NTTドコモビジネス・東芝・NEC、東名阪600kmの広域量子暗号通信ネットワーク構築を開始
要約
NTTドコモビジネス株式会社、株式会社東芝、日本電気株式会社(NEC)の3社は、総務省および国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が進める量子鍵配送の社会実装に向けた取り組みの一環として、東京・名古屋・大阪の三大都市圏を結ぶ約600kmの広域量子暗号通信ネットワークの構築を開始したと発表しました。構築後は、量子鍵配送(QKD)を用いた実証実験を実施し、長距離環境における性能・安定性・安全性・運用性を検証します。医療、金融、電力業界などでの社会実装を見据えたユースケース創出を目指します。
発表のポイント
東名阪を結ぶ約600kmの広域量子暗号通信ネットワーク
3社発表によれば、国内でこの規模の広域量子暗号通信ネットワークを構築する取り組みとしては初めての事例です。NICTが2010年から東京圏で運用してきた「Tokyo QKD Network」の取り組みを東名阪へ大幅に拡張する位置づけで、長距離での量子鍵配送の性能・安定性・安全性に加え、実運用を見据えた運用性を検証します。
3社の役割分担とパートナー体制
NTTドコモビジネスは実証全体の統括、技術検証・ユーザー実証、ネットワークとデータセンター、アプリケーションの提供を担います。東芝とNECはいずれも量子鍵配送装置の提供とネットワーク構築、技術検証・ユーザー実証を担当します。3社に加え、エクシオグループ、エクシオ・デジタルソリューションズ、NTTエムイー、デロイト トーマツ、さくらインターネットも連携します。
2030年の社会実装を見据えたユースケース検証
量子コンピューターによる将来の解読を見据え、暗号化された通信を今のうちに収集・蓄積しておく「Harvest Now, Decrypt Later(HNDL)」への対応が重要課題となっています。本実証では、機密性の高いデータを扱う医療、金融、電力業界などでの社会実装を見据え、参画ユーザーへのヒアリングを通じて課題や期待事項を整理し、総務省が掲げる2030年のQKDネットワーク社会実装に向けた検討を進めます。
3社の概要
NTTドコモビジネス株式会社は、旧NTTコミュニケーションズを前身とする法人向けICTサービスを提供する事業者です。株式会社東芝は、量子鍵配送装置の開発で長年の実績を持つ電機メーカー。日本電気株式会社(NEC)は、通信・ITインフラを幅広く手がける総合ITベンダーで、量子暗号通信の研究開発を推進しています。本実証には、総務省とNICTが政策・研究面から関与します。
FrontJournalからひとこと
量子コンピューターの実用化が進むにつれ、公開鍵暗号(RSAや楕円曲線暗号)が将来的に解読される可能性が指摘されています。今回の広域QKDは、その代替手段の一つとして、鍵の複製が原理的に困難で盗聴の検知も可能な通信基盤を目指すものです。都市圏内の短距離実証から、東名阪の広域網へ段階を進めた点が焦点で、今後は光ファイバー中継における鍵のやり取り、実運用でのオペレーション、コストがユースケース化の鍵になると見られます。
