2026.09.11 東北大学 元発表:2026.09.11

東北大学ら、ナノ粒子が細胞内で溶ける過程を蛍光色の変化で可視化

ニュース紹介

「ナノ粒子が分解・溶解する過程を蛍光色の変化で可視化」

東北大学 多元物質科学研究所の笠井均教授、谷田恵太助教、濵口祐准教授らの研究グループは、北海道大学京都大学理化学研究所東京科学大学県立広島大学仙台高等専門学校と共同で、ナノ粒子が細胞内で分解・溶解する過程を「蛍光色の変化」というシグナルに変換して直接観察する新たな技術を開発したと発表しました。

細胞内に取り込まれたナノ粒子が分解・溶解する過程を、リアルタイムかつ定量的に追跡することはこれまで困難でした。研究グループは、ナノ粒子の構造が崩れると光の色が変化する仕組みを持つFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)ナノプローブを活用し、ナノ粒子が細胞内で溶けた割合を蛍光色の変化から定量的に測定できることを確かめました。

この技術は、薬物を運ぶためのカプセル(担体)を使わずに薬の成分自体をナノ粒子化する「キャリアフリーナノ医薬品」の実用化に向けた解析技術として位置づけられています。応用先として、次世代ナノ抗がん剤の設計・開発や、キャリアフリーナノ医薬品の有効性と安全性向上が挙げられています。本成果は国際学術誌『Advanced Science』に9月6日付で掲載されました。

出典:理化学研究所 2026年9月11日 プレスリリース
https://www.riken.jp/press/2026/20260911_1/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

薬を飲んでから効くまでには、薬の成分が体の中で溶けて血液に取り込まれる過程があります。ナノサイズ粒子にした薬は、この溶ける速さや場所を調整しやすく、効き目を高めたり副作用を抑えたりする狙いで研究が進められています。

ただし、細胞の中でナノ粒子が実際にどう溶けているかは、外から見ただけでは分かりません。溶ける過程そのものを観察する手段が長く求められてきました。

①溶ける様子をその場で追えなかった

ナノ粒子細胞に取り込まれたあと、どのくらいの速さで、どの程度溶けているかを、生きた細胞の中でリアルタイム数値として追うのは難しい作業でした。取り出して調べる方法では、溶けている途中の状態を壊さずに捉えることができません。

この限界は、ナノ医薬品設計を「作ってみて効果を確かめる」という試行錯誤に頼らせる一因になっていました。溶ける過程が見えなければ、なぜ効いたのか、なぜ効かなかったのかを突き止めにくくなります。

②構造が崩れると蛍光の色が変わる

研究グループが使ったのはFRET蛍光共鳴エネルギー移動)という現象です。2つの蛍光分子が近い距離にあるとエネルギーが受け渡され、離れると受け渡されなくなるため、光る色が変化します。

この仕組みをナノ粒子に組み込むと、粒子の構造が保たれている間は特定の色に光り、構造が崩れて溶け始めると色が変わります。研究グループは、この色の変化を追うことで、ナノ粒子が細胞内でどれだけ溶けたかを定量的に測定できることを確認しました。

編集部からひとこと

薬の効き方を左右する「溶ける過程」を、壊さずに観察できるようになった意味は大きいと考えられます。これまで結果でしか判断できなかった設計の善し悪しを、途中の過程から確かめられるようになるためです。次世代ナノ抗がん剤づくりに、この技術がどう使われていくかが注目されます。

プレスリリース原文を読む ↗

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら