬品医療機器等法医薬品や医療機器の品質・有効性・安全性を確保するための法律。診断を支援するプログラムも医療機器として扱われる。
  • 所見病理医が標本を観察して読み取った内容を記述した文章。臨床医が治療方針を決める際の根拠として用いられる。

会社概要|メドメインの事業内容・設立背景

学生時代の開発から創業

メドメイン株式会社は、2018年1月に福岡市で設立されました。創業したのは、九州大学医学部医学科の在学中からソフトウェア開発に取り組んでいた飯塚統で、現在も代表取締役CEOを務めます。その活動から生まれた学生団体が母体となり、そこでの開発が事業の出発点になったといわれています。拠点は福岡と東京、米国パロアルトの3か所。

NEDOの支援を受け開発

同社の開発は、公的機関の支援を受けて進んできました。2022年度には、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の研究開発型スタートアップ支援事業に採択され、2億円を上限とした助成を受けることが決まりました。この公募には108件の提案があり、40件が選ばれています。経済産業省が有望なスタートアップを選ぶ「J-Startup」にも選出されました。

25億円を調達しグループ入り

同社は2018年の設立から2025年5月までに、エクイティ(新株の発行による資金調達)で累計25億円を調達しています。直近は2025年5月の第三者割当増資(特定の相手に新株を割り当てる方法)で4.7億円を調達し、One Capitalが取りまとめ役のリード投資家として参加しました。テクマトリックス株式会社と、その連結子会社であるPSP株式会社は、2026年4月30日付で同社の株式を取得しています。これにより同社はテクマトリックスグループの連結子会社となりました。

会社情報

会社名メドメイン株式会社(Medmain Inc.)
所在地福岡県福岡市中央区赤坂2-4-5 シャトレサクシーズ104。東京オフィス=東京都港区南青山2-10-11 A青山ビル2F。米国=Medmain USA Inc.(212 Homer Ave, Palo Alto, CA 94301)
設立2018年1月11日
代表代表取締役CEO 飯塚 統
資本金1億円(資本準備金を含めると11億9000万円)。2026年4月30日付で、テクマトリックス株式会社および、その連結子会社であるPSP株式会社による株式取得を通じ、テクマトリックスグループの連結子会社となった
調達エクイティによる累計調達額 25億円(2025年5月時点)。直近は2025年5月の第三者割当増資で4.7億円。One Capital(直近ラウンドのリード投資家)、DEEPCORE、Niremia Collective、Plug and Play、PSP株式会社、株式会社ニコン ほか
技術領域デジタル病理支援クラウドシステム「PidPort」(WSIの保管・管理・閲覧・共有、遠隔診断、AI解析)。病理標本のデジタル化受託サービス「Imaging Center」。※AI解析に関する機能は、日本国内では将来的な提供を計画。特許第7752741号「所見作成作業効率化システム」(2025年10月2日登録)
採択NEDO 研究開発型スタートアップ支援事業(2022年度・助成上限2億円)。経済産業省 J-Startup 選出
URLhttps://medmain.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

病理診断は、患者が直接会うことの少ない医師が支えています。その担い手が偏る以上、診断の質を保つ手立ては人を増やすことだけではありません。標本を画像に変え、距離をまたいで同じ像を見られるようにする。同社が取り組むのは、この地道な土台づくりです。

興味深いのは、AIより先にクラウドを届けた順序です。画像が集まらなければ学習も検証も進まないため、保管と共有の仕組みが先に要ります。画像解析の技術だけでなく、病理の情報が流れる道を整えている点が面白いところです。

九州大学の学生が始めた挑戦が、病理診断の現場を静かに変えつつあります。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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