2026.09.04 │ 岐阜大学・理化学研究所 │ 元発表:2026.08.31

岐阜大学ら、TG2の働きから敗血症性肝障害の悪化メカニズムを解明

ニュース紹介

「敗血症性肝障害を『タンパク質品質管理』の視点から解明 -TG2によるビメンチン架橋が肝臓マクロファージの炎症を制御-」

岐阜大学大学院医学系研究科の秦咸陽特任講師らの研究グループは、敗血症に伴う肝障害が悪化する新たな分子メカニズムを明らかにしました。研究グループは、細菌毒素であるリポ多糖を感知して活性化した肝臓のマクロファージにおいて、タンパク質架橋酵素「トランスグルタミナーゼ2」が細胞骨格タンパク質「ビメンチン」を架橋することを発見しました。

敗血症は感染に対する免疫反応が過剰となり、全身に炎症が生じて臓器に深刻な障害を引き起こす病気です。特に肝臓は敗血症の影響を受けやすく、肝障害を発症すると死亡率が約60%に達しますが、発症メカニズムには未解明な部分が多く、有効な治療法は確立されていません。

本研究では、TG2がビメンチンを架橋し、線維状のネットワークを核周囲の「かご状構造」へと再編成することを見出しました。この構造変化によりプロテアソームの動員が妨げられ、炎症シグナル分子TRAF6の分解が抑制され、炎症が持続します。TG2またはビメンチンを阻害すると、Rab27a陽性小胞を介した新たなタンパク質分解経路が活性化され、TRAF6分解が促進されて炎症が抑制されました。共同研究には理化学研究所環境資源科学研究センターの堂前直ユニットリーダー、東京慈恵会医科大学の古谷裕准教授、名古屋大学の辰川英樹助教が参加しています。

出典:岐阜大学 2026年8月31日 プレスリリース
https://www.gifu-u.ac.jp/news/research/2026/08/entry31-15300.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

敗血症は、感染症をきっかけに体の免疫が暴走し、全身の臓器に炎症が広がる状態です。肝臓は解毒や代謝の中枢で、ここが機能を失うと生命維持が難しくなります。

この炎症の中心にいるのがマクロファージという免疫細胞です。細菌の膜成分(リポ多糖)を感知するとサイトカインを出し、周囲を炎症状態に切り替えます。研究者は、この応答の「アクセル」と「ブレーキ」が細胞内でどのように制御されているかを分子の言葉で追いかけています。

①炎症を止める経路が分子の骨組みで塞がれていた

細胞の中では、役目を終えたタンパク質はプロテアソームという分解装置に運ばれて壊されます。炎症シグナルを伝えるTRAF6もこの経路で分解され、炎症を長引かせない仕組みが働きます。

研究チームは、活性化した肝臓のマクロファージでTG2という酵素がビメンチンを架橋し、細い線維状だった細胞骨格が核の周りを取り囲む「かご状」の構造へ再編成されることを見出しました。この籠がプロテアソームの近づく道を塞ぐため、TRAF6が分解されず炎症が持続します。

②2剤の併用でマウスの致死を4日間防いだ

TG2やビメンチンの働きを止めると、Rab27a陽性の小胞を介した別のタンパク質分解経路が活性化し、TRAF6の分解が進んで炎症が収まりました。細胞骨格の状態が、どの分解経路を使うかを切り替えるスイッチとして働いていることを示しています。

治療への応用として、TG2阻害薬シスタミンとオートファジー阻害薬クロロキンを併用した実験が報告されています。それぞれ単独で使うより高い効果が得られ、敗血症モデルマウスの致死を4日間にわたって完全に防ぐことに成功しました。既存薬の組み合わせで検証できた点は、臨床応用の見通しを立てやすくします。

編集部からひとこと

敗血症は世界的にも死亡数の多い疾患で、ICUに搬送されても救命が難しい局面が続いてきました。今回はサイトカインを直接叩くのではなく、タンパク質の分解経路そのものを制御する筋道が示されています。既存薬2剤の併用でマウスに効いた点は臨床への橋渡しを短くする可能性があります。論文はScience Advances誌に2026年8月29日付で掲載されました(DOI:10.1126/sciadv.aea7513)。

FrontJournal編集部

プレスリリース原文を読む

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら