AZUL Energy株式会社|非白金の酸素還元触媒「AZUL触媒」を開発する東北大学発ディープテック

AZUL Energy株式会社(アジュールエナジー)

AZUL Energy「AZUL触媒」を研究|研究領域=非白金で酸素還元を促進/強み=白金と同等以上の性能/将来性=燃料電池から水電解へ応用

企業紹介|AZUL Energyとは?

非白金で酸素還元反応を促す技術として、開発が進む「AZUL触媒」。AZUL Energyは、その「AZUL触媒」の社会実装を目指す、東北大学発のディープテック企業です。非白金の酸素還元触媒を、燃料電池や水電解装置のメーカーへ提供しています。

キーワード「AZUL触媒」(アザフタロシアニン系触媒)

「AZUL触媒」は、非白金の電極材料で酸素還元反応(酸素が電子を受け取って水になる反応)を進める触媒です。特徴は、安価なカーボンブラック(微細な炭素粒子)にアザフタロシアニン金属錯体(青色顔料の一種)を組み合わせ、白金と同等以上の性能を示すとされます。燃料電池や水電解装置の電極材料として、活用が見込まれています。

市場課題|白金依存が装置のコストを押し上げる

現状の酸素還元触媒の課題|現状は、白金依存で調達リスクが高い/白金頼みで電極コストが高い/産出国偏在で調達リスクが増す

白金頼みで電極コストが高い

燃料電池や水電解装置の電極コストが高いのは、酸素還元反応を進める触媒に白金を使うためです。白金は反応を効率よく進める性質を持ちますが、希少な貴金属であるため価格が高く、装置全体のコストに占める割合が大きくなります。確立された手法である一方、代替できる材料の少なさが装置の普及を妨げる大きな課題となっています。

産出国偏在で調達リスクが増す

白金やイリジウムのようなレアメタルの供給は、産出国の偏在という制約を抱えています。特定の国・地域に埋蔵が集中しているため、需給や価格の変動が装置メーカーの調達計画に及びやすくなります。一方で燃料電池や水電解装置の普及拡大も求められており、レアメタルに頼らない電極材料の確保が業界共通の課題です。

他にも、レアメタルの採掘に伴う環境負荷、価格変動による量産計画の不確実性、代替触媒に求められる耐久性の確保、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 酸素還元反応酸素分子が電子を受け取って水になる反応を指す。燃料電池では発電の、金属空気電池では放電の主要な反応にあたる。

AZUL Energyの強み|非白金の酸素還元触媒

AZUL Energyが「AZUL触媒」を開発|今後は、非白金触媒で低コスト化が可能に/非白金触媒で価格を抑える/レアメタルに頼らず量産可能

非白金触媒で価格を抑える

従来の酸素還元触媒は、性能を確保するために白金という高価な貴金属に頼らざるを得ないという課題がありました。

「AZUL触媒」とは、白金の代わりにアザフタロシアニン金属錯体を活用し、酸素還元反応を進める電極材料です。設計の手がかりは、血液中で酸素を運ぶヘム(鉄を中心に据えた環状の分子)の構造にあります。ヘムに似た構造を持つ色素をカーボンブラックの表面へ単層状に吸着させた構造で、酸素分子を捉えて還元します。この構造により得られるのが、白金と同等以上とされる性能です。白金触媒と比べた製造コストは約90%減、二酸化炭素の排出量は99%以上減とされています。

レアメタルに頼らず量産可能

従来の白金触媒では、特定の産出国に依存する調達構造が課題でした。

「AZUL触媒」の原料は、新幹線の塗装などに使われる青色顔料と炭素です。この二つを混ぜ合わせる工程で製造でき、レアメタルの相場や産出国の事情に左右されません。中心に置く金属を替えれば、酸素還元のほかの反応にも応用できるとされています。同社が手がけるのは触媒だけでなく、ガス拡散電極(気体を通しながら電気を流す多孔質の電極)、電池セル、装置までを含む一貫開発です。AZUL Energyは、燃料電池や水電解装置のメーカー向けに、これらの電極材料を供給しています。

FrontJournalの解説
  • アザフタロシアニン金属錯体青色顔料の骨格に金属を組み込んだ化合物を指す。窒素を含む分子構造が酸素還元反応を促し、白金の代替として研究されている。

AZUL触媒の未来|燃料電池から水電解までの応用

非白金の触媒が変える未来|燃料電池から水電解まで応用が広がる/家庭用燃料電池でコスト減/水素製造装置の低コスト化/レアメタル自立を目指す

家庭用燃料電池でコスト減

「AZUL触媒」は、白金に代わる電極材料として、燃料電池の電極コストを抑えます。電極材料の価格が下がれば、装置そのものの価格も下げやすくなります。応用先は、家庭用の燃料電池をはじめ、産業用の金属空気電池や可搬型の発電装置などです。いずれも、電極コストの低減が普及の鍵を握る用途です。

水素製造装置の低コスト化

同社がねらうのは、従来は白金コストの高さで普及が進みにくかった水電解装置(水を電気分解して水素を製造する装置)の低コスト化です。AZUL Energyの強みは、すでに燃料電池・金属空気電池・水電解装置という複数の装置へ適用できる技術基盤を持っている点にあります。水電解の分野では、Industrie De Nora S.p.A.(イタリアの水電解システム大手)と資本業務提携を結んでいます。2026年7月には日邦産業とも資本業務提携を結び、空気電池用のガス拡散電極の共同開発に乗り出しました。

レアメタル自立を目指す

脱炭素を背景に、燃料電池や水電解装置の導入拡大が世界的に進む発電・水素の業界。その現場では、レアメタル調達の不確実性を減らす「AZUL触媒」への期待が高まっています。非白金の酸素還元触媒は、この課題を解決する有力な選択肢です。東北大学発のAZUL Energyは、レアメタルに頼らない電極材料の普及拡大を目指しています。

会社概要|AZUL Energy株式会社

AIMRの研究から起業

AZUL Energyは、2019年7月に宮城県仙台市で設立されました。創業の中心となったのは、東北大学材料科学高等研究所(AIMR)の研究チームです。設立の土台になったのは、青色顔料の研究過程で、その一種を担持した触媒電極が白金炭素触媒より高い活性を示すと見いだした成果です。創業後の2021年12月には、北海道大学電子科学研究所・電気通信大学との共同研究チームが、この触媒の研究成果を学術誌に発表しています。代表取締役には伊藤晃寿氏が就任しています。

受賞と大学との共創で連携

同社は、外部からの評価と連携の両面で事業を広げてきました。第23回グリーン・サステイナブル ケミストリー賞のベンチャー・中小企業賞を受けています。「Startup World Cup」2025年の東北予選では優勝しました。2024年4月には、東北大学と共同で「AZUL Energy×東北大学 バイオ創発GX共創研究所」を設置しています。

累計約4.75億円を調達

AZUL Energyは、累計約4.75億円(2024年1月時点)の資金調達を完了しています。シリーズAを段階的に実施し、2023年10月のファーストクローズで約3.35億円、2024年1月のセカンドクローズで約1.4億円を調達しました。2026年7月には、Spiral Capital Japan Fund 2や日邦産業、ペガサス・テック・ベンチャーズ等が参加するシリーズA-exを実施しています。

会社情報

会社名AZUL Energy株式会社
所在地宮城県仙台市青葉区一番町1-9-1 仙台トラストタワー10階
設立2019年7月11日
代表伊藤 晃寿(代表取締役)
資本金4,130万円
調達累計約4.75億円(2024年1月時点)。シリーズAファーストクローズ約3.35億円(2023年10月)。セカンドクローズ約1.4億円(2024年1月)。シリーズA-ex(2026年7月・Spiral Capital Japan Fund 2号投資事業有限責任組合、日邦産業株式会社、ペガサス・テック・ベンチャーズ、フィデア企業成長支援ファンド投資事業有限責任組合が参加)
事業非白金の酸素還元触媒「AZUL触媒」の研究開発。燃料電池・金属空気電池・水電解装置向け電極材料の提供
技術領域酸素還元反応、非白金触媒、アザフタロシアニン金属錯体、燃料電池、金属空気電池、水電解
連携Industrie De Nora S.p.A.と資本業務提携(2021年9月)。日本化薬と業務提携(インクジェットインク製造ラインを活用した染料原料の量産)。東北大学と「AZUL Energy×東北大学 バイオ創発GX共創研究所」を設置(2024年4月)。日邦産業と資本業務提携(2026年7月・空気電池関連技術の共同開発)
採択第23回グリーン・サステイナブル ケミストリー賞 ベンチャー・中小企業賞。Startup World Cup 2025 東北予選優勝
URLhttps://azul-energy.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

白金は、燃料電池や水電解装置を語るうえで避けて通れない材料です。性能を支える一方で、その価格と供給リスクが装置の普及速度を静かに縛ってきました。青色の顔料からヒントを得た電極材料が、その縛りを解く糸口になり得ると考えると、化学の面白さを感じます。

AZUL Energyが目指すのは、単なる白金の代替品ではなく、レアメタルに依存しない発電・水素製造の基盤です。東北大学の基礎研究を出発点に、大手化学メーカーや海外の水電解システム企業との連携まで歩みを進めてきました。研究室の成果を量産可能な電極材料へ育てる過程には、着実な積み重ねがうかがえます。

仙台発の非白金触媒が、脱炭素社会を支えるインフラの一部になる日が期待されます。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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