九州大学発スタートアップ10選|地域の研究力から広がる新産業

九州大学発スタートアップ10選|地域の研究力から広がる新産業

九州大学発スタートアップは、有機EL、宇宙、バイオ医薬、CO2回収、医療AI、無線通信など、研究成果が産業課題に直結しやすい領域で存在感を高めています。

九州大学には、有機エレクトロニクス、宇宙工学、薬学、農学、情報通信、医学など、地域産業とも接点の深い研究分野があります。研究室で生まれた技術を、教授や学生、研究者自身が事業化へつなげているケースが多いのも特徴です。

この記事では、各社の公式サイト、会社概要、技術紹介、大学・自治体・支援機関の情報などで九州大学との関係を確認しやすい企業を中心に、注目したい10社を紹介します。

なお、九州大学発スタートアップといっても、関わり方は企業によって異なります。九州大学の研究成果をもとにした企業、九州大学の研究者が創業・技術開発に関わる企業、九州大学在学中・在職中に創業された企業があります。本記事では、根拠に合わせて表現を分けています。

九州大学発スタートアップを見るポイント

九州大学発スタートアップを見るうえで重要なのは、単に「九州大学発」と呼ばれているかどうかだけではありません。

たとえば、有機半導体の研究はディスプレイや光デバイスへ、宇宙工学は地球観測インフラへ、バイオ研究は創薬や細胞医薬へつながります。CO2回収技術は脱炭素に、医療AIや無線通信技術は社会インフラの高度化に関わります。

大学発スタートアップでは、研究成果を事業にするまでに、知財、量産、規制対応、臨床開発、顧客開拓など多くの壁があります。九州大学発の企業には、研究者自身が経営や技術開発に関わり続けながら、長い時間軸で社会実装を目指す企業が目立ちます。

注目の九州大学発スタートアップ10選

ここからは、九州大学の研究成果や研究者、九州大学在学・在職中の起業と関係が深い企業を、領域別に紹介します。

九州大学発スタートアップ カオスマップ(領域別スタートアップ一覧)

各社の紹介では公式サイトURLも掲載しています。資金調達、提携、製品リリースなどの最新情報は、各社の公式発表もあわせて確認してください。

素材・化学・エネルギー

1. KOALA Tech|有機半導体レーザーの実用化企業

公式サイト:https://www.koalatech.co.jp/

KOALA Tech(コアラテック)は、有機ELディスプレイで知られる有機半導体材料を、レーザー光源へ応用する技術に取り組むスタートアップです。公式サイトでは、同社が有機半導体レーザー技術を開発する九州大学発スタートアップであることが確認できます。

有機半導体レーザーは、従来の無機半導体レーザーとは異なる材料特性を持ち、軽量で柔軟なデバイスや新しい光源としての可能性が期待されています。

九州大学の有機エレクトロニクス研究を、次世代の光デバイス産業へつなげようとする企業です。

2. Kyulux|次世代有機EL材料の開発企業

公式サイト:https://www.kyulux.com/

Kyulux(キューラックス)は、熱活性化遅延蛍光(TADF)やHyperfluorescenceを活用した次世代有機EL発光材料を開発する企業です。公式サイトでは、九州大学から独占ライセンスを受けた技術を基盤に2015年に設立されたことが確認できます。

有機ELディスプレイは、スマートフォン、テレビ、車載ディスプレイなど幅広い製品に使われています。発光効率や耐久性を高める材料は、ディスプレイ産業の競争力に直結します。

大学の材料研究が、世界市場を見据えた有機EL材料ビジネスへ展開している代表的な事例です。

3. JCCL|CO2回収・再資源化技術の企業

公式サイト:https://jccl.jp/

JCCL(ジェイシーシーエル)は、アミンを含むゲル素材を使ってCO2を分離・回収する技術を開発する企業です。公式サイトでは、九州大学で開発されたアミン含有ゲルに関する特許や技術を移転していることが説明されています。

工場の排ガスや大気などからCO2を回収する技術は、脱炭素社会に向けた重要なインフラ技術です。回収したCO2を利用・再資源化する技術が進めば、製造業やエネルギー産業の脱炭素にもつながります。

九州大学の化学・材料研究を、カーボンニュートラル領域へ接続するスタートアップとして注目できます。

宇宙・通信インフラ

4. QPS研究所|小型SAR衛星による地球観測企業

公式サイト:https://i-qps.net/

QPS研究所は、小型SAR衛星の開発・運用に取り組む宇宙スタートアップです。公式サイトでは、九州大学の小型衛星開発技術をもとに、九州大学名誉教授らによって2005年に創業されたことが説明されています。

SAR衛星は、雲を透過し夜間でも地表を観測できるレーダー衛星です。災害対応、インフラ監視、農業、安全保障、都市開発など幅広い用途が期待されています。

九州大学の宇宙工学の蓄積が、民間の地球観測インフラへ発展している象徴的な企業です。

5. PicoCELA|無線メッシュ技術で通信インフラを支える

公式サイト:https://picocela.com/

PicoCELA(ピコセラ)は、独自の無線多段中継技術を用いて、LANケーブルに頼りすぎない無線ネットワーク構築を支援する企業です。公式サイトでは、代表の古川浩氏が九州大学大学院を修了し、九州大学大学院の准教授・教授を経て、九大在職中にPicoCELAを創業したことが確認できます。

大規模施設、工場、建設現場、イベント会場などでは、安定した無線通信環境をすばやく整えることが課題になります。PicoCELAは、無線メッシュ技術によって、配線コストや設置の制約を減らすことを目指しています。

九州大学の情報通信分野の知見が、現場の通信インフラ課題に応用されている事例です。

バイオ・創薬・医療

6. KAICO|カイコを使ったタンパク質生産企業

公式サイト:https://www.kaicoltd.jp/

KAICO(カイコ)は、九州大学のカイコ研究をもとに、カイコを使って有用なタンパク質を生産する技術を開発するバイオスタートアップです。公式サイトでは、九州大学独自のバキュロウイルスゲノムや、九州大学が保有するカイコ系統を活用する技術であることが説明されています。

ワクチン、診断薬、研究用試薬などでは、高品質なタンパク質を安定して作る技術が重要になります。カイコは古くから絹を生み出す生物として利用されてきましたが、現代のバイオテクノロジーではタンパク質生産のプラットフォームとしても注目されています。

伝統的な生物資源と先端バイオ技術を組み合わせた、九州大学発らしいバイオ産業の事例です。

7. エディットフォース|PPRタンパク質によるゲノム・RNA編集企業

公式サイト:https://www.editforce.co.jp/

エディットフォースは、DNAやRNAを操作する独自技術を開発するバイオベンチャーです。公式サイトの沿革では、九州大学との共同研究や、PPR技術に関する九州大学からの独占ライセンス契約、九州大学伊都キャンパス内の研究拠点開設などが確認できます。

ゲノム編集というとDNAを対象とする技術が知られていますが、同社はRNAを標的とするトランスクリプトーム編集にも取り組んでいます。創薬、農業、バイオ研究などへの応用が見込まれます。

九州大学の基礎研究を、世界的にも新しい編集技術として社会実装しようとする企業です。

8. GAIA BioMedicine|NK様細胞によるがん免疫療法企業

公式サイト:https://gaia-biomed.com/

GAIA BioMedicine(ガイアバイオメディシン)は、NK様細胞を用いた固形がん向けの細胞医薬品を開発する企業です。公式サイトでは、九州大学での研究成果に基づき、九州大学・米満教授による基礎研究を社会実装するために2015年に設立されたことが説明されています。

がん免疫療法は、既存治療では対応が難しい固形がんへの新しいアプローチとして注目されています。細胞医薬品は、研究、製造、品質管理、臨床開発のすべてで高い専門性が求められる領域です。

九州大学の薬学・医学研究を、難治性がんに対する新しい治療法へつなげようとするスタートアップです。

9. フェリクス|眼科領域の創薬企業

公式サイト:https://www.feliqs.co.jp/

フェリクスは、未熟児網膜症などの眼科疾患に対する治療薬を開発する創薬企業です。公式サイトでは、同社がフェロトーシス・酸化脂質をターゲットとした医薬品開発を行う九州大学発スタートアップであることが確認できます。

未熟児網膜症は、視力に大きな影響を与える可能性がある小児疾患です。公式サイトでは、世界初の未熟児網膜症予防薬となる候補薬の臨床試験に取り組んでいることも説明されています。

九州大学の生命科学・薬学研究を、眼科領域の新しい治療薬へつなげる企業として注目できます。

AI・データ

10. メドメイン|AI病理画像診断のヘルステック企業

公式サイト:https://medmain.com/

メドメインは、AIとクラウド技術を使った病理画像診断支援サービス「PidPort」を開発するヘルステック企業です。公式サイトでは、代表の飯塚統氏が九州大学医学部医学科在学中にAI開発やWeb開発を行い、2018年にメドメインを創業したことが確認できます。

病理医の不足は、医療現場の大きな課題の一つです。病理画像をデジタル化し、AIによる診断支援を組み合わせることで、診断の質やスピードを高める可能性があります。

九州大学医学部在学中の起業から生まれた、医療AI領域のスタートアップとして取り上げたい企業です。

今回は取り上げなかったが、関連性のある企業

九州大学との関係が見られる企業としては、FusicやHIROTSUバイオサイエンス、しくみデザインなども候補に挙がります。

Fusicは、公式サイトの沿革で、創業者が九州大学大学院在学中にシステム開発事業で起業したことが確認できます。そのため「九州大学在学中に起業した企業」として紹介しやすい企業です。一方で、本記事ではディープテック色や研究成果との接続がより強い企業を優先しました。

HIROTSUバイオサイエンスやしくみデザインは、創業者の研究・学歴・地域性などの面で九州大学や福岡のエコシステムと関係が語られることがあります。ただし、公式サイト上で「九州大学発」と明確に確認できる情報は慎重に扱いたいため、今回は10選から外しています。

記事で紹介する際は、「九州大学発」「九州大学の研究成果を基盤に」「九州大学在学中・在職中に創業」「九州大学と共同研究」といった表現を、根拠に合わせて使い分けることが重要です。

九州大学発スタートアップに多い注目領域

素材・化学・エネルギー

KOALA Tech、Kyulux、JCCLのように、有機半導体、有機EL材料、CO2回収など、素材・化学領域は九州大学発スタートアップの中心的な領域です。

これらの領域では、研究成果を実用化するまでに、材料性能、量産、耐久性、顧客開拓など多くの検証が必要です。大学の研究力と産業側の実装力をどうつなぐかが、成長の鍵になります。

宇宙・通信インフラ

QPS研究所やPicoCELAのように、宇宙・通信インフラに関わる企業も注目できます。

衛星データや無線ネットワークは、災害対応、物流、建設、工場、都市運営など幅広い分野の基盤になります。研究成果が社会インフラそのものに接続される点が、この領域の面白さです。

バイオ・創薬・医療

KAICO、エディットフォース、GAIA BioMedicine、フェリクス、メドメインのように、バイオ・創薬・医療領域にも多くの注目企業があります。

九州大学の薬学、農学、医学、情報科学の研究が、タンパク質生産、遺伝子・RNA編集、細胞医薬、眼科創薬、医療AIへ広がっています。いずれも実用化までの時間は長いものの、成功したときの社会的インパクトが大きい領域です。

まとめ

九州大学発スタートアップは、有機半導体、宇宙、通信、バイオ、創薬、医療AI、CO2回収など、幅広いディープテック領域に広がっています。

今回紹介した企業に共通しているのは、大学の研究成果や研究者の専門性が、産業課題と直接つながっている点です。研究成果を事業にするには、技術だけでなく、知財、資金、人材、規制、量産、顧客開拓が必要になります。九州大学発スタートアップは、その長い橋渡しを担う存在です。

一方で、「九州大学発」という言葉は便利だからこそ、根拠の確認が欠かせません。公式サイトに九州大学発と明記されている企業、九州大学の技術移転や共同研究を基盤とする企業、在学中・在職中に創業された企業では、大学との関係の濃さが少しずつ異なります。

記事で取り上げる際は、企業ごとの根拠に合わせて表現を変えることで、読者にも信頼されるコラムになります。九州大学発スタートアップは、地域の研究力が日本の新産業へつながる流れを見るうえで、今後も注目したい領域です。

この記事の作者

FrontJournal 編集部

ディープテック(科学技術にもとづく事業)を、ビジネスパーソンの視点でわかりやすく紹介するメディアです。

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