次世代の脱炭素電源となる核融合発電を研究する Commonwealth Fusion Systems(米国発)

次世代の脱炭素電源「核融合発電」を研究【Commonwealth Fusion Systems|米国発】

生成AIやデータセンターの急増にともない、世界の電力需要が拡大し、脱炭素電源の確保が各国の課題になりました。この課題に挑むのが、米国のコモンウェルス・フュージョン・システムズ(以下CFS)です。太陽を光らせているのと同じ核融合という反応で、発電する装置を開発しています。2018年にマサチューセッツ工科大学(MIT)から独立し、実証機「SPARC」を建設中です。2025年8月には約8.63億ドル(約1,295億円)の調達を発表しました。三井物産と三菱商事が主導する日本企業12社も、この出資に加わっています。

電力供給の課題

Commonwealth Fusion Systemsの紹介と、データセンターの増加で電力需要が拡大し、脱炭素電源の確保が課題になっていることを示す図

電力需要が増え供給が逼迫

生成AIの普及にともない、データセンターの電力需要が急速に拡大しています。データセンターは24時間連続で稼働するうえ、産業設備の電化や自動車の電動化も重なります。このままでは、増える需要に応えるための発電量が足りなくなります

脱炭素電源の確保が課題

出力が安定し常時稼働できる脱炭素電源(ベースロード電源)の確保が、各国共通の課題になりました。太陽光や風力の発電は天候で出力が変わるため、夜間や無風の時間帯を別の電源で埋める必要があります。常時稼働できる脱炭素電源がそろわなければ、発電量の拡大とCO2削減の両立が遅れます。

FrontJournalの解説
  • ベースロード電源出力が安定し、一日を通して動かし続ける電源。太陽光や風力のように天候で出力が変わる電源と組み合わせて、電力網全体の需要を支える。

Commonwealth Fusion Systemsが核融合発電を研究

核融合発電の研究を示す図。D字型の高温超伝導コイルで強い磁場を発生させ、ドーナツ型のトカマク装置の小型化をめざす

課題解決に挑むCommonwealth Fusion Systems

Commonwealth Fusion Systemsは、太陽と同じ核融合の反応で発電する装置を研究しています。2018年にマサチューセッツ工科大学(MIT)から独立し、同じ州のデベンスで実証機「SPARC」を建設しています。

高温超伝導の磁石

高温超伝導(HTS)の電磁石が、核融合発電を成り立たせる鍵になります。核融合を起こすには物質を約1億度まで加熱し、原子核と電子が飛び交うプラズマの状態にします。プラズマは容器の壁に触れると反応が止まるため、磁力で空中に保持する必要があります。この材料は強い磁場のもとでも大電流を流せる点が特徴で、従来の超伝導磁石より強い磁場を生み出せます。

トカマク型の小型化

強い磁場は、装置そのものを小さくすることにつながります。磁場が強いほどプラズマを閉じ込める性能が高まり、同じ出力の装置をより小型に設計できます。CFSはこれを、ドーナツのような形の「トカマク」型で実現しようとしています。同社は公式サイトで、高温超伝導の電磁石により発電所を小型で経済性の高いものにできると説明しています。

FrontJournalの解説
  • 核融合軽い原子核どうしが結びつき、大きなエネルギーを生む反応。太陽が光り続けているのは、中心でこの反応が起きているためである。現在の原子力発電は重い原子核を分裂させる反応で、向きが逆になる。
  • プラズマ原子核と電子がばらばらに飛び交う、非常に高温の状態。気体・液体・固体に続く「第4の状態」とも呼ばれる。
  • 高温超伝導(HTS)電気抵抗がゼロになる温度が、従来の超伝導材料より高い材料。強い磁場のもとでも大電流を流せるため、強力な電磁石を製造できる。
  • トカマクドーナツ形の容器の中で、磁場によってプラズマを輪の形に閉じ込める方式。核融合装置の代表的な形の一つ。

核融合発電の未来

核融合発電の未来を示す図。実証機でエネルギー収支のプラスをめざし、約400メガワットの商用機を計画し、日本の12社が出資に参加した

脱炭素の安定電源が可能に

CFSは2027年に、加熱に投入したエネルギーを超える出力を得ることをめざしています。この状態は「Q>1」と呼ばれ、発電として成り立つかどうかの最初の関門です。実用化にはさらに高いQが必要ですが、達成すれば天候の影響を受けにくい脱炭素電源が選択肢に入ります。データセンターや工場が使う電気を、昼夜を問わず脱炭素電源でまかなえる可能性が広がります。

15万世帯分の送電を目指す

CFSは商用機「ARC」で、2030年代前半の送電開始を目指しています。建設地はバージニア州チェスターフィールド郡で、発電出力は約400メガワットです。これは約15万世帯分、または大規模な産業・商業顧客の需要にあたります。2026年4月には、核融合企業として初めて米国の送電網運用機関PJMへ接続を申請しました。

約1,295億円を調達

CFSは2025年8月、約8.63億ドル(約1,295億円)の調達を発表しました。三井物産と三菱商事が主導する日本企業12社も参加し、JERAや関西電力、NTTなどが名を連ねています。累計の調達額は約30億ドル(約4,500億円)で、民間核融合企業が集めた資金のおよそ3分の1にあたります。Googleは「ARC」第1号機の電力の半分を将来購入することで合意し、資金と買い手の両方がそろいつつあります

FrontJournalの解説
  • Q>1核融合で生まれるエネルギーが、プラズマの加熱に投入したエネルギーを上回った状態。発電所として採算に乗せるには、さらに高いQが必要である。
  • メガワット(MW)発電できる電力の大きさを表す単位。1メガワットは1,000キロワットにあたる。

核融合発電の課題と将来性

核融合発電は長く基礎研究の領域にありましたが、CFSは商用発電への道筋を一歩ずつ進めています。高温超伝導の磁石で装置を小型化し、実証機の建設を進め、商用機の用地と買い手を決めました。電力需要の増加と脱炭素の両立という同じ課題は、日本にも共通します。日本企業12社の出資は、日本企業が次世代エネルギー技術に関わる接点になります。FrontJournal編集部は、2027年の実証を経て核融合発電が電源の選択肢に加わることに期待しています。

※ 本記事は各社の公式発表・主要報道をもとに、FrontJournal編集部が再構成したものです。数値は各社・各媒体の公表値です。ドルの円換算は1ドル=約150円で概算しています。
主な出典:Commonwealth Fusion Systems 公式(SPARC/ARC/FAQ/ニュースリリース)。

この記事の作者

FrontJournal 編集部

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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