高精度地図なしで走る自動運転AIを研究する Wayve(英国発)

高精度地図なしで走る「自動運転AI」を研究【Wayve|英国発】

自動運転は、新しい都市に広げるたびに高精度地図の作成や走行計画の調整が要り、サービスを広げる速さが課題になっています。この課題に挑むのが、英国のウェイブ(以下Wayve)です。カメラやレーダーの情報から運転操作までを1つのAIが学ぶ「自動運転AI」を研究し、2026年9月にはUberとロンドンで自動運転ライドの提供を始めました。日産は、運転支援機能の次世代「ProPILOT」に同社のAIを組み込み、2027年度に投入すると発表しています。2026年2月には、12億ドル(約1,800億円)の資金調達を発表しました。

自動運転の課題

Wayveの紹介と、自動運転を新しい都市へ広げるたびに都市ごとの準備と調整が必要になることを示す図

都市ごとの準備に時間がかかる

従来の自動運転は、走る都市が増えるたびに準備と調整が必要になり、サービスを広げるのに時間がかかります。従来の方式は、道路の状況に応じた判断を人がルールとして書き込み、都市ごとの走行計画の調整が欠かせません。このままでは、対応する都市が増えるほど開発の工数が増え続けます。

地図の更新に手間がかかる

従来の方式は、高精度地図の作成と更新に手間がかかります。高精度地図は、センサーを載せた車両で道路を走って3次元で記録したもので、道路の工事や変更のたびに更新が必要です。このままでは、地図が整備されていない道では走れず、サービスの範囲が地図の整備範囲にとどまります。

FrontJournalの解説
  • 高精度地図車線の位置や信号、標識などを、センチメートル単位で3次元に記録した自動運転向けの地図。カーナビの地図より細かく、道路が変われば更新が要る。

Wayveが「自動運転AI」を研究

自動運転AIの研究を示す図。カメラとレーダーの情報から運転操作までを1つのニューラルネットワークが学び、高精度地図に頼らず新しい都市に対応する

課題解決に挑むWayve

Wayveは、運転のやり方を1つのニューラルネットワークが学ぶ「自動運転AI」を研究する英国の企業です。2017年にケンブリッジで創業し、現在の本社はロンドンにあります。出発点はケンブリッジ大学の研究で、共同創業者のアレックス・ケンドール氏が、生のデータから運転を学ぶ1つのニューラルネットワークによる自動運転を公道で実証しました。

1つのAIが学び新しい街に対応

同社は、1つのAIが運転を学ぶ方式により、新しい都市への展開で個別の地図づくりや走行計画の調整を減らせるとしています。Wayveの「AV2.0」は、カメラとレーダーの情報から、ハンドルや減速などの操作までを1つのニューラルネットワークで出力し、高精度地図を使わず、ラベルを付けていない走行データの学習に自己教師あり学習を使います。同社は、欧州・北米・日本の500以上の都市を、都市ごとの追加調整なしに走行したと公表しています。国内でも、チューリングが1つのAIで運転する「E2E自動運転」を開発し、シリーズAエクステンションで126億円を調達しました。

日本の道で学び量産車へ

Wayveは日本の道路のデータでAIを学習させ、日産はそのAIを量産車の運転支援に載せる計画を進めています。同社は2025年4月に横浜市へテスト・開発拠点を開き、東京と周辺地域でのテストと開発を進めています。日産は同月、次世代「ProPILOT」にWayveのAIドライバーと次世代LiDARを組み込み、2027年度に投入すると発表しました。2025年9月に公開された試作車は、11台のカメラと5つのレーダー、LiDARを備え、東京都心の市街地を走行しています。

FrontJournalの解説
  • ニューラルネットワーク脳の神経細胞のつながりを模した計算の仕組み。大量のデータから規則性を自分で学び、判断のしかたを身につける。
  • 自己教師あり学習人が正解を付けていないデータから、AI自身が規則性を見つけて学ぶ方法。ラベル付けの手間を減らせる。
  • LiDARレーザー光を発して反射の時間を測り、周囲の物体までの距離や形を3次元で捉えるセンサー。

「自動運転AI」の未来

自動運転AIの未来を示す図。ロンドンで自動運転ライドの提供を始め、世界の複数市場への展開と日本の量産車への搭載を進め、シリーズDで資金を調達した

ロンドンで自動運転ライド開始

UberとWayveは2026年9月3日、ロンドンで運転席に安全運転手が乗る形の自動運転ライドの提供を始めました。初期の車両は少数の「Ford Mustang Mach-E」で、Uberアプリで配車を頼むと割り当てられる場合があり、追加料金はありません。運転手なしでの運行は、追加の承認を待つ段階です。Wayveとは別に、国内の移動サービスでもAirXが兵庫県の空飛ぶクルマ事業化準備事業に採択されています。

世界の街で自動運転を目指す

Wayveは、Uberと世界の10以上の市場へ自動運転ライドを広げる計画です。日本では、日産車を通じて2027年度に運転支援として届く予定で、同社のAIを載せたL2+の消費者向けの車両は2027年から市場に出る計画です。同じ運転AIが乗用車と配車サービスの両方で使われれば、都市ごとの個別の開発を重ねずに、多くの街で自動運転の移動を使える可能性があります。

約1,800億円を調達し量産車搭載へ

Wayveは2026年2月、シリーズDで12億ドル(約1,800億円)を調達し、評価額は約86億ドル(約1兆2,900億円)になったと発表しました。Eclipse、Balderton、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2が主導し、MicrosoftとNVIDIA(エヌビディア)、Uberが参加しています。メルセデス・ベンツ、日産、ステランティスも出資し、同社が確保した資金の合計は約15億ドル(約2,250億円)です。この資金は、日産などの量産車への搭載と、Uberとの複数市場での展開を同時に進める土台になります。

FrontJournalの解説
  • L2+運転手が常に運転の責任を持ちながら、車がハンドルや加減速を支える運転支援(レベル2)のうち、対応する範囲を広げたものを指す業界の通称。完全な自動運転ではない。
  • 評価額投資家が会社全体につけた価値。資金調達の際に、出資額と持ち分の割合などから算出される。

まとめ

自動運転は都市ごとの地図と調整が普及の壁になっており、Wayveは1つのAIが運転を学ぶ方式で、この壁を低くしようとしています。日産の量産車への搭載と、Uberとのロンドンでの提供が、その方式を実社会で試す場になります。同社は、AIが現実の環境で動く領域に取り組み、Wayveとは別に、国内でもアトムがヒューマノイド開発でみずほ銀行と15億円の融資契約を結んでいます。2026年10月13日から幕張メッセで開かれるCEATEC 2026では、Japan Mobility Show Bizweek 2026が併催されます。FrontJournal編集部は、「自動運転AI」が日本の道でも使える移動手段になることに期待しています。

※ 本記事は各社の公式発表・主要報道をもとに、FrontJournal編集部が再構成したものです。数値は各社・各媒体の公表値です。ドルの円換算は1ドル=約150円で概算しています。
主な出典:Wayve 公式(シリーズD・日産との提携・日本拠点の発表)、Nissan 公式発表、Uber 公式発表、ケンブリッジ大学の記事。

この記事の作者

FrontJournal編集部

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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