2026.07.22 名古屋大学・九州大学・JST 元発表:2026.07.22

名大・九大、AIと量子化学で高効率な青色有機EL材料を発見(FrontJournal解説)

ニュース紹介

「AI×量子化学で色純度の高い青色発光材料を発見~設計から素子作製・評価まで一気通貫、材料開発を劇的に加速~」

名古屋大学、九州大学、科学技術振興機構(JST)の研究グループは、機械学習と量子化学計算を組み合わせ、色純度が高く発光効率にも優れた青色発光材料を発見したと発表した。研究グループはまず約2万種の仮想分子ライブラリーを生成し、そのうち約1,000分子について量子化学計算を実施。その結果をAI(人工知能)に学習させ、残りの全候補の発光特性を高速に予測することで、有望な分子を効率的に絞り込んだ。見いだされた材料はホウ素を含まないカルバゾール含有多環芳香族分子(Cz-PAH)で、発光スペクトルの波長幅は17〜19ナノメートル、外部量子効率は最大35.2%を示した。色度座標は次世代の広色域規格「Rec. 2020」の青色原色に迫るという。研究グループは、分子設計から素子作製・評価までを一気通貫で行い、データ駆動型の材料開発を加速できるとしている。

出典:科学技術振興機構(JST) 2026年7月22日 プレスリリース
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20260722-3/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

スマートフォンやテレビの有機EL(有機発光ダイオード)ディスプレーは、赤・緑・青の3色の光を混ぜて色を作ります。このうち青色の発光材料は開発が最も難しいとされ、業界の長年の課題でした。青色は光のエネルギーが高いため材料が劣化しやすく、「効率」「色の純度」「寿命」の3つを同時に満たす材料がなかなか見つからないためです。

従来の蛍光材料は色の純度は高いものの発光効率が低く、逆にレアメタルを使うりん光材料やTADF(熱活性遅延蛍光)材料は効率が高い一方で発光スペクトルの幅が広く、色が濁りやすいという弱点がありました。より広い範囲の色を表現できる次世代規格「Rec. 2020」に対応するには、鮮やかで純度の高い青が欠かせません。今回の研究は、この難題にAIと量子化学計算という計算科学のアプローチで挑んだものです。

①約2万分子から有望材料を絞り込むデータ駆動型の探索

新しい発光材料の開発では、候補となる分子を1つずつ合成し、性能を測定する試行錯誤に膨大な時間がかかってきました。研究グループは、まず約2万種の分子構造をコンピューター上で設計し、そのうち約1,000分子だけを量子化学計算で詳しく解析。この計算結果をAIに学習させることで、残る全候補の発光特性を高速に予測しました。「計算で当たりをつけてから合成する」という順序に変えることで、有望な分子を効率的に見つけ出せる点が、この研究の要にあたります。

②ホウ素を使わずに高い色純度と発光効率を両立

近年の高色純度な青色材料にはホウ素を含む分子が多く使われてきましたが、今回見いだされた材料はホウ素を含まないCz-PAHという骨格でありながら、波長幅17〜19ナノメートルという狭い発光と、外部量子効率で最大35.2%という高い性能を両立しました。使用元素の選択肢が広がることは、材料の安定調達やコスト低減の観点でも意味を持ちます。研究グループは分子設計から素子化までを一貫して検証しており、計算科学と実験を結びつけた材料開発の一例といえます。

編集部からひとこと

ディスプレー材料の開発は、日本の化学メーカーが強みを持つ分野の一つです。今回の成果は特定の1材料にとどまらず、「AIで候補を絞り込み、実験で確かめる」という開発の型そのものを示した点に注目したいところです。実際の製品に載るまでには寿命や量産性などの検証が続きますが、材料探索の時間を縮める手法として、他の機能材料への応用も期待されます。

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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