TopoLogic「熱流束センサ」を開発|センサと熱の流れのイラスト

TopoLogic株式会社(トポロジック)

TopoLogic「熱流束センサ」を開発|研究領域=熱の流れを・直接測る/強み=薄膜で熱の・変化を即座に検知/将来性=電池や機器の・異常を早期に検知

企業紹介|TopoLogic株式会社とは?

熱の流れを直接測り、機器の温度変化を早い段階で捉える技術として、開発が進む「熱流束センサ」。TopoLogic株式会社は、その社会実装を目指す、東京大学発のエレクトロニクス系ディープテック企業です。熱流束センサ「TL-SENSING」を2023年に貸出開始し、協業企業との技術検証(PoC)を進めています。

キーワード「熱流束センサ」

「熱流束センサ」は、単位時間に単位面積あたりを流れる熱の量(熱流束)を測るセンサです。特徴は、温度の上昇を待たずに、熱が流れた瞬間の変化を捉えられる点にあります。バッテリーやパワー半導体(電力の変換や制御に使う半導体)の異常検出、工場の熱マネジメントなど、熱の動きを把握したい現場で、機器の状態の監視や制御に使われます。

市場課題|温度センサでは、熱の動きを捉えるのが遅れやすい

現状の温度センサの課題|現状は、温度が上がるまで熱の検知が遅れる|温度の上昇を待つ・検知の遅れ/多数の点を測る・際の妨げ

温度の上昇を待つ検知の遅れ

一般的な温度センサは、熱が伝わって部品の温度が上がってから、はじめて変化を示します。そのため、熱が流れ始めた瞬間と、センサが変化を示す時点との間に、時間差が生じやすくなります。バッテリーの発熱のように、変化の早さが問われる場面では、この遅れが課題になりやすい状況です。

多数の点を測る際の妨げ

従来のセンサは厚みや大きさがあり、小さな部品の近くに多数並べると、熱の流れそのものを変えてしまうため、多数の点を測る際の妨げになります。機器の内部では、熱の発生源が一か所とは限らず、複数の位置の熱の動きを見たい場面が多くあります。そのため、多数の点を常時見守るには、薄くて小型のセンサが必要です。

他にも、バッテリーの異常発熱の予兆検知、パワー半導体の故障予知、工場の熱管理、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 熱流束単位時間に、単位面積を通って移動する熱の量を指す。温度が「どれだけ高いか」ではなく、熱が「どれだけ流れているか」を表す量で、単位はW/m²で表される。

TopoLogicの強み|「熱流束センサ」を開発

TopoLogicが「熱流束センサ」を開発|現在は、薄膜構造で熱の即座な検知を提供|熱の流れを・直接測る仕組み/薄く小型で多数・配置しやすい

熱の流れを直接測る仕組み

温度センサは、熱が部品に伝わって温度が上がるまで待つため、熱の流れ始めを捉えにくくなります。

同社の「TL-SENSING」は、熱の流れを直接測る熱流束センサで、温度が上がるのを待たずに、0.01秒未満で熱を検知できるとされています。仕組みは、トポロジカル物質(電子の状態が、数学の位相幾何学という分野の考え方で分類される物質の総称)を使い、熱の流れと垂直な方向に生じる電圧を読み取るものです。この電圧は、異常ネルンスト効果(熱の流れと垂直な方向に電圧が生じる現象)によるものです。熱の動きを早い段階で知れるため、機器の異常発熱への対応を前倒しできるようになるとされています。

薄く小型で多数配置しやすい

従来のセンサは厚みがあり、小さな部品のまわりに多数並べると、熱の流れを妨げやすくなります。

同社のTL-SENSINGは、膜の厚みが既存のセンサの1000分の1以下とされる薄膜構造で、熱の流れを乱しにくく、電子機器の小さな部品のまわりにも配置できます。素子(センサの中で熱を検知する部品)はmm²からcm²のサイズで、量産を想定した機器への組み込みに向いた小型品です。低コストで製造しやすい構成とされるため、多数の点に同時に取り付ける使い方にも向きます。多数配置すれば、機器の内部の熱の動きを、点ではなく面で把握できるようになります。

FrontJournalの解説
  • 異常ネルンスト効果熱の流れと垂直な方向に電圧が生じる現象を指す。磁性をもつ物質などで現れ、熱の流れを電圧として直接読み取れるため、熱流束センサの原理に使われる。

熱流束センサの未来|素早い熱検知から、熱を感じる機器へ

TopoLogicの技術が変える未来|電池の異常検出から、熱を感じる機器へ|バッテリーの異常を・早期に検知/磁気メモリ・TL-RAMの開発/熱を感じる・機器を目指す

バッテリーの異常を早期に検知

同社は、TL-SENSINGを、バッテリーやパワー半導体の異常検出や故障予知に使うことを目指しています。熱の流れの変化を即座に捉えられる点が特徴です。そのため、熱暴走(発熱が連鎖して温度が急上昇する現象)の兆しを、温度の上昇より早く見つけられる可能性があります。複数の協業企業との技術検証(PoC)が進行中で、素子は量産を想定した組み込み設計とされています。

磁気メモリTL-RAMの開発

もう一つの柱が、異常ホール効果(磁性体に電流を流すと、垂直方向に電圧が生じる現象)を使う磁気メモリ「TL-RAM」です。磁気メモリは、電源を切っても記憶が残る不揮発性のメモリで、TL-RAMは低消費電力と高速な書き込みの両立を目指しています。2024年2月の発表では、2025年末を目処にプロトタイプチップを開発する計画でした。2026年10月時点で、公式サイトに完成の記載は確認できません。

熱を感じる機器を目指す

同社は、熱流束センサを、人やロボットの肌のように、熱の動きを感じ取る部品として使うことも見据えています。想定する分野は、遠隔操作で離れた場所の熱を操作者が感じ取れるようにすることと、ヒューマノイドロボット(人の形をしたロボット)に熱の感覚をもたせることです。センサを機器の各所に多数配置し、熱の状態を常時見守る使い方も挙げています。機器の安全や省エネへの活用が目標です。

会社概要|東京大学の研究成果を基に2021年に設立された企業

東京大学の研究成果を基に設立

TopoLogic株式会社は、2021年7月15日に設立された、東京大学発のスタートアップです。取締役技術顧問の中辻知氏は、東京大学の教授で、トポロジカル物質を研究領域とする研究者です。佐藤太紀氏は、東京大学大学院で航空宇宙工学の修士課程を修了し、マッキンゼー・アンド・カンパニーや産業用ドローンのスタートアップを経て、2021年11月に代表取締役CEOへ就任しました。

採択事業と受賞の実績

2025年に「J-Startup」に選定され、NEDOの「GX分野のディープテック・スタートアップに対する実用化研究開発・量産化実証支援事業」へ採択されました。2026年には、NEDOのGX_PoPフェーズ(大企業等との製品検証の段階)にも採択されています。受賞では、2024年にHello Tomorrow主催「Global Challenge 2024」の新素材部門(Industrial Biotech & New Materials)で優勝したほか、2025年の第25回「Japan Venture Awards」で中小機構理事長賞を受けています。2026年10月、TL-SENSINGが「CEATEC AWARD 2026」のネクストジェネレーション賞を受賞しました。

累計11.1億円の資金調達

累計の調達額は、2026年8月時点で11.1億円です。2024年2月に7億円を調達し、累計8.3億円となりました。このラウンドはSBIインベストメントがリードし、東大IPCなどが加わっています。2026年8月には、シリーズAの追加調達(エクステンションラウンド)で2.8億円を調達しました。

会社情報

会社名TopoLogic株式会社(TopoLogic Inc.)
所在地東京都文京区本郷7丁目3番1号 東京大学アントレプレナープラザ703。開発拠点:大阪市住之江区南港北2-1-10 ATCビルITM棟6階M-1-4C
設立2021年7月15日
代表代表取締役CEO 佐藤太紀。取締役技術顧問 中辻知(東京大学大学院理学系研究科教授)
調達累計11.1億円(2026年8月時点)
事業トポロジカル物質、デバイス、関連ソフトウェアの研究・開発・設計・製造・販売。コンサルティング等
技術領域熱流束センサ「TL-SENSING」。磁気メモリ「TL-RAM」。トポロジカル物質
採択NEDO GX分野のディープテック・スタートアップに対する実用化研究開発・量産化実証支援事業(2025年)。NEDO GX_PoPフェーズ(2026年)。J-Startup(2025年に選定)
URLhttps://www.topologic.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

熱は、機器の安全や省エネに関わる量でありながら、多くの場面で温度の変化から間接的にしか見られていません。TopoLogicは、従来のセンサとは異なり、トポロジカル物質の性質を使って、熱の流れを直接測ろうとしています。測る対象が熱の流れそのものに変われば、機器の設計や監視の考え方も変わる可能性があります。

TL-SENSINGが異常検出の対象に挙げるパワー半導体の分野では、GaN(窒化ガリウム)を使った設計と評価に取り組む株式会社Next Semiconductorも、研究開発を進めています。TopoLogicは、センサとメモリという二つの製品で、東京大学の基礎研究を産業へつなげようとしています。二つの製品の将来性が、今後の注目点です。

熱を「測る」から「感じる」へと広がる未来を、楽しみに待ちたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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