クラウドなしでAIを動かすエッジAIプロセッサを研究する Hailo(イスラエル発)

クラウドなしでAIを動かす「エッジAIプロセッサ」を研究【Hailo|イスラエル発】

カメラの映像や音声をAIで処理する場合、データをクラウドへ送る方式では通信の遅れと消費電力が課題になります。そこで、機器の内部でAIの推論(学習済みのAIで答えを出す処理)を行う「エッジAI」が広がっています。この分野に挑むのが、イスラエルのハイロ(以下Hailo)です。端末内でAI処理を行う「エッジAIプロセッサ」を研究し、2026年9月には米Microchip Technologyによる買収の完了が発表されました。

AI処理の課題

Hailoの紹介と、AI処理をクラウド経由で行うと遅れが出ること、機器に載せるチップは電力と費用の制約が大きいことを示す図

クラウド経由で遅れが出る

AIの推論をクラウドで行うと、通信の遅れが出やすくなります。映像などのデータをデータセンターへ送り、結果を受け取るため、往復の時間が必要です。このままでは、運転支援のように即時の判断が要る場面で、AIを使いにくくなります。

電力と費用の制約が大きい

エッジAIのチップは、消費電力と費用の制約が大きくなります。バッテリーで動くカメラや車載機器では、データセンター並みの電力を使えません。このままでは、AIを搭載できる機器の種類が限られます。

FrontJournalの解説
  • エッジAIクラウドではなく、カメラや車載機器などの端末側でAIの処理を行う方式。通信の遅れを抑えやすい。
  • 推論学習済みのAIに新しいデータを入力して、答えや判定を出す処理。
  • データセンター多数のサーバーを集めて、データの処理や保管を行う施設。

Hailoが「エッジAIプロセッサ」を研究

エッジAIプロセッサの研究を示す図。Hailo-8は最大26TOPS・代表値2.5Wで、Hailo-10Hは生成AIに対応する

課題解決に挑むHailo

Hailoは、エッジAI向けの半導体を設計するイスラエルの企業です。2017年に創業し、創業者のOrr DanonがCEO(最高経営責任者)を務めます。製品は、AI処理を高速化する「AIアクセラレータ」と、カメラ向けの「AIビジョンプロセッサ」です。

低電力で動くHailo-8

Hailo-8は、最大26 TOPS(1秒間に実行できる演算回数の単位)の性能を、代表値2.5Wの消費電力で出せるとしています。外付けのメモリ(DRAM)が要らない設計で、機器に組み込みやすい構成です。M.2やPCIeなどの小型の規格で提供します。産業用と車載用の温度範囲にも対応します。

生成AIに対応するHailo-10H

Hailo-10Hは、エッジ機器で生成AI(文章や画像を新しく作り出すAI)を動かすことをめざした製品です。INT4(整数4ビットの低精度演算)で40 TOPS、代表値2.5Wの消費電力としています。LLM(大規模言語モデル)などの大きなモデルにも、外部メモリを直接接続する設計で対応をめざします。AI向け半導体の熱を逃がす素材は国内でも進み、アドバンスコンポジットが京都iCAPからシリーズBの資金調達を実施しています。

FrontJournalの解説
  • AIアクセラレータAIの推論や学習を、汎用の半導体より速く・少ない電力で処理するための専用チップ。
  • TOPS1秒間に実行できる演算回数の単位。1 TOPSは1秒間に1兆回の演算にあたる。
  • LLM大量の文章を学習して、文章の理解や生成を行う大規模なAIモデル。

「エッジAIプロセッサ」の未来

エッジAIプロセッサの未来を示す図。生成AIが機器の中で動き、車載機器やロボットへ広がり、Microchipの傘下で展開を広げる

生成AIが機器の中で動く

Hailoは、クラウドを使わずに処理できるため、低遅延、オフライン動作、データの保護に役立つとしています。映像や音声をクラウドへ送らずに済み、機器の内部で完結します。これにより、パソコンや車載機器で生成AIを使う場面が広がる可能性があります。

車載機器やロボットへ広がる

Hailo-8の対応分野には、ロボットとドローン、運転支援・自動運転、工場の外観検査が挙げられています。エッジでAI推論を行う動きは宇宙にも及び、スペースシフトは衛星上のAI推論で4海域の船舶検知を実証しました。データの伝送量を約90%減らせる見込みとしています。

買収を経て展開を広げる

Microchip Technologyは2026年9月21日、Hailoの買収完了を発表しました。取引条件は開示されていません。Microchipは、Hailoの製品を自社の組み込みプロセッサやFPGA、接続性、セキュリティ製品と組み合わせ、エッジAI、マシンビジョン、ロボティクス向けの提供をめざします。Hailoの既存製品と顧客との関係は、引き続きサポートするとしています。

FrontJournalの解説
  • FPGA購入後に、用途に合わせて回路の構成を書き換えられる半導体。
  • マシンビジョンカメラの映像をコンピューターで解析し、検査や位置の判定などを自動で行う技術。

まとめ

エッジでAIを動かすには通信の遅れと電力の制約が壁になっており、Hailoは低電力のAIアクセラレータで、この壁を低くしようとしています。Hailo-8に続くHailo-10Hで、生成AIを機器の内部で動かす構想も示しました。半導体の分野では、STマイクロエレクトロニクスが耐量子暗号対応のセキュアチップ「ST54M」を発表するなど、機器側の動きが続いています。FrontJournal編集部は、Microchipのもとで製品と開発環境の提供が続くことに期待しています。2026年11月18日からパシフィコ横浜で開かれる「EdgeTech+ 2026」など組込み分野の動きとあわせ、「エッジAIプロセッサ」が身近な機器に組み込まれることにも期待します。

※ 本記事は各社の公式発表をもとに、FrontJournal編集部が再構成したものです。数値は各社の公表値です。
主な出典:Hailo 公式(Hailo-8・Hailo-10Hの製品ページ、企業概要)、Microchip Technology の発表(Hailoの買収完了)、スペースシフト・アドバンスコンポジット・STマイクロエレクトロニクスの各発表。

この記事の作者

FrontJournal編集部

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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