2026.07.01科学技術振興機構(JST)

大阪大が靭性約5倍の「壊れにくい高分子材料」を開発(FrontJournal解説)

ニュース紹介

「柔らかく受け流して壊れにくい高分子材料を開発~分子が『動く・切れる・絡み合う』ことで、強い力から材料を守る新設計~」

大阪大学大学院理学研究科高分子科学専攻の山口浩靖教授、浦川理准教授らの研究グループは、力を受けたときに分子が段階的に応答して衝撃を逃がす「高靭性エラストマー」を開発しました。従来型のポリウレタンエラストマーと比べて靭性が約5倍に向上したとしています。材料が力を受けると、まず分子が動いて力を逃がし、より強い力では分子の一部が切れて衝撃を吸収し、切れた後の高分子鎖が絡み合って全体の構造を保つという、3段階のエネルギー散逸を組み合わせた設計です。研究成果は国際学術誌「Nature Communications」に掲載されました。

出典:科学技術振興機構(JST) 2026年7月1日 プレスリリース
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20260701/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

エラストマーは、ゴムのように伸び縮みする高分子材料で、タイヤやパッキン、柔軟な電子材料など幅広く使われています。柔らかさと壊れにくさ(靭性)は両立が難しく、柔らかい材料ほど強い力で破断しやすいという課題がありました。力をどう受け流し、どこで吸収するかを分子レベルで設計することが、長く使える材料をつくる鍵になります。

①「動く・切れる・絡み合う」の3段階で力を逃がす

研究グループは、材料が外力を受けたときに3段階で応答する仕組みを組み込みました。はじめに分子が動いて力を逃がし、さらに強い力が加わると分子の一部が切れて衝撃を吸収し、切れた後の高分子鎖どうしが絡み合うことで材料全体の構造を保ちます。力の大きさに応じて異なる経路でエネルギーを散逸させる設計です。

②従来比で靭性が約5倍に向上

この設計により、従来型のポリウレタンエラストマーと比べて靭性が約5倍に向上したとしています。柔らかさを保ちながら壊れにくさを高められる点が特徴です。

③タイヤ・ゴム・柔軟な電子材料への応用

壊れにくいエラストマーは、タイヤやゴム製品、柔らかい電子材料などの長寿命化につながると期待されます。機械的な損傷による故障を減らし、材料の廃棄・交換の頻度を抑えることにも寄与すると見込まれます。

編集部からひとこと

柔らかさと壊れにくさはトレードオフになりやすく、単一の仕組みで両立させるのは容易ではありません。力の大きさに応じて「動く・切れる・絡み合う」と異なる経路で吸収する設計は、材料を守る考え方として整理されており、応用範囲も広い成果です。実用化に向けては、繰り返し変形での耐久性や量産時の再現性が今後の焦点になりそうです。なお本研究は、JSTの次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)やさきがけなどの支援を受けています。

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