株式会社PITTANは肌に貼ったパッチで集めた汗を分析する神戸大学発の企業

株式会社PITTAN(ピッタン)

PITTAN「汗分析」を研究|研究領域=汗のアミノ酸から・栄養状態を推定/強み=微量の汗でも・抽出して分析/将来性=美容から・健康診断へ

企業紹介|株式会社PITTANとは?

肌に貼ったパッチで集めた汗から体の栄養状態を読み取る技術として、注目を集める「汗分析」。株式会社PITTANは、その社会実装を目指す、神戸大学発のヘルスケア系ディープテック企業です。汗の分析サービス「Nutrifull」をエステサロンやフィットネスジムなどへ提供し、その分析を店頭で行う体液分析装置「Pitagoras」を開発し、実証実験も行いました。

キーワード「汗分析」

「汗分析」は、皮膚から出る汗に含まれる成分を測る検査手法です。特徴は、採血に比べて体への負担が小さく、繰り返し測りやすい点にあります。汗の成分から栄養の過不足を推定できれば、スキンケア用品を選ぶときや運動の計画を立てるときに、肌や筋肉の状態を確かめる目安になります。

市場課題|栄養状態を日常的に測る手段が乏しい

現状の栄養状態の検査の課題|現状は、採血の負担と汗の低濃度で日常の検査が困難|採血が必要で・気軽に測りにくい/汗は成分が薄く・分析が困難

採血が必要で気軽に測りにくい

体の栄養状態を詳しく調べる血液検査は、採血を伴うため気軽には受けにくいのが実情です。血液は含まれる成分の研究が進んでいますが、採血には針を刺す処置が必要で、通常は医療機関で行われます。このままでは、スキンケアや運動の効果を確かめたい場面で、日常的に繰り返し測るのは難しいです。

汗は成分が薄く分析が困難

汗は汗腺(皮膚にある、汗を作って出す器官)から出る採取しやすい体液ですが、成分が低濃度で、微量の成分を正確に測るのが困難です。汗の成分から栄養状態を調べる研究は以前から行われてきたものの、産業として広く使われるには至っていません。検査室での分析は結果が届くまでに日数を要するため、店頭で結果を返す使い方は限定的です。

他にも、血液検査の前に求められる食事の制限、基準となる健常者の汗のデータの少なさ、測定値を評価する基準の整備の遅れ、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 汗腺皮膚にあり、汗を作って体の外へ出す小さな器官を指す。血液の液体成分をもとに汗を作るため、汗には血液に由来する成分がわずかに含まれる。汗の成分と体内の栄養状態の関係は、研究が進められている段階である。

PITTANの強み|「汗分析」を研究

PITTANが「汗分析」を研究|今後は、小型装置でその場の汗分析が可能に|パッチの汗で・肌と筋肉の状態を推定/微量の汗の成分を・チップで抽出

パッチの汗で肌と筋肉を推定

汗の検査では、分析に足りる量を集めるために運動や薬剤で発汗を促すことが多く、採取に時間と手間がかかります。

同社の汗分析サービス「Nutrifull」は、顔の肌に3分貼ったパッチで汗を集め、郵送で回収して汗に含まれるアミノ酸を分析するサービスです。アミノ酸は肌や筋肉のタンパク質の材料になる成分で、汗に含まれるアミノ酸の組み合わせは体調や年齢によって変わります。測定で得た波形を機械学習で解析して複数のアミノ酸の量を求め、その組み合わせから肌や筋肉を作る栄養が足りているかを推定する点が特徴です。採血に比べて体への負担が小さいため、スキンケアや食事、サプリメントを選ぶ手がかりを日常的に得られます。

微量の汗の成分をチップで抽出

濃度の低い汗から微量の成分を測るには、成分を抽出する前処理が要り、その作業は検査室の分析装置で行うのが一般的です。

Pitagoras」は、「Nutrifull」の分析を店頭で行うための体液分析装置で、一辺約18cmの立方体に、分析に必要な工程を収めています。半導体の加工技術で微量の液体を扱うμ-TAS(マイクロトータル分析システム)を用い、汗の成分をチップの上で抽出します。成分を試薬で検出し、アミノ酸の量から肌や筋肉の状態を推定する仕組みです。採取したパッチを本体にセットし、画面の案内に従うだけで分析できます。採取3分と分析10分で結果が出るため、店頭に置けば検査室へ試料を送る手間が要らなくなります。

FrontJournalの解説
  • μ-TAS試料の前処理から検出までの分析の工程を、半導体の加工技術で作った小さなチップの上にまとめる技術を指す。扱う液体がごく少量で済み、分析装置そのものも小型にできる。

汗分析の未来|美容から健康診断への応用

身近な汗分析が変える未来|汗分析の活用を美容から健康診断へ|肌のタイプと・6項目のスコア/小型装置で・店頭の即時分析へ/全身の健康状態の・評価を目指す

肌と筋肉の状態を数値で提示

2025年5月には、H2Oリテイリングの健康サービス「まち健」の実証実験で、「Pitagoras」を使った汗分析が行われました。結果は、肌のタイプを4つに分けた診断と、6項目のスコアで肌の状態を示す内容です。筋肉については、「Nutrifull」が筋肉と脂肪のつきやすさを評価し、サプリメントの摂り方やトレーニングの方法を提案します。同サービスはエステサロンやフィットネスジムに加え、スキンケアブランドでも採用が進んでいます。

小型装置で店頭の即時分析へ

2025年10月には、大阪の未来医療の拠点施設「中之島クロス」と香港に研究開発拠点を設け、量産を見据えた体制を整えました。2026年4月からは、理美容・エステティック用品の総合商社である滝川株式会社が、サロン向けに「Pitagoras」の取り扱いを始めました。将来は、薬局や自由診療のクリニックといった医療に近い場所への提供も視野に入れています。

全身の健康状態の評価を目指す

同社は、汗の成分から全身の健康状態を評価し、将来の病気の予測につなげることを目指しています。2024年12月には大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センターと、汗と血液の成分の関係を調べる共同研究を始めました。この研究では、職員の健康診断で同意を得て汗を採取し、アルブミン(血液中に最も多く含まれるタンパク質)や炎症物質といった血液のデータと照らし合わせます。汗と血液の成分の対応が分かれば、健康診断での活用や、訪問介護の現場での手軽な栄養状態の把握につながる見込みです。

会社概要|PITTANの事業内容と設立背景

東京大学の分析技術を事業化

株式会社PITTANは、東京大学大学院薬学系研究科で角田誠氏が研究してきた、微量の生体分子を分析する技術をもとに、2022年6月に設立された企業です。2024年9月には神戸大学発スタートアップとして神戸大学の認定を受け、2025年12月には本店を神戸市から大阪市北区へ移しました。代表取締役CEOの辻本和也氏は、京都大学大学院でMEMS(半導体の加工技術で作る微小な機械部品)を研究し、東京エレクトロンやロームで研究開発に携わった人物です。

育成・表彰と専門家の助言

同社の取り組みは、国内外の育成プログラムや表彰でも取り上げられています。2022年には、新興企業の成長を支援する海外の育成プログラムTechstars」に参加しました。代表の辻本氏は、起業家を表彰する「EY Entrepreneur Of The Year 2025 Japan」の関西地区で特別賞を受けています。皮膚科学の分野では、東京医科大学の乃木田俊辰客員教授がアドバイザーです。

ライオンなどから資金を調達

2025年10月、同社はライオンや化学メーカーの綜研化学などを引受先とする第三者割当増資(特定の相手に新株を引き受けてもらう資金調達の方法)で、総額1.6億円を調達しました。それ以前の2024年7月には、クオンタムリープベンチャーズや神戸大学キャピタルなど4社から約1.5億円を調達し、同月時点の累計調達額は約2.3億円でした。ライオンは、同社に蓄積されたデータを、皮膚科学などヘルスケア領域の研究開発に生かす方針です。

会社情報

会社名株式会社PITTAN(ピッタン)
所在地大阪府大阪市北区中之島4丁目3番51号
設立2022年6月9日
代表代表取締役CEO:辻本 和也
調達2024年7月:約1.5億円(クオンタムリープベンチャーズ、岡三キャピタルパートナーズ、神戸大学キャピタル、京都キャピタルパートナーズ)。2025年10月:総額1.6億円(ライオン、綜研化学ほか)
事業汗の分析サービス「Nutrifull」。小型の体液分析装置「Pitagoras」の開発
技術領域微量の汗に含まれるアミノ酸の分析。μ-TASを用いた分析装置の小型化。汗と血液の成分の相関研究
連携大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センター(2024年12月・共同研究)。ライオン(2025年10月・出資)。東京医科大学 乃木田俊辰客員教授(皮膚科学のアドバイザー)
採択神戸大学認定ベンチャー(2024年9月)。EY Entrepreneur Of The Year 2025 Japan 関西地区 特別賞。Techstars '22 Global Scale に参加
URLhttps://www.pittan.life/

編集後記|FrontJournal編集部より

汗は誰もが毎日かいているのに、体の状態を知る材料としては、産業の場で広く使われるには至っていませんでした。成分の濃度が低く、分析に手間がかかることが、その理由の一つです。PITTANは、その汗をパッチ1枚で集めて測れる試料へと変えつつあります。

注目したいのは、分析サービスを提供するだけでなく、分析装置そのものを小さくすることで、検査を検査室から店頭へ移そうとしている点です。装置が小さくなれば、測る場所はエステサロンやジムに限らず、介護の現場へも広げられる可能性があります。大阪大学との共同研究が進めば、汗の役割は肌や筋肉の評価から健康診断の場面にまで及ぶかもしれません。

パッチで集めた汗から自分の体を知ることが、身近な習慣になる日を期待しています。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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