2026.06.25科学技術振興機構(JST)

東京大学が化学構造の「共通ID」を開発、材料データベース統合で機械学習を加速(FrontJournal解説)

ニュース紹介

「化学構造の『共通ID』を開発~材料データベース統合で探索や機械学習を加速~」

東京大学大学院工学系研究科の中山哲教授と村岡恒輝准教授らの研究チームは、化学構造に重複なく固有の識別子を付与する新アルゴリズム「Graph ID」を開発しました。化学構造を数学的なグラフとして捉え、各原子の周囲環境を反復的に解析してハッシュ文字列を生成する方式で、従来の自動命名手法では困難であった微細な構造の違いを正確に識別できます。複雑な結晶構造や吸着分子を含む表面構造も扱える点が特徴です。世界最大級の3つの材料データベース(Materials Project、AFLOW、OQMD)の統合解析や、機械学習による新材料探索の加速、研究者間の知見共有プラットフォームの構築への応用が期待されます。成果は学術誌「Nature Communications」に掲載されました。

出典:科学技術振興機構(JST) 2026年6月25日 プレスリリース
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20260625/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

材料開発では、世界中の研究機関が独自に計算・実験結果をデータベース化しています。蓄電池・触媒・半導体などの新材料探索で機械学習を活用する場合、これらのデータを横断して使えることが効率に直結します。一方で、同じ化学構造でも記述方法が異なれば「別物」と見なされてしまい、重複排除や統合解析がデータ統合の障壁になっていました。

①化学構造に固有の識別子を割り当てる新アルゴリズム

研究チームは、化学構造を数学的なグラフとして表現し、各原子の周囲環境を反復的に解析してハッシュ文字列を生成する「Graph ID」を開発しました。これにより、同じ構造には必ず同じID、異なる構造には必ず異なるIDが付与されます。

②微細な構造差や複雑な系も識別可能

従来の自動命名手法では区別が難しかった微細な構造の違いも正確に識別でき、複雑な結晶構造や、表面に分子が吸着した状態など扱いが難しかった系にも適用できることが示されました。従来手法に比べ大幅な高速化も実現しています。

③世界の材料データベースを横断利用へ

Materials Project、AFLOW、OQMDといった主要データベースを統合解析する基盤として活用できれば、機械学習を用いた新材料予測の精度向上や、研究知見の共有プラットフォーム構築に寄与すると期待されます。蓄電池・触媒・半導体など幅広い分野での新材料探索を後押しする可能性があります。

編集部からひとこと

機械学習による材料探索は、学習用データの規模と質に成果が左右されます。化学構造に共通IDを与えるという地味だが基盤的な仕組みは、データ重複の解消・統合解析を通じて材料DXの土台になり得ます。今後は他のデータベースや既存ワークフローへの実装が進むかが注目点です。

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