2026.09.04
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神戸大学・理化学研究所
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元発表:2026.08.27
神戸大学ら、RAFの形を変えて幅広いRASがんを抑える化合物を開発
ニュース紹介
「RASがんの増殖シグナルを"遠隔操作"で遮断する新戦略 -RAFの『形』を変えて幅広いRASがんを抑える低分子化合物を開発-」
神戸大学大学院医学研究科の島扶美教授らの研究グループは、同理学研究科の田村厚夫准教授、同医学系研究科の青井貴之教授、理化学研究所環境資源科学研究センターの小山裕雄ユニットリーダー、同生命医科学研究センターの本間光貴チームディレクター、高輝度光科学研究センターの熊坂崇主席研究員らとの共同研究により、がんの増殖に関わるRASシグナルを新たな仕組みで阻害する低分子化合物を開発しました。
多くのがんではRASの異常により細胞増殖のシグナルが出続けます。開発された化合物はRASそのものではなく、RASから情報を受け取るRAFタンパク質の、RAS結合部位とは異なる部位に結合します。これによってRAFの構造が変化し、その影響がRASとの結合面に伝わることで、RASとRAFの結合が妨げられます。アロステリックと呼ばれる作用で、RASシグナルをいわば「遠隔操作」で遮断する新たな仕組みです。
約250万種類の化合物をコンピュータのアクティブラーニングで効率よく探索し、Kobe3708を見出しました。改良版のRK440・RK447はKRAS・NRAS・HRAS変異がんに加え、BRAF阻害薬に耐性を示す悪性黒色腫でも抗腫瘍効果を示しました。幅広いRAS関連がんや薬剤耐性がんへの新たな治療薬開発につながることが期待されます。
出典:神戸大学 2026年8月27日 プレスリリース
https://www.kobe-u.ac.jp/ja/news/article/20260827-68212/
FrontJournalの解説
この研究分野について
RASは細胞増殖のスイッチを担うタンパク質で、多くのがんで遺伝子の異常が見つかります。異常なRASは「入りっぱなし」の状態になり、細胞が止まらず分裂を続けます。
ただしRASは表面が滑らかで、薬の分子が引っかかる「くぼみ」に乏しく、長らく「創薬しにくい標的」と呼ばれてきました。近年、KRASの一部の変異には結合する薬が承認されましたが、対応できる患者は限られており、下流のRAFやMEKを狙う薬にも耐性の問題が残ります。研究者は、RAS自身を狙わずに信号を止める道を探しています。
①RASを狙わずRAFの形を変えて信号を止める
今回の化合物はRAS本体ではなく、シグナルを受け取るRAFタンパク質に結合します。しかも結合する場所は、RASと出会う面ではなく、そこから離れた別の部位です。
結合するとRAFの立体構造が変化し、その影響がRAS結合面に伝わることでRASとRAFがうまく噛み合わなくなります。この「離れた場所から効かせる」働きがアロステリック作用で、標的の表面に薬の入る場所がなくても、離れた別の部位を経由して機能を抑えることができます。
②250万化合物からAI探索でKobe3708を発見
研究チームは約250万種類の化合物を、アクティブラーニングと呼ばれるAI手法で絞り込みました。少数の実験結果から次に試すべき候補を予測して回すことで、総当たり検証に比べて短い時間で有力候補にたどり着けます。
こうして見出されたKobe3708と、その改良版RK440・RK447は、KRAS・NRAS・HRASの各変異がんに加え、BRAF阻害薬に耐性を示した悪性黒色腫の細胞でも抗腫瘍効果を示しました。1つの化合物で異なる変異型や耐性がんへ届きうる点が、既存薬との違いです。
編集部からひとこと
RASは40年以上前から知られる代表的ながん遺伝子で、多くの薬が挑んで届かなかった標的です。狙う相手を変え、離れた部位を経由して信号を止めるという発想は、他の「創薬しにくい標的」にも応用が広がる余地があります。論文はNature Communications誌に2026年8月27日付で掲載されました(DOI:10.1038/s41467-026-76337-2)。安全性や有効性の詳細な検証は次の段階です。
本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。
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