2026.08.04
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近畿大学・中央大学・科学技術振興機構(JST)
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元発表:2026.08.04
近畿大・中央大ら、BECの異常トンネル効果を米クラウド実験装置で20年越しに実証(FrontJournal解説)
ニュース紹介
「奇妙なトンネル効果の影響を20年越しに実験実証成功~実験装置のクラウドサービスを使って理論研究者が実証~」
近畿大学理工学部の段下一平教授と中央大学基幹理工学部の鏡原大地助教らの研究グループは、米国Infleqtion社が提供する量子気体実験装置のクラウドサービス「Oqtant(オクタント)」を用い、ボース・アインシュタイン凝縮体(BEC)における「異常トンネル効果」の影響を実験で観測することに成功しました。この現象は理論的に約20年前から予測されていたものの、これまで実験による直接的な検証は行われていませんでした。研究成果は2026年7月31日付で英国科学誌「Communications Physics」に掲載され、Oqtantを用いた学術成果が査読付き論文として公表されるのは今回が初めてとなります。
出典:科学技術振興機構(JST) 2026年8月4日 プレスリリース(掲載誌:Communications Physics/DOI: 10.1038/s42005-026-02720-6)
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20260804-2/index.html
FrontJournalの解説
異常トンネル効果とは
トンネル効果は、古典物理学では乗り越えられない障壁を、量子力学に従う粒子がすり抜けてしまう現象です。通常のトンネル効果では、粒子のエネルギーが小さいほど障壁をすり抜ける確率は低くなります。一方、今回の研究の主題である「異常トンネル効果」は、超流動状態にあるボース・アインシュタイン凝縮体(BEC)の中を伝わる集団励起(音波のような振動)のエネルギーが低いほど障壁を通り抜けやすくなり、エネルギーがゼロに近づくと100%透過するという、逆向きの振る舞いを示します。この現象はBECだけでなく磁性体などでも生じると理論的に予測されており、超流動や物性物理を理解するうえでの基礎的なテーマとされてきました。
①約20年間、実験検証が困難だった理由
異常トンネル効果は段下教授が学生時代から理論研究を続けてきた現象で、理論としては2005年ごろから予測されていました。しかし極低温原子気体を用いた先端実験装置を立ち上げるには高度な技術と大規模な設備が必要で、理論研究者が単独で検証を試みるのは容易ではありません。実験研究者との共同研究がなければ検証が難しく、結果として20年以上にわたり実験による直接検証は空白となっていました。研究分業が進んだ現代物理学の構造的な課題でもあります。
②Oqtantクラウドサービスを使った実験手法
研究グループは、米国Infleqtion社の量子気体クラウドサービス「Oqtant」を利用しました。Oqtantは、真空中の原子をレーザー光と磁場で捕獲・冷却してBECを生成する装置を、遠隔からオンラインで操作できるサービスです。研究グループは、二つの井戸型のポテンシャルに閉じ込めたBECが中央の障壁を挟んで振動する運動を予測し、Oqtant上で障壁の高さを変えながらエネルギーの小さい3つの集団励起モードの振動周期を測定しました。エネルギーが低いモードほど障壁の高さが増しても振動周期があまり変わらないという結果が得られ、これが低エネルギーで障壁を透過しやすくなる異常トンネル効果の存在を間接的に裏付けています。実験結果は理論計算とよく一致したと報告されています。
編集部からひとこと
今回の成果は、理論研究者が実験装置を保有せずクラウド経由で自らの理論を検証できることを示した点でも注目されます。研究発表は基礎物理学の成果であり、応用製品や実用化時期への言及はありません。プレスリリースによれば、本研究はJST創発的研究支援事業、JST先端国際共同研究推進事業、JSPS科学研究費助成事業、文部科学省光・量子飛躍フラッグシッププログラムの支援を受けています。詳細はJST公式ページおよびCommunications Physics掲載論文をご参照ください。
本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。
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