エルピクセル|「医療画像診断支援AI」を研究

エルピクセル株式会社(LPIXEL)

エルピクセル「医療画像診断支援AI」を研究|研究領域=画像から病変の候補を検出する/強み=脳MRIのAIで国内初の承認/将来性=全国の医療機関へ導入が広がる

企業紹介|エルピクセル株式会社とは?

医師の読影を支える技術として、注目を集める「医療画像診断支援AI」。エルピクセル株式会社は、その「医療画像診断支援AI」の社会実装を目指す、東京大学発のディープテックスタートアップです。画像診断支援AI「EIRL」シリーズを、全国の病院や検診施設へ提供しています。

キーワード「医療画像診断支援AI」

「医療画像診断支援AI」は、CTやMRI、X線などの画像から病変の候補を検出するソフトウェアです。特徴は、医師が見ている画像に候補の位置を重ねて示し、確認の手がかりを増やせる点にあります。病院や健診の現場で、診断は医師が担ったまま利用できます。

市場課題|画像検査の増加と読影の負担

現状の画像診断の課題|現状は、検査が増え読影が追いつきにくい/画像検査が増え読影が滞りやすい/二重読影は人手が要り広げにくい

画像検査が増え読影が滞りやすい

撮影される医療画像が増える一方、読影を担う放射線科医の数は限られています。日本は人口あたりのCTとMRIの装置数が世界でも多い水準にあり、装置の普及に放射線科医の増加は追いつきにくいといわれています。医師が限られるほど1件にかけられる時間は短くなり、報告書の作成も遅れがちです。

二重読影は人手が要り広げにくい

二重読影(同じ画像を2人の医師が読む方式)を実施できる施設は限られています。確実な方法ではありますが、読影医を2人分確保する必要があり、人員に余裕のない施設では広げにくい体制です。確認の体制には施設ごとの差が生まれ、検診の精度をどう保つかは業界に共通する課題といわれています。

他にも、当直や休日の読影体制の確保、施設ごとに形式が異なる画像データの受け渡し、読影の結果を電子カルテへ引き継ぐ手間、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 読影CTやX線などで撮影した画像を医師が見て、病変の有無や広がりを判断する行為。放射線科医が中心となって担う。
  • 放射線科医画像診断を専門とする医師。CTやMRIなどの画像を読み、病変の有無を判断して報告書を作成する。

エルピクセルの強み|画像診断支援AI

エルピクセルが「医療画像診断支援AI」を開発|今後は、AIの検出で読影の負担減が可能に/深層学習で病変の候補を検出/ウェブから使える頭部・胸部・大腸へ

深層学習で病変の候補を検出

従来のコンピュータ支援検出(CAD)は、あらかじめ定めた形や濃さの規則で病変を探すため、症例ごとの見え方の違いに対応しにくい面がありました。

「EIRL」は、大量の医療画像を学習した深層学習のモデルで病変の候補を検出し、その位置を医師に示すソフトウェアです。シリーズ最初の製品は、2019年に発売した「EIRL aneurysm」(現「EIRL Brain Aneurysm」)で、頭部MRA画像から脳動脈瘤(脳の血管にできるこぶ)を検出します。同製品は、深層学習を活用した脳MRI分野のプログラム医療機器として国内で初めて薬事承認を得ました。2025年6月には、偽陽性をさらに減らした新しいモデルを発売しています。

3領域の検査へ製品を届ける

読影を支援する仕組みは、使える検査の種類が限られ、施設ごとに導入の作業も生じていました。

対応する検査は頭部・胸部・大腸の3領域へ広がり、種類ごとに製品が用意されています。胸部X線で結節影(丸く写る影)を検出する「EIRL Chest Screening」や、大腸内視鏡でポリープの候補を示す「EIRL Colon Polyp」が代表例です。導入の形も、院内に置くオンプレミス型に加え、ウェブから使える「EIRL Cloud」を用意しました。2026年2月末の時点では、試用を含めて全国47都道府県の1,200以上の施設へ広がり、総解析件数は1,600万件を超えました。

FrontJournalの解説
  • 深層学習大量のデータから特徴を自動的に学ぶ機械学習の手法。医療画像では、病変の見え方の違いを規則で書かずに学習できる。
  • プログラム医療機器診断や治療に使うソフトウェアのうち、医療機器として国の承認を受けたもの。単体のプログラムでも規制の対象となる。
  • 偽陽性病変でない部分を病変の候補として示してしまうこと。多いほど医師の確認作業が増えるため、低減が課題となる。
  • MRAMRIを使って血管の形を描き出す検査。造影剤を使わずに脳の血管を確認でき、脳動脈瘤の発見に用いられる。
  • オンプレミス型ソフトウェアを施設内の機器に置いて動かす方式。院外へ画像を出さずに使える一方、機器の準備と保守が必要になる。

医療画像診断支援AIの未来|医療への応用

診断支援AIが変える医療の未来|検診から創薬まで活用の場が広がる/検診と日常診療ですでに実用化/創薬の研究や海外の病院へ/医療AIの普及を目指す

検診と日常診療ですでに実用化

「EIRL」は、すでに全国の病院や検診施設の日常業務で使われています。胸部X線やCT、頭部MRA、大腸内視鏡の検査で、医師が読影する画面に病変の候補が重ねて示されます。候補はあくまで手がかりで、診断を下すのは医師です。日々の診療で、確認作業を支える道具になりつつあります。

創薬の研究や海外の病院へ

同社の画像解析は、医療機関の外にも広がっています。創薬やライフサイエンスの研究者には、細胞の画像を解析するAI「IMACEL」を提供しています。2024年1月には、他社のアプリケーションを「EIRL」の基盤に載せて医療機関へ届ける「EIRL AI パートナープログラム」を開始しました。海外でも、2024年12月のベトナムを皮切りに、タイやシンガポールなど東南アジアの6カ国で薬事承認を取得しました。

医療AIの普及を目指す

同社が目指すのは、医療AIを一部の施設だけでなく多くの医療機関が使える状態にすることです。そのために進めるのが、承認済みのソフトウェアを運用しながら改良する仕組みづくりです。2023年には、「IDATEN制度」を活用し、「EIRL Chest Nodule」の変更計画の承認を取得しました。学習を重ねて精度を高めた製品を、承認の手続きを保ったまま現場へ届けることを目指します。

FrontJournalの解説
  • 薬事承認医薬品や医療機器を国内で販売するために、有効性と安全性を審査して国が与える承認。
  • IDATEN制度医療機器の変更計画をあらかじめ国が確認しておく制度。承認後の改良を、計画の範囲内で速やかに反映できる。

会社概要|エルピクセルの事業内容

東京大学の研究から創業

エルピクセル株式会社は、2014年3月に東京都で設立されました。創業の中心となったのは、東京大学で画像解析を研究していたメンバーです。研究で培った画像解析の技術を、医療の診断支援へ応用してきました。現在の代表取締役は、2020年に就任した鎌田富久氏です。

薬事承認と協業で普及

「EIRL」が現場へ広がった背景には、薬事承認の取得と企業との協業があります。2019年に「EIRL aneurysm」が脳MRI分野で国内初の薬事承認を取得し、2020年8月には「EIRL Chest Nodule」も製造販売承認を得ました。2024年からは「EIRL AI パートナープログラム」で、他社のソフトウェアも同じ基盤へ載せています。2025年には、第12回「技術経営・イノベーション大賞」で「文部科学大臣賞」を受賞しました。

複数回の調達で開発を継続

同社は設立以来、複数回の資金調達を重ねてきました。2018年10月には、オリンパスや富士フイルムなどを引受先とする第三者割当増資(特定の相手に新株を割り当てる方法)で、総額約30億円を調達しています。2025年7月にも、丸紅ベンチャーズとちゅうぎんインフィニティファンド2号を引受先とする調達を実施しました。

会社情報

会社名エルピクセル株式会社(LPIXEL Inc.)
所在地東京都千代田区大手町1-6-1 大手町ビル6F
設立2014年3月4日
代表代表取締役 鎌田 富久
資本金1億円
調達2018年10月に第三者割当増資で総額約30億円。2025年7月にも第三者割当増資を実施。
投資家2018年=オリンパス、富士フイルム、CYBERDYNE、テクマトリックス、SBIインベストメント、ジャフコ等。2025年=丸紅ベンチャーズ、ちゅうぎんインフィニティファンド2号投資事業有限責任組合。
連携「EIRL AI パートナープログラム」(2024年1月開始。他社のアプリケーションをEIRLプラットフォームへ搭載し医療機関へ提供)。ハノイ郵政病院(2025年9月、ベトナムでの実証実験を開始。実施期間は2026年2月まで)。
技術領域医療画像診断支援AI「EIRL」(頭部・胸部・大腸の3領域)。クラウド型の「EIRL Cloud」。創薬・ライフサイエンス向け画像解析AI「IMACEL」。
承認2019年に「EIRL Brain Aneurysm」が深層学習を活用した脳MRI分野のプログラム医療機器として国内初の薬事承認。2020年8月に「EIRL Chest Nodule」が製造販売承認。2023年にIDATEN制度(医療機器の特性に応じた変更計画の事前確認制度)で変更計画の承認。海外はベトナム・フィリピン・タイ・インドネシア・マレーシア・シンガポールの6カ国で取得(2024年12月〜2026年3月)。
実績全国47都道府県の1,200以上の施設へ導入(2026年2月末時点・トライアルを含む)。総解析件数1,600万件(同時点)。
URLhttps://lpixel.net/

編集後記|FrontJournal編集部より

撮影される画像の量と、読影できる量は、同じ速さでは増えません。装置が普及するほど画像は積み上がり、読影の現場に負荷がかかります。エルピクセルが向き合うのは、この読影の負荷を技術で支える課題です。

注目したいのは、AIに診断を委ねていない点です。候補を示すまでを担い、最終の判断は医師に残しています。責任の所在を動かさずに精度を支える設計だからこそ、承認を得て現場へ入れたといえます。

東京大学で磨かれた画像解析が、全国の診察室で日常の診療に溶け込みはじめています。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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