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同じ面積で発電量を増やす「タンデム型太陽電池」を開発【Oxford PV|英国発】

日本では太陽光発電の導入が進んだ一方で、パネルを平置きできる土地が減り、同じ面積からより多くの電力を得る技術が求められています。この課題に挑むのが、英国のオックスフォードPV(以下Oxford PV)です。同社は、ペロブスカイトという材料を、現在主流のシリコン太陽電池の上に重ねた「タンデム型太陽電池」を開発し、すでに米国の発電所向けに商用出荷を始めています。2025年4月には、中国の太陽光パネル大手Trinasolar(トリナ・ソーラー)と特許ライセンス契約を結んだと発表しています。

太陽光発電の課題

Oxford PVの紹介と、太陽光パネルを置く適地が減っていること、シリコン太陽電池の変換効率が理論上の上限に近づいていることを示す図

平置きできる適地が減少

資源エネルギー庁によると、日本の国土面積あたりの太陽光発電の導入量は、すでに主要国でも最大級です。導入が進み、パネルを平置きできる適地は減りつつあり、国は今後、屋根や壁面への設置も進める方針を示しています。このまま置き場所が限られていけば、パネルの枚数を増やすだけでは、太陽光発電の導入量を伸ばしにくくなります。

シリコンの効率は上限に接近

現在主流のシリコン太陽電池は、変換効率が理論上の上限に近づいています。ドイツの研究機関Fraunhofer ISEによると、市販されているシリコンのパネルの変換効率は、過去10年で約17%から25%弱まで高まりました。一方で、シリコン1層の太陽電池(セル)には約29.4%という理論上の上限があり、上限に近づくほど、同じ面積で得られる電力を上積みする余地は小さくなります。

FrontJournalの解説
  • シリコン太陽電池ケイ素(シリコン)の結晶を使う太陽電池。現在の太陽光パネルの主流で、住宅の屋根から大規模な発電所まで広く使われている。
  • 変換効率太陽電池に当たった光のエネルギーのうち、電気に変えられる割合。数値が高いほど、同じ面積のパネルから多くの電力を得られる。

Oxford PVが「タンデム型太陽電池」を開発

タンデム型太陽電池の仕組みを示す図。シリコンにペロブスカイトを重ねて光を2層で分担し、同じ面積で発電量を最大2割増やす

課題解決に挑むOxford PV

Oxford PVは、ペロブスカイトとシリコンを重ねた「タンデム型太陽電池」を開発・製造する企業です。2010年に英国で設立され、オックスフォード近郊に本社と研究開発の拠点を、ドイツのブランデンブルク・アン・デア・ハーフェルに生産拠点を置いています。出発点はオックスフォード大学ヘンリー・スナイス氏(同大学教授)の研究室で、同社はその研究室から分かれて設立された大学発の企業です。

2層で光を分け効率が向上

「タンデム型太陽電池」は、吸収できる光の波長の範囲が異なる2種類の太陽電池を重ね、太陽の光を波長ごとに分担して電気に変えます。上に重ねたペロブスカイトが青色側のエネルギーの高い光を先に吸収し、通り抜けた赤色側の光を下のシリコンが吸収する仕組みです。シリコン1層では、エネルギーの高い光がもつ余分なエネルギーが熱として失われますが、2層で分担するとこの損失を減らせるため、この構造の理論上の上限は、同社によると約43%まで高まります。同社は2024年6月、住宅用サイズ(60セル・面積約1.6平方メートル)の記録用のモジュールで、Fraunhofer ISEの測定部門が認証した変換効率26.9%を記録し、現在最も効率の高いシリコンのモジュール(約25%)を上回ったとしています。

同じ面積で発電量が最大2割増

Oxford PVによると、同社のパネルは、一般的なシリコンのパネルと比べて、同じ面積で最大20%多く発電できます。屋根や敷地の広さが変わらなくても、得られる電力を増やせる点が利点です。

FrontJournalの解説
  • ペロブスカイト特定の結晶構造をもつ材料の総称。薄い膜でも光を効率よく吸収して電気に変えられる。吸収する光の波長を、材料の組み合わせで調整できる。
  • 波長光の色を決める波の間隔。青い光は波長が短くエネルギーが高く、赤い光は波長が長くエネルギーが低い。
  • モジュール太陽電池の最小単位であるセルを複数つなぎ、1枚のパネルの形にまとめた製品。

タンデム型太陽電池の未来

タンデム型太陽電池の未来を示す図。狭い屋根でも発電量を増やせるようになり、少ない用地での発電拡大を目指し、中国の太陽光パネル大手と特許で提携したことを示す

狭い屋根でも発電量増加が可能に

同社は2024年9月、72セルのパネルを米国の発電所向けに商用出荷しました。同じ面積で得られる電力が増えれば、発電所だけでなく、住宅や工場の狭い屋根でも発電量を上積みできます。日本でも、「タンデム型太陽電池」に限らずペロブスカイト太陽電池を屋外で確かめる動きが進み、東北電力と倉元製作所は2026年7月、都市部の建物や農地への設置に向けて、積雪地も視野に入れたペロブスカイト太陽電池の性能評価を始めました。建材一体型の太陽光パネルを開発するモノクロームも、外壁と一体化したパネルに向けた技術検証として、低温・強風・寒暖差への耐久性を確かめるため、標高6,000m級の環境でペロブスカイト太陽電池の実証実験を行うと発表しています。

少ない用地で発電拡大を目指す

パネルの変換効率を2027年に27%、2030年に30%へ高めることが、Oxford PVの目標です。効率が上がれば、同じ発電量に必要なパネルの枚数と用地を減らせるため、適地の限られた地域でも導入を広げやすくなります。日本では、効率を上げる方法とは別の取り組みとして、京都大学発の企業であるエネコートテクノロジーズが、薄く曲げられるフィルム型のペロブスカイト太陽電池の量産に向けて、京都府宇治市で工場の建設を進めています。

中国大手と特許で提携

Oxford PVは2025年4月、中国の太陽光パネル大手Trinasolar(トリナ・ソーラー)と特許ライセンス契約を結んだと発表しました。契約の対象は、中国でペロブスカイトを使った太陽光発電の製品を製造・販売する権利で、第三者へ再許諾する権利も含む内容です。同社は、中国以外の地域でライセンスを希望する企業も募っています。自社工場での生産に加えて特許の供与が広がれば、「タンデム型太陽電池」を製造する企業と地域が増える可能性があります。

FrontJournalの解説
  • 特許ライセンス契約特許を持つ企業が、他社にその技術の利用を認める契約。認めた側は利用料などを受け取り、認められた側はその技術を使った製品を製造・販売できる。
  • 再許諾ライセンスを受けた企業が、さらに別の企業へ技術の利用を認めること。サブライセンスともいう。

まとめ

Oxford PVは、オックスフォード大学の研究をもとに、ペロブスカイトとシリコンを重ねた「タンデム型太陽電池」を製品にしました。光を2層で分担してシリコン1層の上限を超える効率を目指し、発電所向けの商用出荷も始めています。Trinasolarとの特許ライセンス契約により、自社工場の外へ技術を広げる手段も整えました。FrontJournal編集部は、同じ面積で得られる電力を増やす技術が、適地の限られた日本の太陽光発電にとって選択肢の1つになることに期待しています。国内で進むペロブスカイト太陽電池の開発とあわせて、実際の屋根や発電所での成果が公表されることにも注目しています。

※ 本記事は各社・各機関の公式発表・主要報道をもとに、FrontJournal編集部が再構成したものです。数値は各社・各機関の公表値です。
主な出典:Oxford PV 公式(会社概要/技術紹介/プレスリリース)、Fraunhofer ISE、資源エネルギー庁、東北電力・モノクロームのプレスリリース。

この記事の作者

FrontJournal編集部

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